栗きんとん

 年の瀬になると台所ではおせち料理つくりが始まる
旧家でもなく商家でもないわが家でも それなりに新年のお祝い膳の準備はある

 暮れのある日台所から流れる煮物の香りは少しも昔と変わらず、懐かしく年の瀬を感じさせてくれる
わが家は夫婦そろって関西系なのでお雑煮は白味噌仕立てで新年を祝う、テーブルに並ぶ祝いの料理には特に珍しいものとてないけれど、これも我が母親のしつらえと同様で、したがって煮物の香りも味も子供の頃から馴染んだ懐かしさを運んでくれるようだ

 近頃では毎年この日には嫁いだ娘が家にやってきてカミさんと台所に立ってコトコトやっている
幾品か料理が出来上がるごとにちょっぴり味見を求められる、中でも見た目に力仕事なのは「きんとん」作りかも知れない、裏ごし作業はいつも賑やかになり、やがて煮込んで甘い栗きんとんが出来上がる
 

 出来上がった幾品かの料理の小さな包みを持ち帰る娘、連れ合いの出身系譜は中国地方だからきっと祝い膳には違いがあると思う

 元旦の朝、テーブルに並ぶおせち料理を頂き新春を寿ぎながら、馴染みの料理を頂くことが自身のアイデンティティーを確認し、旧年をリセットして新しい年への意気込みにつながるような気もする
それにしても、甘い栗きんとんにはあまり地方色はないかもしれないが・・・

(2015)

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