オコゲ

 最近のマイコン仕掛けの炊飯器は大変に良くできている らしく、 ご飯炊きの プロ職人も顔負けの出来上がりになるとの事だ こうなると 薪の竈で炊いたご飯を看板にして、その味をメインの 売り物にした
食堂などはセールスポイントが消えてしまう。
  我が家の電気釜などはもう 7、8年も使い古したものだから、 最新式の 炊飯器による出来栄えがどんなに素晴らしいものかは、 残念ながらまだ実感 していない。

 むかしご飯について貴重な体験をしたことがある。
多摩川でも上流の 川崎市に住んでいたことがあって、その辺りの 水道水は 多摩川水系からで比較的上質と評判である、 お米は最寄のスーパーで買う 銘柄米だった、その水を使い 電気釜でご飯を炊いていたのだが、とくに不満 を感じる ことの ない毎日であった。
 ところが転勤を命じられて、真夏の暑い盛りに一家は金沢市へ転居した 金沢へ移った我が家ではあったが 当座の米櫃に残っていた のは川崎の お米、我が家の電気釜で金沢に移って初めて炊いた夕食のご飯を口にした 時、これがおなじ米かと思うほどに旨い ご飯に炊けていて驚いてしまった。
美味しいご飯の秘密を考えてみると・・・ おなじ米、おなじ電気釜 を使って 炊いたのだから・・・水の違いとしか 考えられなかった。

   ご飯で昔と変わったことと云えば炊飯器が自動的に上手にご飯を炊いて呉れるので「オコゲ」が食膳から消えてしまったことだろう 。
「オコゲ」はいわばご飯の失敗作なのだが、その実  案外な味わいであることも皆様は先刻ご承知の通りである。

 口は勝手なものでいつも同じ味ではつまらないのである、仮にファースト・ フード店へ行けば、系列が同じチェーン店なら何処の街の店でも、また何時 行っても変わらない味を提供してくれる、 だから安心だとも云えるのだが、 なんだか毎回替わり映えがしなくて、 なんとなく飽きが来てしまう。
  味とは贅沢なものである、 だから店としてはメニューを次々と開発し、あるいは 追加して行かなければならず大変なご苦労だと思う。
マニュアルだけでは解決できないし、良かれ悪しかれ偶然にも 楽しみがある という事かも知れない。

 現在お米はコンバインで収穫すると同時に脱穀してしまい、 それをライス センターという共同施設で加熱乾燥しているのが普通である。
 ところで金沢では農協関係の方から秋の収穫後、昔ながらのハザにかけ 天日で干した新米を頂戴したことがある、大変にうれしかったが、同時に 炊飯の 秘訣を伝授してくれた。
  「洗米後は「ザル」で水気を切り 一晩冷蔵庫に寝かし、翌朝に 水を加えて 普通に炊き上げると美味しい」と、そして何時もの電気釜で炊いた我が家の ご飯が一段と大人気であったことは云うまでもない。

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