ばくだん

 「何事も、基礎が出来ていなくてはならない。」などと殊勝な考えから カルチャースクール 通いを始めたのは やがて一と昔前のことである。 やはりその道のプロが毎回ポイントを適切に指示してくれるので自己流が 恥ずかしい、新 発見がある。

 夜のクラスなので勤め帰りの老若男女25名程度が集まる、6時からの とても集中し充実を した3時間の教室が終わると9時になる。
毎回そのあと先生を囲んで10名内外の有志が近くの大衆酒場で反省会 を開いているとの こと、それからの筆者はは3回に一度くらいは参加する ことになり、好みの酒を片手にいろ いろと話を聞いてみると、生徒さんの 中には何年も教室に通い続け 実力プロ顔負けの人 もいる事も知った。

 さてその酒場はいわばありきたりの田舎家風造りで、紫煙の中でワイワイ、 ガヤガヤと 騒々しい そんな店で参加者は「おしながき」を眺めその中から 好きなものをテンデに注文し 皆でつつくというスタイルの集まりである 新参者の筆者は「おしながき」の中に「ばくだん」を見つけ「これはナニ」 とばかりに注文した。
 聞けばこの品は新宿辺りが発祥だというからご存知の方も多いと思う。
いや「知らなかったのか」と云われそうだが、 中にはマグロ、はまち、貝柱、 イカなどの刺身 がゴロゴロと小鉢に入っていて、くわえて納豆、鶏卵、 きざみネギは入っている からし、 醤油を少々加えて、納豆を かき混ぜる ようにゴチャゴチャに混ぜると出来上がり、これで 600円なりとは・・・お値打ちではないか。

   けっこうボリュームもあり、旨いので参加の連中の間でも人気となり、 それ以来毎回真っ先にテーブルにのる定番となった。
  思うに、この渾然 一体となった中身の組み合わせが結構な味のパフォー マンスを生み出していたのではなかったのかと思う。

 生徒としての教室通いを卒業した今でも時折この会には顔を出させて もらっているが、 小生が深夜組みと称するメンバーの顔ぶれに新しいメン バー が加わってもほとんどは 変わらずに続き、お元気に若い者たちに囲ま れる先生の笑顔も相変わらずである。
もちろん勝手に注文し皆で突っつくルールはそのままに週一で続いている が、近頃は店も 変って少し上品になっているかもしれない。

 だが、何故あの小鉢に「ばくだん」などという物騒な名前が付けられたの だろうか、物騒にも  いつかは爆発するぞ とでも言うのだろうか・・・・・・・・・

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