情報公開を後退させる
  名古屋高裁判決

 旧・動燃の高レベル放射性廃棄物処分候補地選定報告書の
 開示を求める情報公開取消訴訟 名古屋高裁判決(2004年1月28日)


    判決主文
1.原判決を取り消す。
2.本件を名古屋地方裁判所に差し戻す。


  名古屋地裁での争点
 不公開の是非を争わず、公開および部分公開を通知する「開示決定通知書」の
 文言のあり方を争点としました。
   (公開・非公開の是非は原告・被告双方が留保しました。)
 
  名古屋地裁判決要旨
  開示決定通知書は誰が読んでも、開示部分と不開示部分がはっきりとわかるように「一義的に明確に、特定し得るものでなければなら」ない。しかし核燃は不開示部分を「調査対象地区(又は調査対象地域等)を具体的に示すことにつながりうる情報」とした。これでは「地区」や「地域」とはどんな広がりを指すのか明確でない。「つながりうる」とは、個人個人によって受け止め方が異なる表現である。このように開示、不開示が明確でない通知書は無効である。書き直すようにという判決を下しました。
 この判決は核燃機構の情報公開の姿勢を厳しく問い、同様の通知書を出しがちな行政機関の通知書の書き方にも大きな影響を与えるものでした。


 
 名古屋高裁の争点
 名古屋高裁においても核燃の開示決定通知書で不開示部分が特定されている
 か否かが争点でした。
 結果は上記主文のとおりです。

 しかしPDFファイルで判決と核燃の控訴理由書を対比してください。
 まさに核燃の控訴理由書のそのものです。
 行政の処分を追認ではなく、もっと積極的に「追従」したものです。
 そして情報公開を停滞、後退させる判決です。

<特定されているという理由は?>
高裁判決は、開示決定通知書の文言と開示文書のタイトルそして非公開理由をあわせて、不開示部分が特定できればよいというものです。だからこの通知書で特定されているとしました。
 しかし裏返せば開示文書のタイトルや理由の助けを借りない限り、特定はできないことを示しています。そして日本の開示決定通知書はこの程度でよいとしたのです。これは情報公開の質を後退させる恐れがあります。まさに「不親切な情報公
開を追認した
浅はかな判決」(原告代理人・新海 聡弁護士)です。

 以下、核燃追従判決の典型を例示します。

 <不開示部分の特定にはいくつもの説明が必要!>
・「不開示部分の特定に使用される概念は開示請求された法人文書の名称や不開示の理由等の記載をも併せて理解することを前提に使用されるのが通常であるから、これらをも併せ考慮して不開示部分が特定されれば足りると解する。」判決p.11(参照 核燃 控訴理由書 p.7)
「『地区』あるいは『地域』は、それ自体が一定の場所的範囲を示す日常語として
確立した言葉であり、法令においても用いられている用語である。」判決p.11〜12
(参照 核燃 控訴理由書 p.6)

<「広域調査地表調査シート」や「東海・CA地域リモートセンシング調査」
  というタイトルから以下のことがわかる!と判決は言います。
  本当にわかりますか??>


<「広域調査地表調査」とは露頭の岩種、岩相、割れ目や風化状態等
       を現地調査だと理解できますか?>

「リモートセンシング調査」とは航空写真及びランドサット画像を利用して地質特性、地形特性等の解析が行われることだと知っていますか?>
請求文書の「広域調査地表調査シート」から「『調査対象地区』が、地表調査(露頭の岩種、岩相、割れ目や風化状態等を現地調査すること)の調査手法や内容に応じて調査の対象となった一定の範囲で限定された土地の広がり、その範囲内での具体的な一つ又は複数の地名を意味することは明らかである。」判決p.12 (参照 核燃控訴理由書 p.7 )
 請求文書が「東海・CA地域リモートセンシング調査」(他同様の4冊)から、「航
空写真及びランドサット画像を利用して地質特性、地形特性等の解析が行われる
ことからすると、本件2件及び本件3処分の法人文書開示決定通知書の『調査対
象地域』がその調査手法や内容に応じて調査対象となった、一定の範囲で限定さ
れた土地における具体的な地名を意味することも明らかである。」(判決 p.12)
(参照 核燃控訴理由書 p.10)
 「上記各調査は、地学等の自然科学的な観点に基づく調査であるから、その対
象や調査者の関心は、市町村や集落等をいわばまたいで存在し得る岩種、断
層、地層等であり、その対象となった一定の範囲で限定された土地といっても市
町村のように広いものから集落のように狭いものまで広狭様々な種類があるので
あり、不開示情報として記載する場合にも、この観点からまとめて『調査対象地
区』又は『調査対象地域』とすることは合理的である。」判決p.12 〜13(参照 
核燃控訴理由書 p.8)

<開示請求者に対する偏見に満ちた文言>

 【リモートセンシング調査に関する法人文書の
       開示請求を行う一般的な国民】という偏見


・リモートセンシング調査の後グランドトゥルースが行われるのが通常である。この
ようなことは市販の書物にも記載されているので、「リモートセンシング調査に関す
る法人文書の開示請求を行う一般的な国民も容易に知りうることである。」判決
p.13(参照核燃控訴理由書 p.11)

司法もこうして国民から情報を遠ざけることに、積極的に荷担した。

もっともっと多くの人が、日常的に行政の情報を公開請求し、公開の質を高める
必要があります。情報公開は実施機関の責務です。請求は国民の権利です。

  判決(PDF)      核燃 控訴理由書

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