カモ・ネギ・ツグミ
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冬が近づき大陸からは寒さを逃れるように渡り鳥たちが日本列島へやって来る。
科学の進歩でその渡りのルートが次々と解き明かされて,今更ながら自然の大きさや、
けな気な鳥たちの行動に感動させられる。 |
話はどうもその方向からは外れてくるが、「ツグミ」などの小さな渡り鳥のルートの一つは
大陸から日本海を飛び能登半島へと向かってくるらしい。日本へ来て最初に羽根を休める
のが半島の先端50kmの海上にある舳倉島(へくらじま)であると聞いたことがある。
それにしても、どうしてあの小さな体で目印のない海上の点の様に小さな島を見付ける
事が出来るのだろうか。さて、鳥たちはそれから小さな岩礁伝いに日本本土に達し、
さらに南へ、飛騨を飛び越え東美濃地方へと移ってゆくという、これが渡り鳥の道である。
人間の知恵はそのルート上に霞網を仕掛けて難なく鳥たちを捕らえられることを知った。
今ではこの狩猟方法は法律で固く禁止されているが、それでも浜の真砂と何とやらの
例えか不心得者が居るらしく、毎年秋には当局がヘリコプターを飛ばして現場を摘発した
といった新聞記事にお目に掛かるのである。
ある日、土地の人の「秋を食べよう。」という誘いに乗って とある処に連れて行かれた。
その場所がどの辺りであったかもすっかり忘れてしまったほどの昔の話になってしまったが、
ちょっとスリリングな感じがあって皿に乗った初対面のそれの丸焼きを頂戴した。
「頭をカリッと噛んで、ピュッと出てくるミソ」が旨いなどと聞いても、筆者にはどうもピンと来ず
痩せた鳥の それも太股あたりの肉をしゃぶっていた事を覚えている。
それに比べるとカモの炭焼きは旨かった。鵜飼で名高い長良川畔にある旅館の一室は
飛び散る鳥の油と煙で脂ぎっていた。油煙で汚れるので専用部屋にしているそうである。
七厘には真っ赤におきた炭がいっぱいに入れられ焼き網が載せられてあった。
赤身の肉を載せると一瞬のうちに白い油煙がもうもうと立ち上がる。この煙をものともせずに
焼けた肉を口に運ぶと,時には「カチッ」と歯に物が当たる事もある、鳥を仕留めた散弾が
残っているという。
カモがネギを背負ってやって来たなどと云うけれど、本当に長ネギとカモ肉の味の
組み合わせは素晴らしいと思う。
それとも、物凄い煙をものともせず大っぴらに戴くことが出来た安心料が、飛び切りの味と
なったのかも知れないが。
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