公開された核燃の5冊の処分候補地報告書から
            
                                           2005年2月2日


 2004年12月17日の名古屋地裁判決で敗訴した核燃は、2005年1月4日の控訴期限日に控訴を断念を発表した。名古屋地裁判決を覆すのは困難との理由であった。同時に報告書の開示も発表した。

 原告の希望で2005年1月28日に開示を受けた。2001年4月、福島瑞穂氏への答弁書で報告書の存在を知ってからほぼ4年かかって、公開された報告書を読んで、現在感じていることを記す。

1.不安的中

 岐阜県瑞浪市はまさに処分候補地だった。
 東濃が危ない、研究所の周辺地域が危ないと、私たちが訴えた不安は的中した。
 
 「東海・CA地域リモートセンシング調査」では美濃帯と領家帯の地域が調査対象地域であり、岐阜県東濃の中津川市が1、上矢作町が2、瑞浪市の南部と愛知県小原村の一部、そして長野県下伊那郡平谷村の2地域が処分候補地だった。
 
 <処分場に最も近い瑞浪市>
 @1986年以来の調査データが蓄積
 1986年以来、核燃は岐阜県民、住民に黙って高レベル放射性廃棄物地層処分の研究を長年行ってきた。現在は超深地層研究所の建設のためという名目で、処分場の精密調査地区で行う調査と同じ内容の調査が実施されている。日本で最も処分地に向けたデータの集積された地域である。

 A 瑞浪市は処分候補地だった
 その上1986年から1988年にかけて核燃が行った処分候補地選定調査で、東濃地域の領家帯花崗岩分布地域が処分候補地として選ばれていた。

 B申し入れ方式もアリ?!
 NUMOの公募開始から2年程経過したが、自民党内からは、早く決めろ、知事に反対させるなとの意見が強く、申し入の可能性が強まった。岐阜県民にとって、申し入れが何をもたらすかは、超深地層研究所の発表を思い返せばよい。

 Cデータは処分場と安全規制の両方に使われる
 超深地層研究所のデータは処分場建設と処分場の安全規制の両方に使われる。日本では処分場の安全規制が未だ作られていない。同じデータを使い回したら、データのある瑞浪市や東濃地域なら安全に処分できるという規制になる。

 こうした状況が何重にも重なって、東濃地域特に瑞浪市は日本で最も処分地に近い位置にあると考える。


 2.報告書が使われる可能性あり
 処分地は公募する事になっている。
 しかし公募が行き詰まったり、処分場を早く決めようという動きが強まったとき、この報告書が使われる可能性が高い。

 その前兆が1997年の大物政治家による鹿児島県笠沙町の離島適地発言と、その発言に触発された笠沙町長の2005年1月4日役場職員に伝えた処分地応募構想(4日後に白紙撤回)である。
 
 このほか高知県佐賀町では2003年12月に住民の一部から高レベル放射性廃棄物処分地に応募するよう議会に請願が出された。2004年9月、町議会は請願を否決した。この佐賀町が、開示された報告書の処分候補地に上がっていた。鹿児島と高知の2つの町の処分地応募問題は偶然の一致と言えるか大変疑わしい。

 誰かが何らかの形で報告書の内容を知り、各地に高レベル放射性廃棄物の処分場の適地とささやいた可能性を否定できない。

 3.処分候補地を面として捉える
 核燃のねらいは花崗岩地域と堆積岩地域である。今回開示された5つの報告書の25ヶ所の処分候補地の中で、花崗岩類分布地域から14、堆積岩類分布地域から11地域が選ばれた。開示された報告書の処分候補地域は3km四方の地域を○で囲んでいる。
 
 しかし、その地域だけが適地なのではない。処分候補地となる地層の分布地域一帯が候補地と考えるべきだ。なぜなら今回処分候補地とされた地域は国有地であったり、人口が少ないなど社会的条件で選ばれた。社会的条件は時代によって変わりうる。

 4.核燃にとっても候補地は少なかった
 核燃は2000年レポートで「将来十万年程度にわたって十分に安定で、かつ人工バリアの設置環境および天然バリアとして好ましい地質環境が我が国にも広く存在すると考えられる」と広言した。
 ところが報告書には、60数ヶ所の候補地しか上がっていない。矛盾している。核燃にとっても候補地となり得ない地域が多いことは明らかだ。そもそも日本で地層処分は可能だとは思えない。

5.原本を公開しない核燃
 情報公開は原本開示が原則である。ところが目の前には、コピーされたばかりの真新しい報告書があった。提訴対象外の職員名を除いて、古びた原本を閲覧できると思っていた。しかし核燃の情報公開は裁判に負けてもまだ、情報公開の基本からかけ離れた実態であった。原本公開を強く求め、後日原本を閲覧した。
 
6.タイトルを改変した核燃
 報告書のタイトルは報告内容を端的に表すのが通常である。ところが報告書のタイトルは政府の答弁書に添付された時点からAA,BA,CA,CCなど不可解な記号が使われていた。核燃に聞いても裁判中は答えられないと言うだけであった。

 原本を閲覧した際、CAは「美濃」,CBは「北海道北見」,CCは「出羽」,CDは「丹波」であることを確認した。
 つまりより具体的な地域名を記号に改変していたのである。

 理由は核燃がHPにアップする際、タイトルに不開示部分が含まれるのは困るという判断によると聞いている。同じタイトルが並んでいるわけではない。不開示部分はマスキングすれば済むことで、一般的には改変する理由に欠けるものであろう。
 改変した理由は核燃の担当者と面談し、確認することになっている。
 都合が悪ければタイトルも改変してしまうという核燃の考え方そのものを危惧する。

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   岐阜県知事への質問状

   岐阜県の回答
    
  
 
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