柿の葉すし

 紅葉といえば、楓、七かまど、漆などなど これからの寒い季節を前に ひと時の晴れ姿で山々を飾る。また桜や柿などの人里近い落葉樹の紅葉も 見事だ。
しかし紅葉も夏の暑さや、気温の変化の具合などに不具合があると葉が 赤くなる前に 黒い斑点が出来て落葉してしまう。満足の行く山々の紅葉は だから本当に見事 なのだと思うが、はるばると山奥まで訪ねると、崖に 素晴らしい黄色、赤などで綴られた 錦を目前にしては、やはり感激せずに
は居られないだろう。

 皆さん「柿の葉すし」をご存知だろうか。寿司飯に薄切の塩サバを乗せ、青い柿の葉 でくるみ樽に並べて押し〆た 鄙びた珍味だと思う。

  筆者の記憶では 故郷の親戚が作ってくれた柿の葉すしは握り飯のよう な大きさで、 柿の葉も数枚で覆われている様なものだったが、あれ以来その ような体裁のものに\お目に掛かった事はない。

 交通の便の悪い昔は山間の村々に新鮮な海魚などあろう筈はなく、塩漬け にして 遥々と運ばれて来たサバの調理方法として考えられたのだろうと思う。
柿の葉にはビタミンが多量に含まれていて、また殺菌力もあるそうで、鮨酢 と相俟って 痛みやすいサバを長く美味しく食べるための工夫としたようである。
本当にこうした工夫が出来た昔の人々の知恵には感服せずには居られない。
  今では専門店もあって、柿の葉一枚にくるまれ一口で食することが出来る体裁 の良いものが店先や、駅の売店でも売られている。

 なかなか後引きな味わいがあって、懐かしさがこみ上げてくるのである。

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