地域限定ビール

 京都駅の新幹線ホームの売店を覗いていたら、「京都限定販売」と銘打ったそれぞれ大手メーカーの缶ビールが目についた。

 

 このところ急に陽気が暑くなったせいで喉も乾いていたし、これから乗る車内で飲もう かと その中の一つを買いこんだ。話題の地ビールではなくこの手の企画は最近では乱 立気味で、 それらの差がどれ程であるかを判断するなどは、もちろん筆者に出来る訳は ないのだ・・・が、 この場合敢えて云うならば、手にしたそれは心なしか円やかな感じだっ たかも知れない。
それが古都・京都を表現する味わいと言うのだろうか・・・まさか、缶の意匠だけが違う訳 でもあるまい。

 東京の青山辺りに金沢の有名料亭の出店がある。加賀百万石には今も格式の高い 料亭が数多、 その幾つかが東京にも出店を構えている。そのうちの一つなのだが店内 の造作や、仲居さんの 給仕まで本店そのままな豪華な座敷で先日「北陸限定」ビールを 出された。 金沢からわざわざ直送しているのだと言う。
  その味については出される加賀料理に相応しいのかなと 何となく思いこんで飲んだから なのか、なぜかふくよかさが感じられるビールの様に思った。

 金沢の味は自他共に許す誇るべきもので、とくに「日本海の魚が美味しくて・・・」とは たしかに 当を得ている様である。その他にも幾つもの訳があるだろうが、例えば材料には金の糸目をつけい・・・ だから全国から良い品物が集まってくると言うことなどだ。
高級な「むし鰈」などは全国一の高値を付けてくれるここへ全国から集まってくるのであり、 ご当地の水が良いのも料理を引き立てヽいるし、気候とて味を創ると思う。

 かくして地酒も加賀料理で飲まれてこそ、味が一番活きると云う訳らしい。 あるとき、思いきって金沢から地酒を取り寄せてみたけれど、何故かピントが外れてボン ヤリした感じがした。
が…青山のこの店で注文すると、加賀料理にその酒がなぜかピッタリと合っていた事を 覚えている。

 ところで最近、思い掛けなく金沢で悠々自適の先輩から自慢の「加賀地酒」を贈られた。
冷で頂く味にあの頃を思い出させる懐かしさ甦って来て、チビリチビリと一升瓶を長い間 楽しませて頂いた。
あの頃の金沢のわがビジネスと日常生活には大きな苦労と、同じ位の楽しみが同居して いたのを思い出しながら・・・。

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