薄荷

 梅雨時のどんよりした空模様が続いている。身も心もカビが生えてくるようで、 何とかスカッとしたいと思う。
昼間の時間が一年中で最も長いこの季節の午後4時前だと言うのに、まるで夕方 の様に暗く 黒い雲が垂れ込めて、だからと言って降って来る訳でもなく蒸し暑い。

   菖蒲の花の季節なので今年は町田市の薬師池公園に行って来た。
菖蒲田は良く手入れされて多くの花が見事に咲いている。
それぞれの菖蒲の株には名前を書いた木片が立てられているが、花は個性的で、大きいのや、小さくても確りと形の整ったもの、変わった形などの千差万別を競っ ている。

 この時のあまりの暗さにスケッチをし様としてさえ目を凝らさないと細部が見えない ほどだったが、 カメラマン達は『絞りを開けなければ撮れない』とか云いながら、それ でも旬の花影を カメラに収め様と頑張っていた。

 だが今日の花を良く見れば、花弁に水滴を載せた花全体がシャンとして見える様 だったから、 むしろ曇天なのが幸いして良い見栄えだったのではないだろうか。

 また、この公園には少し離れて万葉集にちなんだ植物を集めた一角がある。
これらの花は今季節を過ぎてしまって寂しいが、添えられた説明文に目を凝らしながら 行くと 隅に植えられた「薄荷」が目についた。
  ミントと言わずに、この「薄荷」と言う植物は万葉のいにしえからそのスカッとする香りは 薬用にでも用いられていたのだろうか。最近ではミントなどのハーブ類はまるで子供の 頃を思い出すような飴や、 チョコレート、ケーキ類や、飲み物、サラダ、添え物などの 数々に用いられ気分を豊にさせ、 落ち着かせる効用がもてはやされている。

 天の暗さの中で菖蒲田で咲いていた白い大輪の菖蒲の花は 何とスカッと見えていた ことだろうか。

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