鮎漁が各地の河川で続々と解禁になっている。鮎は一年の一生の間に、釣り人 へは 醍醐味を満喫させ、食べる者には美しい姿に秘めた川の香りを伝えてくれる。
近年、シーズンの川筋は、川中の鮎の数以上ではないかと思わせるほどの多数の 釣り人たちが釣り糸を川面に流している。

 京都の嵯峨野の先、清滝へのトンネルの手前 鳥居本に は古くからの鮎料理屋が あって、 清滝川でその朝釣れた鮎を料理してくれる。何十年かの間に何回か訪ね ている。 藁葺屋根のたたずまいは変わらず、料理も相変わらずだが、グルメブーム の昨今は 少々俗っぽくなったのは仕方ないだろう。
昔も今も如才なく店を取り仕切っているのは女将である。

   川石についた「藻」を餌にする鮎は、石をめぐって縄張り意識のカタマリみたいなものらしい。
 しかし棲む川筋によって環境は当然違うから、魚影も当然違ってくるのだが、鮎達は自分の石にしがみついて そんなことを知る由もない。

 北の清流の養分は 恐らく南のそれと較べて少ないの か早い季節の北陸地方の 鮎は小さくて可愛らしい。
鮎のブツ切りを「ソロバン」と言うが骨を気にすることはない、また塩焼きなら頭から ガブリと食べることが出来るし、これがまたすこぶる旨い。

 長良川の鮎も有名だが、こちらは藻が豊富で生育が早いのか姿は大きい。 そして川の香りは強くまさに香魚である。しっかりした骨もきれいにに抜き取ることが 出来る。 鮎はこれからさき 秋になり子持ちの 落ち鮎まで食べ応え十分だ。

 鳥居本での落ち鮎の塩焼きと、大女将が七輪で焼きながら裂いてくれた松茸の 炭焼き、 この贅沢は格別だった。

 半年の間人間どもを十分に楽しませて、鮎もわずかの数が冬を越すそうである。
だが姿は真っ黒になって、くたびれた姿だと言う。

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