みな月、氷室饅頭

 陰暦の六月は『水無月』である。田に水を引くために水がいる、の意から来ているらしい。

 水は稲作にとって最も大切だが、これから来る暑さに向けて、古来からこの季節には いろいろ と行事があったようだ。
「水無月の祓い(はらい)」なども来るべき暑気対策の中のひとつだった様だが、真夏の ジリジリ する暑さも実は水稲豊作には必須条件なのである。

 関西みやげに「みな月」をもらった。それはいわば<ういろう>の上に甘く煮た小豆を 載せ 固めた様な物を桜の葉で受けた生菓子である。この季節の僅かの期間には東京の 和菓子やさん でも店頭に並ぶそうだが、関西ではこの月には何時も用意されているとか、 ういろうの部分は白、 緑<抹茶>、茶<ニッキ>であったが、古くは白だけだったという。

 ちょうどこの頃、「氷室(ひむろ)」が開かれる。製氷設備が整っている現代では想像も 出来ない 事だが、古来から厳冬期に室に貯えられ、茅で被われていた雪や氷が夏の 暑さに向けて開かれ たと言う。

   この日を氷室の節句などと言って菓子などを振舞って祝ったらしい、加賀藩では毎年こうして貯蔵していた氷を将軍様に献上すのが習わしで、その為の行列が江戸に向かったと言う。
 保冷設備が乏しかった当時、何日もかけた金沢からの長道中はさぞや苦労の多い旅であった事だろう。
気温30度を超える中で行われた氷室開きの様子が今年もTVニュースで紹介されていた。

 その日に金沢あたりでは「氷室饅頭」が配られる、甘い小豆餡の入った白くて丸い 饅頭だが、 これからの暑さを乗りきる願いを込めて美味しく戴いた。

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