さやか先輩バースデイSS〜♪ 「……それじゃそういうことで。小夜さん、さやか先輩のことはよろしく」 「うん、分かった。蒼司もしっかりね」 「はい。腕によりをかけて美味しい料理を作って見せますよ」 「ふふふ。私も楽しみにしてるよ」 「はは。ちょっとそれはプレッシャーですよ」 「大丈夫大丈夫。何だかんだ言って蒼司の料理が私たちの中で一番美味しいんだから」 「そう言ってもらえると嬉しいです。……っと、あんまり長くなってもいけませんね。ではまた明日」 「うん、お休み」 「はい、お休みなさい」 チン 会話を終え、受話器を置いた。 今日は3月12日の夜。 さやか先輩の誕生日が明日ということで、 そのお祝いの算段をさやか先輩の家に居候してる小夜さんと相談していた。 1週間くらい前にさやか先輩のバースディパーティーの話を持ちかけられたんだ。 それより前から僕はさやか先輩と二人っきりで過ごすことを考えていたが、 その計画はその時点で見事に灰になった。 とりあえず先輩にはお祝いすることだけは伝えてある。 『その方が面白いでしょ?』 と小夜さんが言ったからだ。 そんなわけで、小夜さんや他の人たちと協力して昨日と今日で色々準備してきた。 特に明日作る予定の料理で仕込みが必要なものはもう今日のうちに済ませた。 さて、いよいよ明日だ。 「さやか先輩……喜んでくれるかな」 The Birthday of “OTENKO” 「……兄様、何を話してらしたのですか?」 さて寝よう、と思った時にいきなり背後から声がかかる。 ……ちょっと声が低いのが恐い。 「ん……な、なんでもないさ」 「そうですか。私はてっきり、明日のことについてどなたかと相談されていたのかと思いました」 ……正解。 「いや、そんなことは……」 「確か明日はあのおてんこ娘の誕生日でしたよね。私、兄様の部屋でこんなものを見つけまして……」 萌が後手に持っていたものを差し出した。 その手には僕がさやか先輩に用意したプレゼントと、明日のさやか先輩のバースディパーティーの料理の献立。 ……昨日、色々考えて書き留めておいたメモをそのままにしておいてしまったか……。 「それで、兄様は明日出かけられるのですね。……しかも、一日中。……あのおてんこの為に……」 「も、萌……ちょっと落ち着いて」 萌の手がブルブルと震えている。 手にもったプレゼントが握りつぶされないかどうか心配だ。 せっかく用意したプレゼントをこんなことでダメにされてはたまらない。 ……というより萌はさっきの電話をどこから聞いていたのだろう。 もしかして全部? 「兄様!」 「……はい何でしょう」 「私、兄様のすることなら身の危険がない限り何をされても気にしないつもりです」 「そ、そうか、ありがとう」 「でも! あのおてんことの事だけは許せません!」 メキョ 嫌な音を立てて萌が持っているプレゼントの箱が半分握りつぶされた。 ……中身がワレモノでなくてよかった。 と、今はそんな事を気にしてる場合じゃない。 萌を何とか説得しないと。 「なぁ、萌……悪いけど、明日は萌が何を言っても出かけるつもりだよ。 さやか先輩のせっかくの誕生日だし、お祝いしてあげたいんだ」 「私がお願いしても、ですか?」 「ごめん」 「……恋人だからですか?」 「ああ、そう……だ……って?」 僕が間髪おかずにそう答えた瞬間、萌の表情が変わった。 さっきまでの怒りの表情から、何やらすごく寂しげな…… そう、まるで母親とはぐれた子犬のような表情になった。 今にも泣き出すんじゃないかと心配する。 それを見て、思わず僕の心のに罪悪感が沸き起こる。 萌にこんな表情をさせてしまったのは、間違いなく僕が原因だから。 ……でも、これだけは譲れない事だから。 「あ、あのな、萌……」 「はぁ……いい。いいです。兄様は言い出したら聞かないってのはもう分かってますから」 萌は先ほどの寂しげな表情から、無理に笑顔を作った。 その不自然な顔に……やはり、僕の心は痛む。 そう思って謝罪の言葉をかけようとした瞬間、萌の表情がまた変化した。 自信に満ちた、決意の表情に。 「でも! 明日は私も一緒に行きますからね」 「え?」 「おてんこのお祝いをすることは認めましたけど、ここぞとばかりにいちゃいちゃさせたりはしません!」 「いちゃいちゃって……明日は僕ら二人以外にも人を呼んでるんだけど」 「それでもです。私の目の届かないところで何をするか分かりませんから」 ……いつから萌は僕の保護者になったんだろう。 でも、まあいいか。 