お好み焼き

 ここは東京、わが町の私鉄駅を降り立ち改札口を出ると、プンとたこ焼きの香りが漂ってくる。
さらに、春は満開の花を、また秋には紅葉で目を楽しませてくれる桜並木の遊歩道を歩いて 氏神様の鳥居前に差し掛かると「本場大阪仕込み、美味しいたこ焼き」屋さんが何時もテント を出して通りにたこ焼きの香りを流している。
 ずいぶんと買う人がいるのだなと何時も思いながらも自分ではついぞ買ったことが無い。

 いま東京では関西風、京風は当たり前の通り相場になって いて、むしろ今ではチェーン店にも日本橋「何とか屋」とか、人形町「何処そこ」などと江戸前の方がトレンディである。  

 ところで、広島や岐阜などにも同じ名前の特別品があるようだけれども、なんといっても 「お好み焼き」といえば大阪が本場ではないだろうか。
彼の地では随分とこの専門店が軒を連ねているようである。
何よりも質実を重んじる土地柄で財布が確りとしているからなのか、OL達に聞いてみても 喫茶として費やす金額はコーヒーなどよりもお好み焼きに費やすものが圧倒的に多いと 聞いた事があるような気がする。
 不勉強にして筆者はあまり馴染みとは云えないが、子供の頃大阪育ちのおばさんが お好み焼きをしようと度々作ってくれたことが知り初め、今でもお好み焼き屋さんに入っても いろいろな献立の中から何を注文したらよいものやら知識が無い。
これこそお好みか・・・などと自らを慰めたりするけれど「なんとか玉」とかがよく判らない。

 それはともかく、熱い鉄板の上のお好み焼きをコテを使って切り分け、皆でつつきながら、 その日あったこと、上司のこき下ろし、彼のこと、海外旅行の土産話などの話題で過ごす 時間はこの上なく楽しいことだろう。
しかしながら、東京の街にはなぜか大阪の様には「お好み焼き屋さん」が数多く定着しない、

不思議なことだと思う。

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