カステラ


 日本語の中で外来語と言えば先ず「カステラ」がポルトガルから伝わったと紹介される。
昔から病気見舞いや大切なお遣い物の定番だったし、高級な菓子だったから滅多にオヤツにでる ようなことは無かった。

 
高校では校庭の片隅の売店で回りをチョコレートで固めた四角い菓子 「レンガ」を売って いた。
見た目がまるでレンガのようだったのが名前の由来か、はたまた中味のカステラかケーキのスポンジ を製造過程で端を切り落とした部分を積み上げて固めたものだったから名付けたのかもしれない。
チョコレートの中はカステラ様の味がして旨いし、そう高価でも無かったから人気があった。

 高校から一緒のクラスになった長崎出身の友人がいる、親元を離れ15歳から東京で下宿生活を する彼とは 大学卒業まで同じクラスだった。その頃の上京は汽車で郷里から丸一日要したと言う。
当時を振り返って夕暮れ時がとても嫌だったと彼は言う・・・夕方になると西の長崎より東京は日没が 30分も早い、これがとても切なかったそうだ。

 もともと酒飲みではなかった彼だが いつの頃からか猛烈なワイン愛好者となって勉強もしていた。
当然 フランス、イタリアやカリフォルニアなどの産地に出向いて知識の厚みも増してくる。
時折の上京で我々仲間との会合でさえ在京者を差し置いてレストランを指定してくれるのは彼だ。

 先日の上京時にも用意されたのは東京駅々前の高層ビル最上階、フランス料理店だった。
窓外には皇居の翠が手に取るよう、折しも外国の大使が信任状を奉呈するための馬車列が皇居前広場を横切り、二重橋を渡って宮殿へ向かう様がつぶさに眺められる絶好のロケーション。
 

 ガラス皿二枚の間に挟んだ紅葉楓の葉数枚がオードブルの下から秋を演出するのが始まり、久方 振りの親友達との昼食フルコース、芸術的に綺麗に盛り付けられたそれぞれのプレートが美味だった ことは云うまでも無い。
  ワインに通じた彼が選んだシャンパン、白、赤のワインを楽しみながら時を忘れて積もる話題に花が 咲いた。

 デザートの菓子皿には彼のお持たせのカステラが店のケーキやアイスクリームに並んで皿に載って いた。長崎の本舗本店でしか商わない特別品で、砂糖がジャリジャリとする歯ごたえも楽しい、小生は カステラの中で一番のお気に入りだ。

 カステラが外来品だとしてもどうも和菓子の様でもあり、今時のナッツや洋酒などをふんだんに使い 芸術的に飾りつけた洋菓子ケーキに較べると至極簡素な菓子だ。だから作るお店毎の味には大きな 差が出るのだろう。
  話は戻るが先にこの日の予約をとった後にフランスのレストラン案内本が発売され、このフランス 料理店にも星をつけていたことがわかった。
 当日 店の者に聞いたところそれからは予約殺到、二ヶ月先まで満杯だという。

 ワインも料理も旨かった、けれども親友達との他愛の無い雑談とみやげのカステラがいちばん皆の 印象に残ったようだった。                                      

(2007)

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