(最初は川釣りだった)
夏の日の休日、ぶらりと近くの川に釣りに行ったときの事です。早朝から釣りはじめ20cm程のウグイを釣り上げてはリリースを繰り返し、やがて釣りにも飽きてきたころ、何かめずらしい魚でもいないかなぁ・・・と思い川辺を散歩。持ってきたタモを使い浅瀬のよどみのあたりを二度三度とすくいあげ中をのぞきこみました。いるいる、体長2センチ程度の小魚がピチピチはねているじゃありませんか。やった、やった!と思いプラスチックケースに移し換えているときに網の底のほうで透明な虫のようなものがうごめいているんです。うぉっ!なんだ、気持ち悪いなぁと思いながらもよく目をこらして見ると、なんと体長2〜3cmの川エビがたくさん入っていました。エビは海かスーパーにしかいないと思っていた私には大変な驚きでした。家で飼育してみようと思い、30匹ほど持って帰る事にしました。

(どうして育てるのか)
自宅に持って帰ってみたものの、今まで金魚は飼った事がありますが、エビは育てたことはありません。でも所詮同じ淡水の生物だから、とりあえずは金魚と同じように考えようと思い、物置からエアーポンプを引っ張り出し大き目のプラスチックケースに移し換えました。なんとなく気持ち良さそうに泳いでいたので、ひと安心。

(我家に30センチ水槽来る)
30匹いたエビも次々と原因不明で死んでしまい、半分になってしまったころ、会社の同僚で以前に熱帯魚を飼育していた人がいたので、エビの飼育の相談をしました。原因は明らかに水質の悪化でした。ろ過装置がないプラスチックケースでは飼育は無理との事。そこで使っていない水槽を譲ってくれる事になりました。なんとこの水槽、長さが30センチそのうえ上部ろ過装置、照明がついているすぐれもの、その上、砂、水温計などの付属品までつけてもらいました。さっそくこの水槽に移し替え、広くなった水槽で川エビは元気いっぱいに泳いでました。それにしても水がきれい、ろ過装置の効果をこのとき初めて知りました。
 
(何か物足りないなぁ)
水槽の配置は電源の都合もあり、我家の顔ともいえる、玄関の下駄箱の上に決まりました。ところが置いてはみたものの、半透明なエビと砂が入っただけの水槽はさっぱり見栄えがしません。当然水槽の裏に貼るバックスクリーンなんてありません。お客が来ても「何が入ってるんですか?」と言われ、かみさんからは、「こんなもの止めなさい、カッコ悪い」とまで言われる始末。そうは言っても生き物だけに捨てるわけにもいかず、困っておりました。

(にぎやかな水槽)
水槽があまりに寂しいので、何か入れるものを探しに近所のホームセンターの熱帯魚売り場へ行きました。そこで水草を少々(カボンバ、アナカリス)と体長1センチのネオンテトラを20匹ほど買ってきて水槽に入れることにしました。まずは水草を砂に差し込んでみて、・・・おおぉぉ、なんと水景が見違える様に変化しました。それからネオンテトラを放流、蛍光色の魚と緑の水草が劇的に水槽を変化させました。満足、満足。きっと皆きれいと言ってくれるに違いない。

(異変が・・・)
ところが、数十分してどれどれと水槽をのぞき込むと、何かが変わってるんです。先ほど入れたネオンテトラが減っているんです、アレ?と思いよく見てみると半透明なエビの体内でネオンテトラがにぶい光を放ってました。そう、川エビに食べられたんです。魚がエビを食べるのは知ってましたが、まさかその逆があるとは・・・。あわてて、残ったテトラをプラスチックケースに隔離しました。

(困った、困った)
とりあえずネオンテトラ隔離はしたものの、当時は熱帯魚など飼った事がなく、まして飼育の知識など全く持っていませんでした。そこで知り合いで趣味が水草という知人がいたので相談をしました。持つべき物は友人、うれしいことに、使っていない水槽を譲るからそれでテトラを育てたらとの事。とりあえず知人の自宅に行くことにしました。

(水草水槽の感激)
知人の自宅へ行くまでは、水草の入った水槽など、コケや藻がたくさん入っている水槽程度にしか思っていませんでした。初めて聞いた時には、何を好き好んでそんなコケを育てているんだろうと思ったくらいです。ところが、いざ知人宅で水槽を見てみるとあまりの美しさにしばらく言葉を失いました。まずは水槽の大きさ、1800×600×600の大型水槽に水草が元気に生い茂り、適度に配置された流木にはウィローモスが密生、また水草と魚の種類の多いことに驚きました。そして、水草のいたるところにエビ、エビ、エビ。水槽のなかはまるで別世界。我家のエビやテトラに比べ、ここの熱帯魚はなんと幸せな環境なんだろうと思いました。この時に、自分の心の中でアクアリウムへの第一歩が始まりました。私もやってみよう・・・。

(あとがき)
私の場合はこのような事があり水草水槽を始めることになりました。幸いにも知人が水草をやっていたので、いろいろとアドバイスを受けながら、比較的スムーズに水槽を立ち上げることができました。ただ、水草の育成と同じくらい難しいのが家族の理解です(笑)。「どうせ3日ぼうず」「コケがはえたら汚い」「かび臭い」あげくのはて「私達はいっさい手伝わない」と言われるのがオチです。それにも負けず頑張ればきっとキレイな水槽が作れます。水草は一生懸命愛情をかけて育てれば、最後は必ず見せてくれると思います。