ファンタズマゴリアに訪れた五体ものロウエターナル達。そして、瞬。
 俺一人だけでは到底勝ち目の無い相手だった。
 でも。

「ああ……来ましたか。早速で悪いんですが、死んでもらえますか」
「……馬鹿にしてくれるわね」

 メダリオにはセリア達第二詰所の面々が。

「ギュル! ンギュギュルッ!!」
「わぁ、あのコカワイイ。ね、飼っていい?」
「オルファ、馬鹿を言ってはいけません! 敵なのですよ!」
「ん……倒す」

 ントゥシトラにはアセリア達が。

「ふふ、ゾクゾクするねぇ」
「下衆が……手前が相手だ。ユウト殿達の邪魔はさせぬ!」
「この場は我々が!」

 ミトセマールにはウルカ、クォーリン、そして生き残りの稲妻部隊が。

「よく来たな、若きエターナルよ……ぬ?」
「おっと悪いな。先に俺達に付き合ってくれよ」
「ほら、ユウ達はさっさと先に行った行った!」

 タキオスには光陰と今日子が。

「ほほ、ようやく来ましたわね。待ちくたびれましたわ」
「だったらそのまま消えてしまいなさい! 悠人さん、テムオリンは私に任せて貴方は瞬を!」

 テムオリンには時深が、それぞれぶつかってくれた。俺を先に進ませてくれた。
 だからこそ俺は、瞬を倒すことができた。
 このレスティーナのいる世界を守り抜いた。
 守り抜いたんだ。





『Here's looking at you,kid』
(元ネタ:『永遠のアセリア』)





 ……何だ、コレ?
 いや、落ち着け俺。
 まず状況を整理するんだ。

 戦いの後、俺と時深この世界からも去った。
 でも俺はレスティーナとの約束が忘れられず、『蓋』が閉まる直前にこの世界に戻ってきた。
 『渡り』の影響か既にこの世界では3年が過ぎていたが、俺は無事レスティーナと再会出来た。また最初から始めることが出来た。
 で、そうしたら次は仲間が元気か気になって第一詰所を訪ねて来た。
 玄関まで来たら裏にある庭の方からオルファの声がしたから、そっちに向かってみた。
 そうして今に至って……








「ギュル?」








 ……うん。
 …………庭に、なんか、変なのが、いたんだった。
 オルファと一緒に。
 即座に反転。館の陰に隠れて庭から完全に視界を外し、自問自答する。

 問。何ださっきの?
 答。錯覚。レスティーナと会えて気分が昂ぶってたから、多分その影響。最高にハイってやつだ。

 よし、オーケー。
 大丈夫だよレスティーナ、答えは得た。これからも俺は頑張っていくから。
 きっとさっきのはファイアボールか何かだ。
 さて、じゃあちらりと。



「あははっ」
「ンギュウッ」



 やっぱ目玉がいた。

「なんでいるんだよお前はぁぁーーっ!!」
「ンキュウウウウウウゥッ!?」
「え? な、なに? お兄ちゃん誰ってちょっとこのコいじめないでーっ!」

 とりあえずインスパイア唱えて斬りかかった。

          ◆  ◆  ◆

「……えっと、何? つまりお前は倒された後、オルファに助けられたって?」
「ンキュ」

 あの後怒って『理念』を持ち出そうとするオルファを宥めすかし、目玉と話す時間をもらった。
 声が聞こえないくらいの、少し離れた場所から見張られるということになったけど。

「『このコ飼いたい。今度こそちゃんと飼うから』ってオルファが訴えて最後にはエスペリアが折れた、と?」
「ンキュウ」

 ちなみにこの目玉の意味不明な言葉を訳しているのは『聖賢』。
 只今二重音声でお送りしております。
 俺の脳内オンリーで。

「で、逃げようにもこの世界に『蓋』がされて、完全に取り残されてしまった、と」
「ンギュッ」

 あー……そういえばこいつと戦ったの、オルファ達だったな……。
 瞬倒したし皆無事だったし、テムオリン以外がどうなったか気にしてなかった。

「でもマナが回復して俺達もいなくなって、それで暴れ出さなかったのは何でだ?」

 エターナルのこいつなら、そうすることは出来た筈だ。

「こいつら強いですねん、このお嬢さん方だけでも勝てんかったのに他のまで出てこられたら即マナの霧ですわ、って理由は分かったけど何で突然関西弁なんだよ」
「ンキュッ。ンギュギュシュッ」
「お嬢さんに助けられた恩もあるし『蓋』が開くまでおとなしくしてるつもり、だと?」
「ンギュ」

――ユウトよ。このロウエターナル、どうするつもりだ?

「どうするって、なぁ……」

 やることは一つだ。こいつは何十年か経って力を持つスピリット達がいなくなったら暴れ出すだろう。
 そうなる前に。

「ンキュッ!?」
「ちょ、何するの!?」

 俺は『聖賢』にマナを集め、上段に振りかぶった。
 その様子を見てオルファが驚き、目玉が怯え……怯え? いやかなり分かりにくいけど、多分怯えてる、が、気にしない。
 このまま刃を振り下ろ……!

「ンキュウウッ!」
「なっ!?」

 ……そうとして腕に力を込めた瞬間、目玉が瞳を潤ませて訴えてきた。

「ンキュッ、ンキュウウゥッ!」

 地面に背中をつけて仰向けになり、服従のポーズ。
 大きな目には涙がいっぱいに浮かび、身体をふるふると震わせ。
 切なそうな声で必死に哀願。
 完全なお願い姿勢・小動物ちっくVer。
 うわぁ。

「く……そんな事しても……無駄だっ!」

 ごめんなさい。
 実は内心ちょっとクラッときました。
 佳織があまりワガママ言わなかったから、たまに見せたこんな風な哀願に弱いんだ、俺は。
 ……いや待て。落ち着け。
 妹と目玉を一緒にするな、俺よ。

「ええいっ!」
「ンキュウウゥゥ……」
「く……」

 どうするアイ○ル。
 どうする俺。

「この……!」

 俺は、俺は……!

「ンキュ、ンギュルゥ……」
「あーもう! そんな目で見るなあっ!」

◆  ◆  ◆

 ……さて。
 あれからどうなったかというと。
 その、なんだ。

 まあ、その、この奇妙な目玉は、まだラキオスにいるのです。
 多分。

――ユウトよ……。

「いやだって斬れるわけないだろあんなの!?」

<強引に終わっとく>



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