フレッシュ

 最近は喫茶店の数がめっきり減った。
世の中が忙しくなりすぎて、ゆっくりとした時間を売る仕組みが社会に合わなくなってしまったのだろう。
コーヒーを飲むだけなら、新しいスタイルのコーヒー・ショップがいくらでもある、味良く安いし、手軽な点は申し分がない。

 小生は、いわゆるコーヒー通ではないから、ことさらコーヒー談義を書けはしないけれど、ブラックで飲もうと思うことはない…やっぱりクリームは欲しい。
レストランなどではコーヒーに添えて陶器や金属製の壺に入れたクリームがテーブルに出てくる、昔なら、何と云っても小さな取っ手の付いた一杯用の金属製の ミルク・ピッチャーが定番だ ったろう。

 最近、家では近くの珈琲店で豆を挽いてもらってコーヒー・フィルターで淹れる様になり、昼食後にデザートの一杯がやっと定着したが、その程度が我が家のコーヒー・ヒストリーだ。
だが、なかなかやってみるとコーヒーの味と云うものはデリケートだということが解ってきた。
  濾紙には定量スプーンで決まった豆粉の量を入れ、熱湯を注ぎ、蒸らし、更にゆっくり湯を注いで抽出し、ポットから温めたカップに入れるのだが、結果の味は毎日同じとは思えない。
もちろんその前の食事内容や体調によっても感じる味は違うのだろうが、その時々の気温や湯の微妙な温度差、蒸らしの条件、などがあるのかも知れない・・・ともかく毎日楽しんでいる。

 楽しんでいるのは人間だけではない、近頃では猫のルイがコーヒー・タイムを察知するようになって、コーヒーを淹れる良い香りが漂い始めると、何処からともなく近くまでやって来て 、ジッとこちらを見つめている・・・但し、ルイのねらいはフレッシュ、最近の珈琲の友、小さなプラスチック・カップに詰めたあれだ・・・金属の小さな壺のクリームに替って近頃のコーヒー・ショップでも定着した・・・ふたを ハギ取るあれだ。
 ある時 容器の中や蓋にこびりついて残ったフレッシュを舐めさせてもらうと、ルイは大いに気に入って、これは大好物だとばかりに味を占めるようになるには、それほど時間はかからなかった。

  ルイは「我が家に来て以来、食事は缶詰フィッシュにドライフーズ、おやつにはオカカ、ミルクで、時折は好物の食パンを一つまみもらうくらい、鯵の干物や刺身にさえそっぽを向くのに…いったいどうしたことだろう?
 小生とカミさんの二つのフレッシュ容器を丁寧に舐めさせてもらった後、舐め切れなかった残りを小皿に落としてもらい、その小皿を舐めまわす…それを近頃の楽しみとして見つけた、2011年3月5日は 満17歳の誕生日を元気に迎えるルイの毎日。
 

 ガラス戸越しの春めいた陽射しを浴びて、四肢を伸ばしきって昼寝している午後です。
                                                                                                                                               
 (2011)

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