ビール

 夏は暑いものだ。だがこのところの暑さは盛夏というにはふさわしい。  熱帯夜は熱帯の実感を持って迫ってくる。
寝苦しかった夜が明けても、まだ水銀柱は25度を下回らない。

 清々しいとはお世辞にも言えない早朝に通いなれた首都高速道をマイゴルフコースに向けて車を走らせると、きまって隅田川のほとりにあるビアジョッキビルが「頑張れよ、今日もヨロシクな」とニヤニヤと見送ってくれているようだ。  

 ゴルフも8時台にスタートすれば、朝露を踏んでティーアップできる。
朝は茶店まで行きついても。まだ氷水や梅干などでも我慢できるだろう。 「今日は風があるから、昨日に較べれば随分とましですよ」などとキャディさんに おだてられれば、「そうか、俺は運が良いのかな」などと納得する、 だが、もうすぐ9番グリーンともなれば、目の前には冷えたジョッキのコハク色と、 白い泡がいやでもチラつくことになる。

 と言う訳で、昼食後の最初のティーアップ、日盛りの中でも体から程よく力が 抜けて 「ナイスショト」。もしそうでなかったら、「あと一杯飲まなかったからだ」と、 しきりに 反省することになるだろう。

 汗が出るのは暑さのせいで、決してスコアのせいではないぞ、と自らに言い 聞かせ ながらやがて最後の茶店、水分補給に「エェイ、ビール下さい」。

 本当はゲーム後の風呂上りに冷えた奴をグッとゆきたいのだが、そこは帰りの ドライブもあるから 我慢の子、だが帰路、浅草のジョッキビルの脇を走り抜ける頃 には「帰心、矢の如し」 家に帰り着くなり冷蔵庫からビンを取り出して「ヤレヤレ」、 結局、考えてみれば 今日も随分飲んだものだ、と思うのだ。

 ビール工場を見学すると、決まって案内役がグラスへの 美味しいビールの注ぎ方を説明してくれる。これ、メーカーによって多少やり方に 違いがある ようだが、何れも泡を大切にしている点は共通しているようである。

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