金目鯛、岩のり、ひじき

 ここ2年ほど続けて師走の週末旅行を伊豆半島の下田温泉で過ごしている 。
伊豆半島の先端に近いこの町に行くにはそこそこ時間もかかる、下田は幕末日本 では重要な舞台だが、今でも首都圏からは相当遠い。

 その夜の宴会は海の幸を中心としたご馳走で、中でも大きな黒い目玉をギョロリと させて背中に刺身を載せた赤い魚は、大きな皿からはみ出さんばかりにテーブルの 真ん中にあった、 金目鯛はこのあたりの特産である。 金目鯛の刺身は少し甘めの新鮮な味で我々を愉しませてくれた

 ちなみに金目鯛の加工品の数々は下田の街中では至る所で目にすることが出来るし、 翌日下田漁港のあたりを取材がてら探訪していると、一隻の漁船が日用品をしこたま 積み込んでいるので、作業をしている若い船員に聞くと出港すると10日ほどの漁になるらしい、程なく 漁船はそこまでチョッと行って来る・・と云ったような普段着の顔つきで白い航跡を残し 港外へと出て行った、金目鯛漁である。

 次の年末の食卓には真鯛の刺身だったが、前年と同じに大いに飲みながら 大いに 語り合ったその夜の話題は、来るべき新年の抱負などで思い出の深い夜であった。
普段でも東京より気温は2、3度高い上に暖冬のこの年末は特に暖かく、 名所の 爪木崎では年末から恒例で開かれる水仙祭りが予定を早めて繰り上げ開会したそうで ある、 海に突き出した爪木崎には見事な水仙の群落がある。

 翌朝は天気も良いので久し振りに伊豆半島先端の石廊崎辺りまで足を伸ばそうと下田駅前でレンタカーを借りてドライブに出た、この辺りの海岸風景や岩陰の向うに見える石廊崎灯台などをスケッチしたのである 。
 ある海岸で海水をペットボトルに取るご婦人がいたので聞くと、「豆腐を作る」のに良いのだそうである、岩場に打ち寄せる海水はとても綺麗で水底が手に取るように透して見えていた 。
 

 前に石廊崎に来たのは50年ほど前だったように思う、自然は大して変わっていない のだろうが記憶に薄い、石廊崎灯台への入口である入り江の船着場前に車を止めた。
すると一人の婦人が近づいてきた、目の前の売店のおばさんなのだが気持ちの良い やり取りですぐに気に入ってしまった、「良かったら帰りに店によってください」と言う 誘いである。

 さて、景色を眺めながら灯台に向かい坂を登って行くと後ろから「こんにちは」と声 が掛かる、振り向くと神主姿の若者である、それから肩を並べ岬の神社まで歩く道すがら、今年の台風は60mもの風速を記録して 「さすがに怖かった」と言う話や、あれこれ・・・ 聞けば岬の先端にある神社の40数代も続く神主さんであった。
  社殿は岩窪に投げ込まれたようにあったが、その先の岩頭から目の前に大きく広がる 太平洋を眺めは大きかった。

 そして 帰路におばさんの店へ、店先を眺めこのあたり特産品でもあればと見渡すが、 考えていたような魚類などが並んでいないので、なぜかを訪ねると 「ここからは帰路にどうしても 3時間以上は掛かってしまう・・・」 だから新鮮さを保てないので並べないと云うのである。
なかなか良心的だが・・・少し残念な気もする、それではとお奨めは? と訊ねると ・・・乾燥 「岩のり」を勧められた、試食皿の見本も旨い、結局土産にはこの「岩のり」と「ひじき」を 一袋ずつ買い求めたのである。

 後日談 磯の香りも高い岩のりはすぐに袋が空になり 「何故もっと買ってこないの?」 とカミさんからは残念そうに言われたが、ひじきは去年の みやげの分も まだ残っているとか・・・
  そういえば、去年は金目鯛の加工品とひじきを土産にしたんだっけ。

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