ミックスジュース

 そろそろ冷たいものが有難い季節になってきた、見回せば至る所に飲料水の自動販売機が 氾濫している。世界中で自動販売機がこれほど目に付く国は日本を置いて他にはないだろう、 街中は言うに及ばず、田圃の中や、山の頂上にさえ何台も連なって並んでいる。
  時折は渇いたのどを癒すのに便利、重宝するから・・・むげにその存在を非難できないのは つらいところ、 けれど小さな声で・・・何とかならないものかな・・・などと呟いてみよう。

 大阪人は言葉の短縮が得意のようだ、上本町6丁目は「うえろく」、天満橋6丁目も「てん ろく」、 大阪万国博覧会は「大阪ばんぱく」・・・
ついにはジュースでも中身の表現を短縮したらしい、ミックスジュースと聞いた時にはてっきり 「リンゴとみかん」、「パイナップル、バナナ」などという果物を幾つか組み合わせたミックスである と思い 込んでいた。

 だが大阪のミックスジュースとは「牛乳と果物がミックスされたジュース」の意味だということが 判ったものヽ、 これなど牛乳のコップ一杯と、果物をミキサーでジュースにした一杯とを、ふた 手間の飲む面倒を短縮思想でお腹の中で一つにミックスしてしまったものだろうか。
腹に入れてしまえば同じ事と考えたわけでもあるまいが、大阪でミックスジュースと人に問えば キチンと「牛乳と果物のミックス」との答え が返ってくるという。
  最近になってこのジュースに話題性が出てきたのか首都圏のTV番組では「卵の黄身」も一緒 にミックスするのがオリジナルとあったが、これは好み の問題・・・

 ボキャブラリーが多く 柔軟で人当たりの良い関西弁は、時として商売用に便利な言葉であると ビジネスの世界ではかなり使われている、今や日本料理の関西風は主流になった・・・出汁を効か した薄い色の料理は 見た目にも綺麗である。

 ミックスジュースの東京進出計画を聞いたとき 「これはまた大阪文化の進出か」とも思ったが、 周到に練られた計画にしても、最後を決めるのは消費者の味覚や好みの問題だろうと、文化が 根付く条件なども考えてみたこともあった 。
若者達が進めるこの文化進出計画をマーケット・リサーチを始めた頃から遠くから眺めていた。

 それから僅かの年月ではあるが 時を経てこの計画は順調に進み店の数も次第に増えている 。
試しに幾つかの店に行き、紙コップ一杯のミックスジュースを飲みながら店先の風景を観察していると、すでに若者も熟年 も母親に連れられた子供たちも、店先に並んだ何台ものミキサー(ジューサー)の前でどれにする かと楽しそうに品定めをしている、もう馴染まれたのだろうか。
 

 ジュースのレシピはかなり重要で 充分に吟味されたものだそうだが、紙コップ一杯 の値段の設定も気取らない庶民的な、大阪そのもののような気がする、売店は駅の通路などに展開しているから、 既に立ち寄ら れた方もあるだろうが・・・ホームページはこちらである 。

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