カキ氷

 だるような炎天下、軒先には小さな四角いのぼり、それがわずかばかり流れている風に 揺れている。
「シャカ、シャカ、シャカ」と音がして、やがて目の前にはガラス器に山盛りのカキ氷が現われる。
真赤なイチゴ、黄色いレモン、緑色はメロン、それぞれ原名とはまったく違った味だが、そんな 事は どうでもよい。
暑い昼下がりに一匙の氷が、どんなにか火照っている身体に冷気を与えてくれることだろうか。

   少し張り込んで白いカルピス、宇治金時になるともう高級品の段階だ。カキ氷と甘い小豆、そして冷えた白玉ダンゴの舌触りが心地よい。
糖蜜だけをかけた氷スイなんて言うのもあったっけ。

 最近ではフラッペなんて言われて、アイスクリームやらフルーツを飾り付けられたりしているが 大きい器のそれはそれで、それなりに美味しい。

 頭上の太陽、芝からの照り返しの中で白い玉を追ってグリーンの上にやっと辿りつく。
このグリーン、硬く締めた芝からの照り返しは一段と厳しい。こんな所であまり神経を集中すると プッツンしてはいけないからと、スコアを暑さのせいにして茶店に逃げ込む。
『オバチャン、氷だァ、氷ちょうだい』と注文、出てくるのも もどかしくカキ氷を口に掻きこむと、 それは天国、すぅッと涼しくなるから不思議だ。

 それにしても、あんなに天国だと思って飛びつきはしても、冷たい匙運びも終わりに近づくと 不思議なほどに重たくなってしまうものだ。

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