熊、ゆきのした もうだいぶ前の事になる、豪雪の年だった。石川県の白山の麓は名だたる豪雪地帯
だから筆者には物珍しく、ただ物凄いものだと感嘆しか出来なかった。 尾口村東二口(ヒガシフタクチ)と言う小さな部落は手取川ダムが眼下に拡がる山の
斜面にへばりつく様にある。当時お付き合いを頂いていた地元銀行のエライさんから
「国の無形文化財」
を見せようとお誘いを頂いた。そして同行の数人の集団が到着した
ここがその小さな部落なのだ。 まず村長さんを訪ねてそのお宅にあがる、いや実際は下がる・・・と言う
のも積雪が多いために玄関へは雪の階段を下がるのだ。 嬉しいことに先代の老婦人が自らこしらえたお料理の一つ一つを丁寧に説明して
下さったのが、
その方言と品数の多さに今では記憶も僅かになってしまった。 さて、いよいよ会館で演じられる出し物は 「文弥人形」と言われる文楽人形の最も
原始的な姿を残したもので、もちろん文楽や鳴門のそれらのように手や頭が動くもの
などではなく、言って見れば棒を十字に組み、頭を乗せて着物を着せたような物である。 今でこそダム建設などで山里にも良い国道も整備されてはいるが、その昔の雪に 閉ざされた山奥にはこんな楽しみがあったのかと想ったものだ。 そうそう、雪国の春ほど感激的な季節はない、ご存知だろうか。
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