地震のある日本では地層処分は適さないと判断
   : 1962(昭和37)年、原子力委員会廃棄物処理専門部会


T 日本では地層処分は適さないと、
     原子力委員会

 現在、日本でも地層処分が当然の事であるかのように推進されています。
 しかし1962(昭和37)年、原子力委員会廃棄物処理専門部会 中間報告で海洋投棄と地層処分をあげ、「国土が狭あいで、地震のあるわが国では最も可能性のある最終処分方式としては深海投棄であろう。」と述べている。
 私たちは深海投棄がよいなとどは夢にも考えません。しかし「地震のある」日本では地層処分は適さないとした原子力委員会廃棄物処理専門部会の判断は『まっとう』でした。極めて正常な判断です。
 その後海洋投棄がロンドン条約で禁止され、南極条約により南極に捨てる道も閉ざさましれました。やむなく地質的に古く、安定した大陸での処分方法として検討されてきた地層処分を日本でも取り入れることにしました。日本では無理だと判断し、除外していた地層処分を一転して推進するため無理に無理を重ねています。
 日本でも地下処分できると言わせるために動燃に調査させました。動燃は原子力委員会の要求どおり【できる】と報告しました。※この報告が1984(昭和59)年3月、動燃(現核燃機構)の「可能性ある地層の調査」です。主要な内容は「未固結岩等の明らかに適性に劣るものは別として、岩石の種類を特定することなくむしろ広く考え得るものであることが明らかとなった。」「地質条件に対応して必要な人工バリアを設計することにより、地層処分システムとしての安全性を確保できる見通しが得られた」というものです。この報告を受けて、原子力委員会 放射性廃棄物対策専門部会はわずか4ヶ月後の1984年8月、日本における有効な地層の選定終了と判断しました。そして人工バリアと天然バリアによって地層処分できるということにしました。安定大陸に比べ極めて地質条件の悪い日本では、処分場の適地基準を「未固結岩」以外とするしかなく、人工バリアに依存するしかなかったのです。
しかし天然バリアと言えるほど日本の地層は堅固でも緻密でもありません。東濃のボーリングサンプルの項目をご覧ください。
 頼りとする人工バリアはXで述べたように完成された技術ではありません。日本のどこにでも適用できるほどに普遍性を持つわけではありません。主として岐阜県東濃をフィールドとして研究してきたにすぎません。東濃で処分を行うしたら、可能という安全評価になるでしょう。処分に適さない地域で、処分研究をするはずはありません。

U 地殻変動帯にある日本

1. 日本の花崗岩は亀裂がいっぱい、風化して土状にもなっ
   ている。高レベル放射性廃棄物が漏れても閉じこめる力
   が弱い。
  資料3(原子力工業 1981年2月 記事)

  日本は世界有数の地殻変動帯に位置します。こうした地域で地層処分は無謀です。
 地殻変動帯に位置する日本の図 
(『大地動乱の時代』 石橋克彦著1994年 岩波新書)
使用済み核燃料の処分候補地が決まったフィンランドは世界的にも地層が古く安定していると言われています。
 しかしスウェーデンの古地球物理学、地球科学者 ニルス・アクセル・モルナー氏は安定と言われているバルト盾状地のスウェーデンですら、退氷期には氷の重さの変動により地層が激しく隆起し、地震活動 (マグニチュード8以上にまで及ぶ )が活発になる。(高レベル放射性廃棄物の毒性の超長期性を考えると)安全な処分場は提供できないと原子力資料情報室の通信(NO. 319)に記しています(フィンランドもスウェーデンと同じバルト盾状地)。

2.活断層のないところでも地震は発生する。

 核燃は2000年レポートで「将来十万年程度にわたって十分に安定で、かつ人工バリアの設置環境及び天然バリアとして好ましい地質環境がわが国にも広く存在すると考えられる。」と報告しました。その理由は地震は活断層のあるところで繰り返し発生する、地殻変動は過去10万年の様子を知ることで、将来10万年の変動を予測できると考えるからです。
 地層処分問題研究グループの高木学校、石橋克彦氏は活断層のないところでも地震は発生する。過去の地殻変動の現象が全て地層に刻まれているとは限らない。何万年も後になってある場所が地震の影響を受けなかったということはあるかも知れない。しかし今ここが何万年にもわたって地震の影響を受けないとは言い切れないと指摘します。
詳しくは、「『高レベル放射性廃棄物地層処分の技術的信頼性』批判」(2000年7月20日 地層処分問題研究グループ <高木学校+原子力資料情報室>、「公開討論 『高レベル放射性廃棄物の地層処分を考える』2000年10月21日 全記録」、「高レベル放射性廃棄物地層処分はできるか」2000年12月 岩波の「科学」などご覧ください。)

