甘納豆

 歴史の古い菓子のようである。
専門的にただせばその作り方には云うに言われぬ秘伝があって、それこそ老舗の 味わいが守られているのではないだろうか。
豆と砂糖で出来てはいるがいろいろな種類の豆が原料になっているから小粒のもの、 大粒のもの、茶色、草色、黄色など みな味が違って駄菓子の部類ともいえるし、 高級、高価格のものもありそれだけ多くの日本人に好まれているお菓子なのだろう。

   筆者の好みは「小粒の小豆」それもやや硬く、砂糖が少し歯ごたえがあってガリガリ くらいでも良い。
 何のことは無い少し干からびたものかもしれないが、一粒一粒小さい それを口に入れ 食べるとなぜか懐かしい味がするのである。白い大粒の豆や緑色の豆  もっと大きなそら豆だってよいのだが、一粒一粒も最後近くになると手の平に こぼれて残った砂糖ともども「エイッ」と口に投げ込む小粒の小豆が好きである。

 有名店のいろいろな種類の甘納豆詰め合わせは小さな化粧箱の中に詰め込まれ 美しいし、またそれなりに美味である。 片や小さなビニールの袋に無造作に詰め 込まれてはいるが、これにこだわりの味が秘められている逸品を並べる和菓子屋さん だってある。
  これは豆ではないが「栗甘納豆」を頂戴したときこうした比較のチャンスがあった。
もちろん栗甘納豆も大好物である。
栗甘納豆にはなんともいえない栗の味が口中に広がる楽しみがあるのだが、綺麗な 栗の形を保っている栗だけを揃えた有名店のそれに比べて、まるで作り損ないの ようなかけら等も混ざった袋詰めのそれのほうが見栄えこそ劣っているものの 秋の 栗の香を伝えてこの点で数段に上の味がしたのである。

  甘納豆も最近では多くの新しい菓子類と競争をしなければならないし、健康志向も あってか甘みも押さえ気味だとは聞いている、いよいよ素材勝負なのかも知れない。
だが外見にとらわれないとは よい教訓かもしれないと思った。

 この甘納豆を頂戴した方から詳しいお店の情報を聞いておかなかったのが 残念 だけれど、今度機会があったらそのこだわりのお店の名を聞いておこうと思う。
  きっとあの方は筆者以上に甘納豆好きに違いない。

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