マグロのたたき

 日本橋にある 行きつけの料理店。 勤め人生活の頃には週初めの夕刻には 必ず寄っていたような店なので、もう何十年の付き合いになる。
何とはなしの話題で過ごす小一時間は回数こそ減ったけれど今でも続いている。

 ここも魚河岸の盆休みにあわせて休みがあるので、二週間ぶりの訪問である。
いささかの期待で暖簾をくぐると、いつもの顔ぶれが先に来て座を占めていた。
店とすれば今年後半の仕事始めということだろうか、この夜の板さんの料理は、 うれしかった。

 先ず付き出しには冷えた枝豆、次いで刺身は活きの良いタコをさッと湯に通した、 タコ(多幸)ぶつ、ワサビしょう油を付けて口に入れると、心地よい歯ごたえだ。
焼き物がすごい、すずき(寿寿喜)の塩焼きをメインに、車えび(海老)、松茸の 網焼き、そして幸風を受けるようにと帆立の柱の焼き物、松葉をあしらって お目出度く盛り合わせてある。
これを見て年後半を占うとすれば、これまた少しお目出度すぎるが・・・とか言い ながら、結局アルコールが進んでしまう。

  このあと出てきたのは冷奴、豆腐にはキュウリ、なす、糸ガツオを乗せていて、 ミョウガと白ゴマを風味に加えて、しょう油で調味してある さっぱりした味だ。

 あと一つ、マグロのたたきが猪口にほんの少々、味噌、ミョウガを加えてたたいた マグロは、アサツキを添えて出された。最後に叩かれて、みそを付けた・・・なんて 云う事にはならないだろうね、などと相場を気にする輩もいたが、ほろ酔い気分で 打ち上げた。

  この店には七福神の「ほてい」さんの彫り物が7ツも置いてある。もっとも、それに 加えてわが友には ほてい腹が一人いるので、計8人だと。 これも末広がりでよい数だと思う。

 どうかご笑読のほどを。

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