世界のどの国もまだ高レベル放射性廃棄物を地下処分したことはありません。どこの国もその処分に困っているというのが実情です。

V 高レベル放射性廃棄物ガラス固化体
  1本当たりの毒性が極めて高い


  ガラス固化体1本で広島原爆の30発分

 その理由はガラス固化体1本あたり
 ・放射能が強い
 ・毒性が高い
 ・放射性核種が多種(少なくとも80種以上、ただし娘核種を含まず)
 ・超長寿命(半減期が非常に長い)各種が含まれる  
  例えばジルコニウム−93万年、ネプツニウム−214万年 、プルトニウム−2.4千年など
 ・崩壊熱が高い 50年経ってもガラス固化体の表面温度が100度以下にならない
  発熱量は2kw~3kw/本
などによります。
  資料 1(日本原燃の資料、毎日新聞 2000年8月3日 記事で確認ください )
だからガラス固化体1本が広島原爆の30発分に相当すると言われています。
国も放射線量の高さと経年の変化を資料2(「高レベル放射性廃棄物処分に向けての基本的考え方について−参考資料−(案)」 1997年7月18日 処分懇談会事務局)のように記しています。ただしグラフの縦軸、横軸とも対数であることに注意してください。

 地層処分とはこの超猛毒の高レベル放射性廃棄物を数万本も地下に埋め捨てることを意味します。埋め捨てた放射性廃棄物の毒が地下水を介して人間界に影響を与える可能性があります。だから地層処分に反対しています。
    
W 日本は地下水が豊富 

  地下水を介して人間の生活圏を汚染する可能性が高い 

1.地下深部でも地下水の流速は0.05m/年〜50m/年

 核燃は地下深くなるほど水の流れは遅くなると考えていました。しかし東濃での深層ボーリング実測値により、地下深部でも水の流れが遅くなるとは言えませんでした。
核燃の2000年レポートも
  0.05m/年〜50m/年、断層破砕帯では50m/年と考えています。
場所や亀裂によっては地下水の流れは速いのです。 資料4 
  ● 流速:0.05〜50m/y  断層破砕帯 流速:50m/y
(核燃の 2000年レポートより)

2.プルトニウムが50年程度で1.3km移動!!!

  コロイドがプルトニウムを運んだ
 高レベル放射性廃棄物中の猛毒の代表のように取りあげられるプルトニウムは、水に溶けないため地下処分しても移動しないと考えられていました。
 しかし米国科学者の報告から、ネバダ州の地下核実験場から1.3km離れた井戸からプルトニウムをはじめコバルト、セシウムなどが検出されました。プルトニウムは地下水中のコロイドに付着して移動していたのです。 資料5(岐阜新聞 1999年1月7日 記事もととなったイギリスの科学雑誌「ネイチャー」(1999年1月7日付け)で確認ください。
 プルトニウム検出の井戸(砂漠の核実験場でさえ地下水)での流速は1~80m/年。地下水が豊富で、亀裂や断層だらけ日本で、核燃の2000年レポートにいう地下水流速0.05〜50m/年をはにわかには信じがたい。

3.1000年以上かかるはずの放射性物質が、
  わずか50年で移動!!!

 
 米ではネバダ州ユッカマウンテンで万一容器から放射性廃液が漏れても240m下の帯水層まで移動するのに1000年以上かかるため問題ないと言われていました。しかし約50年前、南太平洋で行った核実験による塩素36の放射性同位体が、ユッカマウンテンの断層の亀裂を通る地下水にのって全く予想外の速度で亀裂を移動していることが分かりました。(読売新聞 1998年12月24日 記事で確認して下さい)

X 地下に処分しても大丈夫という安全は
   実証されてない。
  なされているのは予測であり、
   間接的実証です。


1.地下微生物の影響は未確認

地下840mの東濃の花崗岩(高圧で酸素がとても少ない)にも鉄酸化細菌、鉄還元細菌、硫酸還元細菌などの微生物が1ミリリットルに10の5 〜 10の6乗 個 確認されました。これらの微生物が埋め捨てた高レベル放射性廃棄物や人工バリア金属にどんな影響を及ぼすかは、まだわかっていません。地下深部の微生物につていの研究は始まったばかりです。 資料7(日経サイエンス 1999年9月 記事を確認してください。)

