奈良みやげ

 古都奈良と言えばどなたでも一度や二度は訪ねられた事があるだろう。
奈良は盆地だから、夏は暑く冬は寒いと言われている。寒中の若草山は芝焼きの あとで黒ずんで見えるかもしれない、もちろん奈良公園の広大な芝生も茶色一色 に違いない。

 東大寺、春日大社の辺りの公園のそこかしこには冬毛に身をつつんだ鹿達が群れたり、三々五々たむろしている姿は古都奈良ではだ。
 鹿の濡れた鼻ずらが観光客の手にある鹿せんべいをねだる。
鹿煎餅はほのかに香ばしい。鹿寄せのラッパにつれて列をなして鹿達が駆け寄ってくる様子は誠に可愛らしいものだ。彼らは餌に芋などをもらうのである。
 

 ところで少々尾篭な話で恐縮だが鹿も食べたからには出す、豆のようなやつを バラバラと排泄する。
あれだけの頭数の鹿だから、それこそ大変な量の集積になるはずなのだが、 誰もそれを始末などしない。それ等はある種のコガネムシが始末をしていて、最後の 最後はあっという間にバクテリアが分解してしまうそうである。
 だから公園は何時も綺麗になっていると言うわけだ。
ところで奈良の愉快なみやげに「鹿のフン」という名の菓子がある。娘が修学旅行の 折に買ってきてくれた。見るからにそれらしく、それと見まごう程の出来映えであった が、残念ながらその味の程は覚えていない。

 奈良から古道 「山野辺の道」 を少し南に向かうと三輪明神があって、その辺りが 「三輪そうめん」の故郷である。厳しく冷たい冬の風に寒晒しをして仕上げる細い そうめんである。
 暑い盛りの真夏に氷を入れたガラス器にそうめんを泳がせて、汁に取った 細いそうめんを口にする時、そうめんが育った冬の冷たさを伝えてくれている様で その爽やかさが好ましい。

 東大寺の二月堂のお水取りは春を呼ぶと言う。夜の回廊を走る松明は激しい、 その頃の二月堂の辺りにはいつもと違った厳しい修行の緊張感が漂っている。
そう云えば、二月堂の「わらび餅」、きな粉に黒蜜でとても美味しい。 もしまだならば一度試されたら如何だろうか。

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