カレー、ボルシチ、コールスロー
サンデー毎日の日常に入ってから久しい、幸いなことにその間を絵を描くことに費やし、毎春恒例として個展を開催し続けられたのは、ひとえにサラ卆画家の作を楽しみに観て下さった多くの知人・友人達の応援の賜物だろう
初回は田町の露地にあるビル2階の小さなギャラリーからで、その女主は幼稚園児に教えるように個展のイロハを初心者の小生に教授してくれた
次年、我が唯一の絵の師匠が開いた銀座4丁目の画廊に移った、地図上では少し北へと移動した花の銀座で小学校児童の様に手をとり 師はノウハウを伝授して下さった
会期中のおもてなし用に銀座5丁目のお茶屋さんを今年も訪ねて茶葉を調達したが、師が「熱い湯でも美味しくお茶が入ります」と推薦してくれたもの、先日の購入の際に店員さんに「デパート地下売店の頃から重宝させてもらっているよ」というと、15年以上前に街中の地上に移動していた今の店の店員が嬉しそうに「長い間ありがとうございます」と礼を言ってくれた
師の他界で残念なことに4丁目の画廊は閉廊となり、次には銀座1丁目の表通りの貴金属店上のホールへ移った、地図の上ではまた北へと移動した事になる
我が家も茶器類セットを個展用に取り揃えてひと箱にまとめて毎春の銀座用に用意しておいたものだ
ところが金価格が高騰してくると店の本業多忙となり、ホールは顧客の待合所へと転用されあっけなく閉廊になる
表の銀座通りは立派に整備されて綺麗になってはいたが、時代の移り変わりでは仕方がなかった
次に探したのが現在の画廊、東京オリンピックの際に作られた高速道路が銀座通りを渡る橋をくぐって北の京橋、新会場に移って既に5、6年になる、移転当時の京橋交差点を囲む建物はその後一角を除いて近代的な高層ビルに建て替えられ、東京駅方面の眺めも高層ビルが林立する風景に
大きく変わってしまった
個展会場でのお茶サービスは新型インフルエンザ騒ぎ以降は使い捨ての紙コップに替えた
更には、個展案内状の地図で目印だったビルの周りが再開発中、目印ビルはスッポリ遮蔽カバーに隠れて目印の役にならず、日増しに変わる街の風景を目の当たりにして
サンデー毎日の出不精を反省せざるを得なかった
その日 序でにひと駅足を延ばして日本橋へ行くと、またまたビックリ!! 既に一角が先年高層ビルになっていたが、残る二角も再開発中の大工事進行中であった
半世紀以上前の春にこの場所近くで社会人となったのだが、しばし春の陽を浴びながら昔日の風景を想い出そうとしていた、その頃近くの洋食屋で再三お世話になったのを思い出し、入口
の長い列の後尾につき、やがて一階のテーブル席に座った 時分どきの一階は昔と同じ雰囲気の昼食時であった
周囲テーブル席のお客さんは今どき風の豪華メニューを美味しそうに召し上がっている、やって来たウエイトレスのおばさんに小生は「クラシックに
・・・カレーと、コールスロー…」 そこで、おばさんがすかさず『ボルシチね!』・・・初顔ながらそのリズムにホッとして顔を見ると、半世紀前にはまだヨチヨチ歩き位だったろうそのおばさん、思い出ビジネスランチ・セットの注文も時たまあるのだろう、隣席客からの目はちょっと不思議そうに見ているように感じたが、直ぐにテーブルに並んだ
小生の注文品の味は たぶん昔変らぬものだったろう
コールスローとボルシチは各50円、カレーは750円の〆て850円まで、なんとなく懐かしさを覚えて店を出る
帰途 高速道路がまたぐ日本橋を渡る、「日本橋」に高速道路の蓋がかぶされたのは東京オリンピックの前、仕事場の隣りで進む大工事を日々眺めたものだが、次の東京オリンピックでは高速道路ルート
に変更があるとか・・・またまた大工事と街並みの移り変わりを見る事になるのだろうか・・・ |
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(2014)
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