2.人工バリアのガラスは地下水に溶けてゆく

 日本では全ての使用済み核燃料を再処理し、プルトニウムとウランを取り出した後に残る、究極の核のゴミを「高レベル放射性廃棄物」と言います。この高レベル放射性廃棄物を超高温(1100度以上)で熱したガラスと混ぜて固形化した物をガラス固化体といいます。

 核燃は2000年レポートでガラス固化体が地下水によって溶かされるまでに7万年もの年月を必要とするとしています。
 しかしガラスは水と反応して溶けやすい性質を持ち、ビーカーを水で洗ってもごく微量なガラス成分が検出されます。ましてガラス固化体は放射線により加熱され、性質が劣化します。劣化によりガラスが地下水に溶ける速度が増大します。
 地下水の豊かな日本の地下でガラスによって高レベル放射性廃棄物を閉じこめておくためには、緩衝材の粘土(ベントナイト)やオーバーパックなどによりガラスを水に触れさせないこと、触れた水の動きを止めるという前提が完全にできてはじめて、核燃の言う、「ガラス固化体溶解期間7万年」が成り立ちます。勿論実証されたわけではありません。 
 核燃、原環機構、国は何千年も前のガラスが完全な形で発掘されるので、ガラスは安定した物質だと言います。しかし発掘されたガラス製品は放射線照射を受けることなく、たまたま好条件で地下水との接触を免れ、溶解を免れた極まれなガラスにすぎません。高レベル放射性廃棄物を溶かし込んだガラス固化体とは前提が全く異なります。
同列に扱うのは言語同断です。 
 詳しくは原子力資料情報室通信NO.312 「『地層処分研究開発第2次取りまとめ』を批判するC 放射能封じ込めの役に立たないガラス固化体」をご覧ください。

3.ガラス固化体の容器・キャニスターは腐食に弱い

  ステンレスは腐食に弱く、放射線照射で脆くなる  
  「人工バリア」の1つキャニスター材のステンレスは、原発のシュラウドや圧力容器と同様ひび割れが発生しやすい、腐食も起こりやすい、中性子照射でカスカスに脆くなる性質をもっています。
 キャニスター材のステンレスにはNFZ15CN24,13(仏)耐熱ステンレス、SUS304L耐粒界腐食ステンレス(日本)が使われています。仏のNFZ15CN24,13 の方が炭素を多く含み、より腐食しやすい材質です。現在六ヶ所で貯蔵されているガラス固化体はフランスから返還されたものです。日本で使うものは炭素を減らしたステンレスです。ちなみに台所の流し台のステンレスはSUS304です。
 東京電力、中部電力、東北電力、日本原電、中国電力ではシュラウドや圧力容器にひび割れが発生しています。これらもステンレスでできています。しかも304から腐食に強いと言われる306Lに換えてもひび割れは発生しています。
 材料工学の専門家はひび割れや編み目状にカスカスに脆くなっていくのは原発の条件下では避けられないステンレスの性質だと指摘します。

4.溶接技術、遠隔操作技術はこれから研究!

 高レベル放射性廃棄物を地層処分するときにはキャニスターを厚さ約16cmの炭素鋼等金属のオーバーパックに封じ込め、それを更に厚さ70cmのベントナイトやケイ砂などの緩衝材で包んで地下に埋め捨てます。
しかし16cmもの厚さのオーバーパックの溶接は可能か、ガラス固化体を入れた状態で溶接ができるのか、緩衝材・ベントナイトは地下水を閉じこめておくことができるのか、高レベル放射性廃棄物の発熱が高く、ひびわれたりしないか。
 ガラス固化体だけで500kgもの重量があります。それを輸送容器のキャスクから取り出し、厚さ16cmものオーバーパック(重量約5トン)に詰めて溶接し、300以深の地下に降ろし、処分の孔に定置し、緩衝材を均等に詰め込んで埋め戻すという、一連の作業は全て遠隔操作で行わなければなりません。放射線が強すぎて、遠隔操作で作業するしか方法がありません。途中で何らかのトラブルが発生しても、人間が回収や確認することはできません。

