とても幸せだった・・・。それが日常である事を私は、時々忘れて
しまうほどだった。
そして、ふと感謝する。
こんな幸せな日常に。
水溜りを駈け抜け、その跳ねた泥がズボンのすそに
付くことだって、それは小さな幸せのかけらだった。
永遠に続くと思ってた。
ずっと水溜りで跳ねまわっていられると思ってた。
幸せのかけらを集めていられるのだと思ってた。
でも壊れるのは一瞬だった。
永遠なんて、なかったんだ。
知らなかった。
そんな悲しい事は私は知らなかった。
知らなかったのだ・・・。
「えいえんは,あるぞ」
彼・・・、というか、その物体Xは言った。
「ここにある!!」
たしかに、その物体Xはそう言った。
永遠の有る場所。
・・・・・・そこにいま私は立っていた。

ザトー・ONE〜輝く季節へ〜 第1話、電撃と登校

カシャッ!!という耳障りな音とともに、視界が白くなる。
・・・が!!私の顔の前面は豊富な髪によって完全にガードされている、
その程度では私に覚醒をもたらす事はできないな。
「ほらっ!起きなさい!!」
・・・む、朝か・・・だからカーテンがひとりでに開いたのか・・・。
・・・素直に起きよう、折角起こしに来てくれているのだ、起きるのが礼儀だろう。
しかし・・・眠い、目が開かん・・・。だが!!ここは起きなければ・・・。
・・・・・・・・・・・。
・・・・・・。
・・くー・・・。
ガバァ!!
今度は、すい込まれるような風圧と共に、身体が軽くなる。
・・・軽いと言うか、寒いな・・・これは。
・・・布団が・・・ない・・・。
「ほら!!」
むぅ、これは私も気合を入れて起きないと・・・。
よし、もう大丈夫だ、起きよう。
「やぁ、おはよう」 ・・・・・・・。
・・・。
くー・・・・。
バリッ!
今度は、手に何かが当たったかと思うと、急に全身に電撃が走った。
・・・むぅ、これでは起きようにも体がしびれて動かないではないか。
というか・・・死ぬ?
「あ・・・あぁぁぁぁぁ・・・・。」
ようやく、なんとか動いた喉によって私は自分の起
床を告げる、危うく殺されてしまうところだった。
「やっと起きましたね?」 「く・・・っはぁ・・・。」 暫く身体の痺れが抜けずに上手く動かない舌を動かし、気を落ち着ける。
次第に、瞼なども動くようになり、自分の部屋とベッドの横に立つものの姿も明確になってくる・・・。
見上げると,そこに立っていたのは、制服を着た男の子だった
「!?何故見知らぬ男が抜き身の風雷剣を持って私の部屋に居る!?
貴様!!何者だ!!化けの皮を剥いでやるっ!」
私はたまげ瞬く間にベッドのわきに隠して置いたキューを組みたて、
戦闘態勢に移行する。
「・・・何を言ってるんですか?風雷剣の電撃で頭のヒューズが2,3本飛びでもしましたか?」
その男の子(青年)は飽きれたように抜いていた剣をさやに収める。
「まぁ冗談だが・・・」
風雷剣をさやに戻した青年は、それを改めて腰に結わえると鞘のさげ具合を確認する。
「まったく、貴方には良いお嫁さんを見つけてもらわないと心配ですね。」
「なんだ・・・、それは」
「こう、良なれた女性が良いんじゃないでしょうか?貴方の一般常識の欠如を支えてくれるような」
・・・聞いたような台詞だな。
「さっ、さっさと用意しないと遅刻しますよ?」
布団を干すのか、さっさと私を追い払うように言い放つ。
「・・・現実的だな、お前。」
「どこらへんがですか?」
「いや、べつに・・・」
私は制服とかばんを抱えて、部屋を後にした。
階下に下りると,誰の姿も無かった。
どうせまたファウスト先生が出掛けに外で待っていたカイに声でもかけたのだろう。
「まぁ〜だおねんねしてるみたいだから、おこしていってあげてく〜ださぁ〜〜い」
とか。
あの人はあの人で適当だからな。
大体、私ではない別の人間がこの家にいつのまにか住んだって、一向に気づきはしないだろう。
まあ、この家自体があの人にとっては単なる寝る為の場所だからな。
そう一体意味では私のほうも変な遠慮をせずに済んで助かっている。
取り敢えず、用意されていたティーセットとパンを適当に食べ、洗面所に向かったところで再びカイに捕まる。
「さっ、急いで。時間がおしています」
「いや、私はこれから朝シャンを・・・」
「諦めなさい、どうしてもしたかったら学校に行ってから水道でやってください」
「・・・そうか」
非常に合理的な意見に思えたので、私はそそくさとシャンプーやリンスの容器をかばんに詰め込み始めたのだが、背後からカイの前入れステップキックの突っ込みが入る。
「冗談です!!まったく、今日も寝坊した貴方が悪いんですから朝シャンは諦めなさい!!」
「しかし、この髪はキチンと手入れをしないと枝毛が・・・」
「・・・」
無言でカイは私の腕を引っ張って玄関と向かい、私に靴をはくように身振りで指示する。
む・・・、恐らくこの辺りで真面目に学校に行く姿勢を見せるべきだろう。
カイは根が真面目なので余りからかいすぎると暴走して手が着けられなくなる。
この間もしつこくからかっていた男達がお仕置きされて、
「ジジジジジジ自業自得ですね・・・」
と言われていた。
「ふむ、これでよし・・・と。では行こうか」
「もう走らないと間に合いません、行きますよ!!」
そして二人で門を開き,走り始めた。



続く(予定、でも予定は未定)
ん〜、読み終わったんで本棚に戻す