これで萌をごまかしたり、もしくは内緒で家を出て行ったりする必要もなくなったし。 「ではそう決まったところで。兄様、お休みなさい」 「ああ、お休み」 言うだけ言うと萌は自分の部屋に入っていった。最後にもう一度僕に向かって笑いかけて、部屋の襖を閉める。 それに僕も笑みで応えた。 「って萌! ちょっと待て。レシピはともかくプレゼントは返しなさい」 「……チッ」 小さく舌打ちが聞こえたのはきっと気のせいだと思いたい。 「あら、忘れてました。すみません、兄様」 「いや、いいんだよ。お休み」 僕の手に返って来たさやか先輩へのプレゼントは、もはや元の外見を留めてなかった。 ……包装、しなおそう。 いつか使うだろう、と思ってとっておいた何かの包装紙が役に立った。 おばさんくさい、と言うなかれ。 既ボロボロになった包装を破り捨て、新たに丁寧に包んでいく。 僕の手作りの、このプレゼントを。 包んだら赤いラッピングをして出来上がり。 よし。……さて、僕も寝るか。 明日は楽しくなるかな、とか思いながら僕も自分の部屋に戻り床についた。 プレゼントは机の上に置いたまま。 ……ふと、眠りにつくまえに考えた。 もしかしたら僕はとてつもなく危険な状況を自分で作ってしまったんじゃないだろうか。 さやか先輩がいる。 萌がいる。 その間に僕がいる。 逃げ場はない。 「……明日はしばらく料理担当に専念するか……」 翌日、昼過ぎに僕たちはさやか先輩の家に向かった。 仕込みをした大量の材料を持って。 昼前に、というのは朝がかなり弱いさやか先輩を気遣ってのこと。 いくら3月とはいえまだ寒い日もある。 また前みたいに四度寝してることを考えての行動だ。 で、行ってみたら幸いなことに先輩はもう起きていたようだ。 いつも通りのにこやかな笑顔で僕らを迎えてくれる。 「いらっしゃーい。さ、蒼司くん、上がって上がって。萌ちゃんもどうぞー」 「お邪魔します」 「……お邪魔しますっ!」 そしたらいきなり萌が「私不機嫌です」な態度で返してくれた……。 やっぱり連れてこない方がよかったか……。 「うん。うっれしいなー♪ 蒼司くんがお祝いしてくれてっ」 でも、さやか先輩はいつも通り全然気にしてない。 萌はというとそれが一層気に入らないみたいで、その顔を険しくしている。 白河邸のリビングに通されると、そこでは小夜さんがいた。 や、と手を上げて挨拶をしてくれる。 「あ、蒼司、いらっしゃい。そっちは……萌ちゃんだったね」 「小夜さん、こんにちは」 「はい。兄共々、今日はお邪魔させていただきます」 萌は、さやか先輩以外には礼儀正しいんだけどな……。 先輩のどこがいけないんだろ。 「それじゃ、さっそく準備しようか。夕方になるくらいには他の人も来るって」 「分かりました。それじゃ小夜さん、はじめましょうか」 「オッケー」 「あ、何々? 何かするの?」 「さやか……アンタ、蒼司たちが今日何の為に集まるのか分かってる?」 「うん。私の誕生日をお祝いしてくれるんでしょ?」 「そう。で、パーティーにはそれなりの料理の準備が必要なの」 「あ、そっかー。ありがとう、小夜ちゃん」 能天気にさやか先輩はあははと笑う。 「というわけで私と蒼司はその料理の担当。さやかはちょっと外でもぶらついてきて」 「えー。そんなー。私、今日は蒼司くんと一緒にいたいよー」 「仕方ないでしょ。蒼司が一番料理上手いんだから」 「いいから独りでどこかに行ってて下さい。せっかくの兄様の好意を無駄にしないで。 ……行ったきり帰ってこなくても別に構いませんよ」 「うー……」 さやか先輩がその可愛い頬を膨らませて抗議する。 むー、と怒る仕草がまた可愛いと思うのは萌には秘密だ。 何をされるか分からないから。 僕に、そしてさやか先輩に。 しかし、さて困った。 僕が先輩を連れ出してその間に他の人間が料理をするというのが一番なんだろうけど……。 料理の量を考えると小夜さん一人にさせるのは無理だ。 それ以前に萌が僕と先輩と二人っきりになることを許してくれようはずもない。 どうしよう……。 「さやか、居るー?」 と、玄関から声が響いた。 声の主は了解をとることもせず家に上がり、ずかずかとリビングに向かってくる。 足音がそう語ってくれた。 ……そういえば、インターホンの音も聞いた憶えがない。 「ハッピーバースディ、さやかっ」 「あ、みっちゃん。ありがと」 さっきの声の主が妙に明るい笑顔でリビングに入ってくる。 彼女は若林美絵。 去年の夏――あの事件があった夏――にさやか先輩と友達になった女の子だ。 