黒タマゴ

 先日、土産だといって懐かしい物を貰った。箱根大涌谷の「黒タマゴ」である。
箱根は昔から東京の奥座敷と言われて何回も訪ねるチャンスもあったし、 最近では高速 道路を 車で行けば、まるで庭の内の近さである。

 箱根なら芦ノ湖、富士山、関所、温泉、そして大涌谷の硫黄臭い噴気などが思い浮かぶ。
白い卵を小さな竹籠に入れて温泉の池に沈めておくと、温泉の高温でタマゴは茹で上がる。
その上、白い殻は硫黄分との化学反応で真っ黒に変色してしまうのである。 低い温泉熱で ゆっくりと暖めた「温泉タマゴ」
(温泉卵も美味しいものだが) の様に ブヨブヨしたものではなくて、 中身は固ゆでタマゴであってなんの変テツも無い。
たヾ、卵を包んできた紙袋の中には「黒タマゴ」と印刷された塩の入った小さな袋が 添えられ ていて、なんとも有難い特製といった気にさせられてしまう。

 

 黒いタマゴと聞いて中華料理の前菜に並ぶ「ピータン」を想像していた者もいて、「ナァーんだ」と言ったきり固ゆでタマゴを頬張っていた。

 生タマゴは米酢に丸ごと一晩浸けておくと、中の薄皮を残して全部が溶けて形が 無くなって しまうらしい。
これが二日酔いの薬だと聞いたことがある。
何でも、その黄色い液体を少々猪口にとって、グイッと飲むのだそうだ。
  筆者はまだ試したことは無いけれども、これだけを想像してみただけで 生ツバが湧いて来 そうだ。

 なにはともあれ、 たかがタマゴといっても姿、形は変えても料理には欠かせない大切な食材である。

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