蓮の実

 <何年前の事だったろうか>  連休は期待に反して天気には恵まれなかったけれども やはり大型連休、普段とは違った日々をゆっくりと過ごすことが出来た。
一寸した所用があって、夫婦揃って日帰りで京都近郊へ出掛けたが、この日は 願っても無い行楽日和となって、何処も一杯の人出になっていた。
  用事を済ませて、ブラブラと坂道を下ってくると案内板の萬福寺参拝路が目についた。
大きな山門のある正面と違って、築地塀に沿った小さな路地を寺に向かうと 立派な塔頭(たっちゅう)が並び、家や庭の手入れも行き届いてみな立派な構えである。
萬福寺にはかって27の塔頭があったそうだが、今では20ヶ寺であると後で聞いて知った。

 門の中は思いおもいで、緑の苔が敷かれ『ぼたん』などが咲いていたりして、ゆかしい。
そうした中での一寺でのこと、何気なく門を覗いていると、いきなり庭の方角から 作務衣の僧がニコニコとやってきて我々を門内に招じ入れ、そこにある竹筒二本の間に 顔を近づけろと言う。言われた通りにすると、筒の根本に向けて今し方の庭仕事で汚れた 手を洗うように、手洗鉢から汲んだ水を流した。
すると流れ落ちる水が発する妙なる音色が両耳に伝わってくるではないか、 それは水琴 窟のステレオ版だった。

 このご住職、庭には世界中から集めた蓮の鉢108種を所有し育てているとの事アル バムでその花々を見せて頂いたが、こんなに蓮の花が多様だとは今まで知らなかった。
このほかこの寺には近作だが当代一流の日本画家による水墨画の襖絵があり、これも 一見に値する。

 さらに極めつけは「蓮の実」入りの和菓子、ご住職によれば この特許品「荷葉露」と 名付けた が他には無いものだそうな。求めて食すると柔らかいゼリーに包まれた上品な 薄甘な少量のアンと 蓮の実。蓮の実はポクポクとした感じだった

 萬福寺の普茶料理は有名だが精進する禅僧が食を楽しむ工夫をした今流に言えばヘルシー・フードだ。
蒲焼風に見える焼き物もすべて精進物である。

 

だが、般若湯(はんにゃとう・清酒)を少々頂いたものの、観光用の普茶料理は少々高額 だったようだ。

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