シャンパン

 お祝い事にはパーティーがつきもの、会の初めには脚付きのグラスの中で泡のたつシャンパンは爽やかで、勢いは祝意を表すに もってこい、「乾杯!」の音頭に合わせて飲み干す美酒は祝事と、これから繰り広げられる祝いの宴を期待させるのに相応しいものだ。
 今では孫の世代の祝い事が近かろうという年代でパーティーの機会も少なめ、 普段の宴ならばとりあえず「まずビール」からと、泡と酒宴とは切り離せない。

    シャンパンなどのスパークリング・ワインやビール泡などの炭酸ガスが腹に入ると胃壁を刺激してアルコールの吸収を良くするそうで・・・つまり飲酒の効果を高めるということか?・・・若かりし頃、友人の結婚披露パーティーで のこと、これをグッとやってから以降に飲むアルコールですぐに気分が愉快になったことを思い出す。

 最近ではいろいろな産地のスパークリング・ワインにもお目に掛るようになったけれど小生は自分用には敬遠気味である、 一人では「ポン!」と、あるいは丁寧にナプキンで押さえながら「シュ!!」と大きなコルク栓を抜いても何杯でも飲めるというものではない、せいぜいのグラスを傾けても後日にまで持ち越せないだろう…気が抜けたシャンパンなんて?
  それでも良く冷えた瓶を抜き飲む一口の魅力は…たとえようもなく美味い。

 この秋、中学3年間の同級生が文化功労者に列せられるとの報があった、大学も同期卒だけれど専攻学部が違っていたのでその後はクラス会で時折再会する程度で数十年過ぎた。梨園の生まれ育ちながら山登りを好み、故あって若くして一門を率いては道一筋に 、新しい挑戦を惜しまなかった彼がその指名の栄に浴することはまことに相応しい 、シャンパン事だ!

 共に机を並べたころの皆は年相応にヤンチャで、昼休みには崖をよじ登って生垣に空いた穴を潜り抜けて隣の外国大使館の庭を探検する冒険をしたり…とくに印象に残っている運動会では、クラスを挙げての仮装行列に当時公開されて抜群の人気だった黒沢明監督の「七人の侍」を演じ、そのときの彼は監督・・・農民役の 小生は着物扮装で、顔には一生一度のドーラン化粧をして列の先頭を歩くプラカード持ちだった・・・400mのトラックを歩いて回る行列は観客に大受けだったことを思い出す。
  側聞ながら最近も後継の若手育成に熱心でその収穫も大きいらしい。
小生が仕事場を訪ねたことがあったのは…それも数十年前、小生の当時の勤務地である名古屋だったと思う・・・その日の仕事を終えた彼の顔は自信に満ち溢れ、輝いている姿に接した再会だった。

  戦前からの文化勲章、戦後制定の文化功労者・・・この国の各文化に功績を残してきた方々には真に勲章の価値があると思う。
 これからしばらく彼も表のお祝いの行事で多忙だろう? 昔のガキ仲間の空けるシャンパンは時を置いても美味しく口にできると思う、健康に気を付けてこれからも一層がんばってほしい。

 先日その同じクラスで一緒だった仲間が出展していた美術展が国立新美術館で開かれていた、中でも古手は小生で約十数年の在籍、次は在籍その半分の一人、そしてさらに在籍その半分の 一人と計3人が揃って作品を展覧に供していた、そして毎日新聞社賞、東京都議会議長賞そして大衆賞(招待以外の一般入場者の投票による人気投票)をこの仲間で受賞できた。
  会期中のある一日、当時のクラスメイト男女が揃って展覧会に訪れてガキの再来のごとくにワイワイ、ガヤガヤと展覧会を楽しんでくれたものだ。
 このほんとに長い年月のつながりは小生たち全員にとっての真の勲章のようにも思える。

  結局、その日の来展仲間は美術館のティー・ラウンジでもお茶会を楽しみ、夕方には出展者仲間は近くの居酒屋でシャンペンならぬ生ビールのジョッキを上げて内々の祝いの時を過ごしたのだった。

(2010)

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