深川めし

 隅田川にかかる新大橋を渡り、清澄庭園の向いの道には 「江戸深川資料館」がある。
だいぶ前に出来たから既に訪ねられた方々も多かろうと思う。
ともかく入口を入るとちょっとビックリする光景が目の前に展開する。建物の中には 江戸時代そのままの街並が実物大に再現されてあり、照明や音響効果で一日の 移ろいを演出してくれ、 あたかも江戸の下町に紛れ込んだような錯覚を覚える。

   造られた大川端の船宿前には今で言えばタクシーか、吉原通いなどに良く利用されたチョキ舟が舫ってあり、屋台には寿司、てんぷらの類とか、あるいは茶店がいつでも客を受け入れてくれそうな気配で並んでいる。

 遅れて両国に出来た「江戸・東京博物館」に較べればずっ と小規模だが、往時の下町風情を感じる雰囲気は充分だろう、外国人の訪問も多い。

 さて、資料館の前の道をはさんだ向かいには「深川めし」を商う店があって、 資料館を 訪れた客達で 結構な賑わいである。むきあさり、ネギをぶち込んだ 鍋に味噌を入れて 煮たものを、丼飯にかけた だけのモノだが、忙しい江戸 下町ッ子のかき込み飯には 最適だったのかも知れない。
  江戸っ子はせっかちだ。「サ行」と「ハ行」の区別のつかない早口でまくし立て、 その 上怒りっぽい。

 しかし、火事は江戸の華などと言って、大変に大火が多かったそうだが、 それに備えて 常日頃から  材木を水に浮かして用意していたそうだから、ただ 短気だったと言う訳では なさそうだ。
江戸はその時代から上水道を備え、また下の処分にまで確りとした仕組みが 出来ていて、 結構清潔な 大都会だったようだ。

 また男性人口が慢性的に多かった江戸で、深川めしのようなモノをかきこんでは 忙し がった江戸っ子の様子が目に浮かぶ。
  「テやんでぇ、べらぼうめぇ」 と言いながらメシをかき込んでいたのだろう。

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