お手製チョコ

 東日本大震災が発生してから7週間過ぎた
震災当日、長く、強い揺れを自宅で感じたので、いつもの習慣で地震後には情報を確かめる、TV画面で被災地を襲う大津波映像をライブ中継で見て戦慄を覚えた
更に、伝わった原発事故のニュース・・・
 当日の夜、ヨーロッパ在住の親戚に送ったE-mailには「…自宅の被害はなかったが、
原子力発電所の不具合も心配です」と書き送っている

 その危惧が当たり、原発事故がこんなにも悪化しようとは想像できなかった、加えて電力節約、計画停電などが地震、大津波災害を拡大してしまった
その影響で世の中では祭り、行事、催事などことごとくが自粛されて静かになった、だが節電や計画停電などで暗くなった街、人々にはストレスが溜まってしまった

 さて今年も、わが作品を年に一度ご披露する個展が一か月後に迫っていた、地震後多くの展覧会や知人たちの個展の中止が伝わって来ていた
開催をしても相次ぐ余震で交通網がストップする事態も考えられる、一方では経済を活性化してこそ復旧、復興に役立つとの消費推進論も日増しに流布されてきた

 そこで考えた結論は、何時までも縮こまっていても仕方がない、せめて展覧会場で一時の安らぎの時間を過ごして頂けたらと、当初の予定通り開催させて頂くことにした
 幸い会期中は一向に進まない原発事故の収束以外には心配事は起きなかった

 予想以上の来展客の流れは、春の嵐の吹き荒れた一日ですらほとんど途切れることはなかった
特集「モーツァルト・旅先の風景」会場では流れるモーツァルト作曲の旋律の持つ癒しと相まって作品を楽しんで頂けたように思う

 観客はそれぞれの想いで作品に向かい合う、作者側の制作の想いと一致するか?…などと考えるのは不遜であろう
一つ一つの作品をゆっくりと、時には画面に顔を近づけて、あるいは後ろに下がって引いて、観て下さる…そうした動きの観客の背中からテレパシーが作者へ多くのメッセージを運んでくれる、これが有難い展覧会効果だ!・・・と考えている
今回、会場内では多くの方々の滞留時間がひと際長かったように感じられた

 わが個展は手造りがすべてに亘って徹底している、作品はもちろんだが、キャプション、解説、資料など会場の設営の全て、今回はモーツァルトに詳しいピアニストの久元祐子さんの資料を拝借してプログラムも作成した
また、小生作品を収録したデータCDも手造りだ、メディアにP/Cで焼き込んで、ケースの表紙封入や外袋詰め、そして今回は「東日本大震災被災地を応援します」のラベル 貼りを家族皆んなで作業した

 データCDの応援募金にはご来展者の方々から予想以上のご賛同を頂き、期間中に夜なべで増産しなければならなかったほど・・・そして、集まった売上金の全て、ご厚志そっくりの合計金26万円を朝日新聞厚生文化事業団へ寄託することが出来た
  データCD収録のわが作品が皆さんの手元で、どれほどの癒しをお届けできるかは未知数だけれど、来展者のお力を借りて大きくなった、ささやかな手造り品の売上金が被災地の方々に気持ちを載せて届くことを願った

 会期中は多くのお志、お土産を頂戴する・・・会場内ですぐに活用させて頂くもの、好物を後ほど頂戴するものなど有難くいろいろだけれど・・・中学のクラスメイト女性が お手製チョコを差し入れてくれた、「奥様用よッ!」と笑いながらカミさんに手渡してくれたが・・・
             もちろん小生も甘く、美味しい、それを摘まんで楽しませて頂いている

 

 

(2011)
想い出落書き帳のTOPへ戻る