中華料理
 
 樹々の紅葉が美しくなる頃に横浜のホテルで高校 ・大学時代からの友達との昼食会があり、 全員がカミさん連れで集まれたのは久し振りの事だった、小さな会でも皆の予定を合せて集まるのは 大変なことである。
 いまミナトミライで名高く、ヨットの帆の様な形をした建物が名物である横浜のホテルの一番上の部屋、 この部屋をヨットに例えればマストのテッペンから進行方向を眺める・・・と言う位置にあり、見晴らしが良い日ならば目の前には東京湾越しに房総半島が、西の方角には富士山が望めるはず、もちろん眼下には横浜港が一望できる、しかし 、この日は冬の初めには珍らしく暑い位で霞が目の前を覆っていた

 会場は毎回替るのだが今回は地元幹事の計らいで特別に眺めの良いこの部屋を予約でき、 そこでの中華料理の昼食となった。もう回数すら記憶にないくらいに長く続くこの会は幹事持ち回り で年に数回は集まり毎回賑やかに、この頃ではご婦人方が主役となっての話題は一層賑やかに 尽きない。
既にみな現役を卒業した仲間ではあるが相応に歳を重ね、定刻には元気に各カップルが集合した。

 最近では中華料理もフランス料理並みに銘々皿に盛り分けられて給仕する店が多いようだ、 ここも大きな回転台付きのテーブルではあったがそうしたサービスだった。
 穏やかな味で美味しかったのはもちろんだったけれど、紹興酒を傾けながら飛び出す話題の 賑やかさのほうが勝っていたかもしれない、外は風が出てきたのか窓外の景色はクッキリと遠くが 現れてきた。
 振り返れば、この会の初回は日本橋浜町の小さな中華料理店だったと思うが若い夫婦が仲良く やっている繁盛しているお店だった。大皿に盛った海老の料理が出された時だったろうか お一人 1本です。」と店のカミさんが言ったのを今でも妙に覚えている。
味はとても美味しかった、今では店は改築されたと聞いたが元気に夫婦で店をやっているだろうか。

 パリを訪れた一人旅である日の夕食を中華にしたことがある、メニューはスープ、ワンプレートの セットでフランス風に一人前を頼めたので助かった。大都市の日本食屋ならともかく ヨーロッパでは なかなか簡単にラーメンをという訳には行かないようで・・・それでもいつもタップリな量の西洋料理に 疲れた我が胃袋休めには、どの町にでもある中華屋さんは大助かりだった。
先のパリの店には今年も友人と二人で行き料理と紹興酒を頼んだ、パリではあまり客の紹興酒注文は
多くないのかも知れない、二人でボトル1本ではちと心残りだった。

 夏の夕刻、イギリスの日没は遅い、湖水地方のホテルの庭には湖に向かいテーブル・チェアがあり
町の中華屋さんでテイクアウトの料理を仕込み、夕日を眺めながらカミさんと庭でのピクニックである。
スープと4品ほどの料理が器用にまとめられた料理をつつきながら良く冷えたビールで乾杯、夕空は
金色になり赤く変り山蔭に陽が沈むと、空は次第に蒼くなったが午後10時過ぎだと言うのに辺りは
まだ薄暮が長く続いていた、料理の味?・・・それはマァそれなりだったけれど。

 再び横浜、みなと風景、山下公園や港が見える丘公園へはバラの咲く季節にスケッチをしに時折
訪ねることが ある。
  ある日の昼時、中華街の路地を歩いていると店の前に出ていた男性に「旨いよ」と声を掛けられた、
男性は支配人というか給仕というか・・・そのような役割だったのだろうか? 昼定食は好みの料理2品
を選べる、お値打な定食はスープから始まり杏仁豆腐まで結構旨かった。
 それから数年経って、我がカミさんと丘の上の公園へバラの花を鑑賞に行った帰り道に、その店で昼食をとることにした。
  二人で昼定食を頼めば2×2で4品の料理を楽しめる、注文を受けたくだんの男性、我々がテーブル
に着くなり 「貴方は前に店に来た事があるよ・・・」と言う、前回からはずいぶん日も経っており、その上
二度目ではないか!、いささかビックリした 。
  この商売上手に惚れて その後に何回か会合などにこの店を使わせてもらったが、料理は皆さんに
好評である、 いわゆる昔風な大皿の中華料理の出し方が楽しい。
  残念なことに今ではその男性はその商売上手を見込まれたのか どこかの店にスカウトされてこの
店にはいなく なって しまった、しかし店のオーナーも女性達もみな気持ちが良く、いつも中華料理を
楽しませてくれる。

                                               
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