麩まんじゅう ここ数年ご無沙汰していたお伊勢さんへ初詣に出かけた
。
朝出れば東京から充分に日帰りできることは新幹線開業以来変わっていないのだが、
このところJR がのぞみ増発をして全体にもスピードアップになってからはことさらに
距離が小さくなった様な気もする。
お伊勢さんへの初詣も勤めが名古屋になった頃がきっかけである、特に信心と言わ
なくてもあの境内の環境の清々しさに触れながら、年の初めを
感じることができて好き
である。
何時もの通り外宮、内宮と順に詣でたあとは門前町を通り抜け
「おかげ横丁」のうどん
屋さんの店先の床机に腰を掛け、吹き抜ける冷たい風にコートの襟を
立てて熱燗の
猪口をすすり、温かい伊勢うどんを楽しんだ。この店で注文に手間取ることはない、
熱燗のほかはツマミ、そして伊勢うどんがメニューで夫々に選択の余地がないのだから。
まァ、とにかくこの3品をゆっくりと楽しみ同席する沢山の人々の世話話を小耳に挟む
のも一興だ。
名古屋に赴任することになったのはもう三つも昔のことだから時効話だろうが・・・
「
商売は名古屋で通用すれば全国に通用する」などと先輩諸侯から励まされ、脅かされた
ことなどをカバンに詰め込んで新幹線の名古屋駅に降り立った頃のこと 、
「客先で抹茶を出されたら
認められた事だョ」などと入れ知恵されたが、後日これは事実であると悟ったりした。
そうは云っても同僚の先輩とて転勤族の他国者で、伝授される知識とて限り
があると
いうもの、伝統を重んじる土地柄では日常の細かいことが大切で、
それ等をそれとなく
教えてくれたのは若い頃机を並べていた地元出身の学友諸氏の友情である。
節季のこと、しきたり、贈答品には店の選択など・・・こうした小さなきっかけで地元での
お付き合いの輪は広がり、 次第に客先との打ち解けた関係となるきっかけになったように思う。
今回の初詣後もこの中の学友の一人に逢いに行く予定であり、手土産にとお伊勢さんの鳥居前
で福餅の小さな包みを用意して行ったものである。
ご当地では、いや今では東京でも手に入れることができる名物だが、「これは鳥居前で
買ったものだから」が言い訳である。
さて訪ねて面と向って話し始めると久し振りには・・・どこかへ飛んでしまって、
いっきに
学生時代にまで戻ってしまうような時を過ごしてしまった。
子供のこと、体調のことなど・・・それこそ寄る年波の話題は沢山あった。
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帰京後、彼から小さな包みが宅配便で届いた、名古屋近郊の町の名代「麩まんじゅう」で
ある、甘みを抑えた餡を柔らかい生麩でくるみ、木の葉で包んである。
それは当日中賞味と厳しいが、口に入れたその味は柔らかく、やさしさに満ちていた。
「お抹茶が欲しくなる味だね」と、我がカミさんと納得しあったものである
。
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