しかもこうした技術は完成しているわけではなく、「これから開発する」のです。


 以上T〜Xの観点から、地下処分は非常に危険であると考えています。地下処分を検討するとしたら安定した地質の、地下水のない、或いは極めて少ないところではじめて考えられ得る処分方法であろうと思います。
 日本ではこれ以上発生させないという前提のもとで、回収可能性を含んだ浅地下または地上での長期管理の検討などを、推進者から完全に独立した機関が時間をかけて管理方法を検討する以外に道はないと考えます。
 後の始末を考えないで、ただやみくもに原発、核燃料サイクルを推進してきた国と、国に従って金と力で強引に押し進めてきた日本の原子力政策を廃棄物問題から、改めて考え直すべきです。
 反対するなら対案を出せと言う人がいます。この問題に答えを出せる人間が存在するでしょうか。答えの出せない猛毒のゴミの発生を止めるべきだという以外に、答えを持ちません。

Y. 高レベル処分法の問題点

1.国民に知らせないために、あえて早急に成立させた
  高レベル処分法
 

 2000年4月21日から衆参両院の実質審議がわずか4日間というスピード審議で、5月31日、国会の最終日直前に成立した高レベル処分法(特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律)は国民に知らされないまま成立しました。市民側は国会でのロビー活動と共にマスコミへの情報提供も積極的に行いました。しかしマスコミの反応は鈍いものでした。
2000年の秋には処分実施主体・原子力発電環境整備機構(略称:原環機構)が設立され、処分費用を徴収して処分事業のためのPR活動と処分地層処分選定に向けた事業を行っています。(法律成立以前、日本は原子力委員会の決定を法律のように扱って処分の方法を検討してきました。)

2.法律ができたら、【押しつけフォーラム】の実施

 国は高レベル放射性廃棄物地層処分のことが知られていないから、知らせる必要があるとして、2001年は全国11ヶ所でフォーラムを開き、事業推進のために税金をつぎ込んでいます。
法律を作る前にこそ国民に知らせ、議論すべきでしょう。多くの国民が国会審議中に地方での公聴会開催を求めました。しかし「時間がない」という理由で、実現しませんでした。知られないようにあたふたと成立させ、法律ができたから、処分場をつくることを承知しろ、処分場を引き受けろ、原発の電気を使ったものの責任だと、責任を押しつけるのは国の強引な原子力政策のツケを国民に押しつける詭弁にすぎません。
 
3.高レベル処分法概略と批判

1)処分地選定に自治体の拒否権はない。

 処分地選定は当該自治体の首長、都道府県知事の意見を聴いて尊重する。
(意に反しては行うことはない)
しかし首長、知事に「拒否権はない」。処分場をつくるための法律であり、拒否権を認めたら処分地は選定できない。法案審議では「同意を得て行う」と言う文言を入れるべきだとする強い意見に対し、「意見を聴かなければならない」から「意見を聴いて十分に尊重してしなければならない」と修正しただけであった。「同意」を条件としては成り立たないためである。
国のシンポジウムでは、尊重する、意に反して行うことはないと言う言葉で拒否権があるかのような錯覚を与えている。しかし本当に拒否権を認めるのであれば、法律に明記すべきである。それができなから、あいまいな言葉を使って誤魔化そうとしているにすぎない。
 科学技術庁長官から「確約書」を受け取った青森、岐阜、北海道も全自治体と同様処分候補地である。 

2)使用済み核燃料を全量再処理する。←4万本のガラス固化体:プルトニウム400トン〜450トン発生!!これだけのプルトニウムをどこで使うというのか

3)300mより深い地層に処分する。←深ければ安定しているというものではない。

4)処分は処分実施主体が行う。←100年にわたると言われている事業、責任が持てるのか。

5)処分費用はガラス固化体を発生させたした電力会社が負担する。
←電力自由化でも選択肢のない一般消費者が負担させられる。
←ゴミは発生者責任が原則。発生させた電力会社の責任をあいまいにする。

6)安全基準はこれからつくる。←処分地に適した基準になる

7)処分地選定など実施計画の変更は閣議決定に止まり、国会の関与はない。
←白紙委任である。

 私たちはほぼこのような考えから高レベル放射性廃棄物処分と「超深地層研究所」に関心と危惧の念を持っています。今後も国の高レベル放射性廃棄物処分政策、核燃料サイクル開発機構、原子力発電環境整備機構、そして関係する自治体を監視し、地層処分に反対してゆきます。

 
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