マルガリータ
フィレンツェの日中はカラリと晴れ渡った青空から強烈な太陽が降り注いで暑く、旅の疲れもあって体を動かすのも億劫なくらいだった。 さほど大きな美術館ではないがミケランジェロのこの像を観に世界中からの観客が集る。われわれの入館時も、そして退館の時も長い行列の入場順を待っているのだった。インターネットは便利だ、お陰で今回の旅行も出来る予約はすべて準備してきたので最終日前日の今日まですべて順調で愉快な旅を続けて来れた。
周りのテーブルにも次第に客が入ってカフェは賑やかさが増してきた。われわれの注文の品がテーブルに並び、二人がそれぞれの大きなピザの真ん中をナイフで切って、ピザ半分ずつを互いの皿の上に移し換えた・・・ふと視線を感じる、隣の席は親子連れ3人がニコニコとこちらを見ている、ピザのアッチコッチへの移動が面白かったのかもしれない。胃袋の小さなわれわれは折々皿をシェアして出来るだけ種類多くのメニューを味わおうと努めてきた。
母親は「息子は日本人が好きなので」と英語でにこやかに言い訳をした。
アニメ・ゲームの贔屓を聞くとちゃんと「何の何某」と日本名を答えてくれたのだが、残念ながらこちらにその辺りの知識が欠けていた、それからいくつかのアニメの話題をかわしたけれど・・・こちらの知識欠如は申し訳なく、充分に応じることが出来なかった。
そんな和やかな昼食には彼らも各自一枚ずつのピザを、飲み物はコーラを注文していた。しかし食事を終えた彼らの3枚の皿にはトッピングだけ食べたピザのベースが相当残されて、綺麗になったわが皿とは違っていた。 目と目が合うとニコッと会釈、それからこのような会話が生まれることの多かった今回の旅行、日本アニメの親善使節振りを体感したこと、街にきわめて太めな体格の目立つ中で料理皿のシェアもそれほど不思議な光景ではなくなったのだと感じた。 (2010)
|