鍋の季節

 家の近くに大スーパーの大型支店がある。郊外とは言えないがまあ住宅地の ど真ん中に出現した 高層建てのスーパーは、それ以来良く繁盛している様である。
とはいえ昨今の経済情勢の中では なにかと企画を立てて消費者の財布の紐を ゆるめさせようと 健闘している様がよく判る。

 さて先日カミさんのお付き合いをして久し振りにこの店へ行き、買い物の目的を達したあと一階の食料品売り場に立寄った。
 日曜日の午後とて売り場は一段と混雑していた様だが、ケースに並んだ商品の品数多さにはビックリしてしまった。
 小生には以前に在る地方に単身赴任をしていたこともあり、同系列の店の食料品売り場をウロついたこともある、また最近でさえ今の売り場に足を踏み入れたことがなかった訳ではない。
 だが今回は生鮮食料品の加工程度がどんどん進んでいることに驚いてしまったのである。
 

 あれでは夕食の献立の為に一つ一つ材料を集めることなど必要ない。鍋物にした かったら「鍋セット」を、 肉を選ぶか魚にするかを決めればちゃんときれいにパックされ ている。
タラバカニの太い足も食べやすいようにキチンと包丁が入れられてある。
 祝い事が あったら赤飯が、そのとなりには季節風味のおこわ、酒の肴になりそうなキンピラ ゴボウ、野菜の煮物、オフクロの味がズラリと 並んで・・・いやァ選ぶのに困難を来す。
もう吟味して材料を取り揃えることも、作り方を覚えることも、手順や包丁の使い方、 味付け、盛り付けなどなど 気にしなければ、食事をするのに何も困ることはなくなって しまった様である。

 数多い品物の山の前で確かに便利にはなったが、何となく寂しくなってしまった。

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