ジャムサンド・クラッカー  

 何にでも好まれるものと、そうでないものがある。
東京の街にはドバトとカラスが一杯だ。
ドバトなら一寸した広場に行けば 我が物顔に振舞っている大群に出くわすだろう。
だがいくら平和の象徴でもフン公害には注意を要するようだ。

 これに較べると、黒いカラスに対する扱いは可哀想だ。
大型で頭が良く、黒いが故の不吉な雰囲気や、たまに人まで襲うので一層嫌われ者に なってしまう。
とくに春の子育ての季節にはカラスも神経過敏になっているし、人様からちょいちょい 餌になるものを失敬するなどの悪さをしたりするから、またまた敬遠される事になる。
  朝早く街角でごみ袋を食い散らかし道路を汚しているのを見つけても、近くの塀などに 留ってキョロッ、 キョロッと見まわす小さいが鋭い目の動きや、ナイフの様に鋭くとがった 大きなくちばしは恐ろしくて、 その悪事を叱ったり追い払ったりすれば、逆に恨まれてし まうのではないかと、ついカラスの前をそそくさと通りすぎてしまうのが相場である。

 さて先日、久しぶりに訪ねた新宿御苑の芝生広場での光景。
小さな子供連れの家族が幾組も楽しんでいたが、中にはポップコーンなどの餌を与える 子供の姿もあり、 それを目掛けて何十羽のハトの群れが集まっていた。
それに混じって黒いカラスも 嫌われものと知っているが如くに遠慮がちにやってくる。
賑やかに騒いでいた子供はその姿を見て親達のところへ逃げ帰ってしまった。

 わが手にはジャムを挟んだクラッカーがあった。甘くて結構行ける味だったけれども、 丸ごとでは ハトの口には余る大きさなのでで粉々に砕いて与えなければならなかった。
黒いカラスが遠慮がちに低姿勢でやってきた。
ためしにカラスの目の前にジャムサンド・クラッカーを投げ与えると、何と空中でキャッチ するではないか。
周りで見ていたのだろうか一羽、二羽と順にやって来るカラス達も上手下手はあっても 結構どれもが投げられたジャムサンド・クラッカーをキャッチして見せた。

 十数羽に増えてきたカラスの群れではあったが、良く見ると黒い羽根は艶やかで、決し て黒一色でないばかりか紺色に光る羽根など、とても綺麗な鳥なのだと思った。

 カラスと筆者とで楽しんだジャムサンド・クラッカー、カラスの好みはジャムとクラッカーのどっちだったのだろうか・・・
 カラスはただジャンピング・プレイを楽しんでいただけなのかも知れない。
 

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