それまで友人などとは僕以外に無縁だった先輩に出来た友達ということで、僕は随分喜んだし、 以来彼女とも仲良くしてる。 最初に会った時にはいきなり告白なんかもされたけど、もうそれは諦めてくれたみたいだ。 萌も……彼女とはちょっと別物だとは思うけど、早く兄離れしてくれればなぁ……。 「あ、先輩。もう来てたんですね。こんにちは。小夜さんと……あ、萌もいるんだ」 「うん、こんにちは、美絵ちゃん」 「お久しぶりです、美絵さん」 「ふふ、美絵〜、ちょうどいいところに来たね」 「な、何ですか小夜さん……」 裏のある笑顔を浮かべる小夜さんに、美絵ちゃんがちょっと後ずさる。 「来たばかりで悪いんだけど、ちょっと2・3時間さやかを連れてそのへんぶらついててくれないかな」 「はぁ?」 萌ちゃんが頭に疑問符を浮かべた。 それはそうだろう。 それを見て取った僕は、小夜さんの足りなさ過ぎる説明を補足する。 「あ、僕と小夜さん、そして萌は今日の料理を作らなきゃいけないんだけど……」 「先輩が作ってくれるんですかっ!?」 いきなり美絵ちゃんが目を輝かせて叫んだ。 何? 「先輩の手料理……はぁ……美味しいんですよねぇ」 「ええ。兄様は家事全般に関して誰よりも、私よりも上手ですから」 萌、家政科のお前にとってその発言は自爆行為だと思うけど。 「そ、それはどうも……。それで、さやか先輩を一人放っておくのも何だし、 美絵ちゃんと一緒に少し時間を潰してくれればと思って。頼むよ」 「そうですか。分かりました」 「みっちゃん、そんなあっさりと……」 萌ちゃんは即座にさやか先輩の方を向き、その手をつかんだ。 「じゃ、さやか。行こうか」 「え、ちょ、みっちゃん? 私は蒼司くんと……」 「いいから来るのっ! 先輩の頼みなんだから絶対に引き受けてみせるわっ!」 ぐいぐいさやか先輩は美絵ちゃんに引きずられていく。 「そーじくぅぅぅーん……」とエコーのかかった声を残して連れられるさやか先輩を、 僕は見ているしかできなかった。 ガチャン、と遠くで玄関の閉まる音が妙に大きく響いた気がした。 でもとりあえず本当に料理する時間が欲しかったし、一人でさやか先輩を待たせるのが 申し訳なく思えたから仕方ないと自分を納得させる。 断じて隣で、 「……ふふ……今日はずっとどこかに行ってなさい……」 とかぶつぶつ行ってる萌が恐かったからではない。 「さ、それじゃかかろうか」 小夜さんは何でもなかったかのように振舞う。 事実、彼女にとっては何でもないことなんだろうけど。 「そうですね。やりましょう」 あ、始める前に萌に一つ言っておかなくちゃ。 「萌」 「何ですか、兄様」 「さやか先輩の出す食事に毒を混ぜないように」 平手打ち。 痛い……。 途中、 「蒼司、これはどうするの?」 「そこにおいてある香辛料をまぶした後、表面だけ軽く焼いてください」 「この味付けどうします?」 「ん、さやか先輩甘いの好きだから砂糖大目に……こら、わざと豆板醤入れるんじゃない」 なんてやりとりもあったけど、概ね料理の方は順調に進んだ。 そして夕方。 料理も何とか無事に、本当に無事に終わり、会場に運んだ。 場所は美術講。 片付けは昨日のうちに小夜さんとやっておいた。 そして最後の料理を運び終え、後はさやか先輩達を待つだけという状況だ。 「ねえ、蒼司ってどんなプレゼントを用意したの?」 「僕ですか? 僕はぬいぐるみですよ。ちょっと前にさやか先輩が欲しがってた」 僕が去年の夏、情けない理由で入院してた時だ。 仲良くなった女の子が持ってい黒い猫――うん、あれは猫だ、 そう納得することにした――のぬいぐるみをさやか先輩が妙に欲しがっていたのを憶えている。 それを今回、僕が作った。 誕生日のプレゼントにぬいぐるみなんてちょっと子供っぽいと思ったけど、さやか先輩ならそれもありだろう。 それにその他にも用意したし。 「へえ。それで、それはどこに置いてあるの?」 「え? 何処って、料理の材料を入れてきた袋のうちのどこかに……」 「もうどれも空っぽだけど?」 「はい!?」 驚いて袋を一つ一つ確かめる。 ……ない。 どの袋にも入ってない。 何で? 僕はちゃんと入れたぞ! 半ば錯乱気味になって僕は既に空っぽになった袋をまだあさっている。 「ああ、食材に混じって何か綺麗な箱が入ってましたから、私がちゃんと抜き取っておきましたよ」 と、その時萌がそんな事を言ってくれた。 にやり、と冷たい笑みを浮かべて。 ……確信犯か! 「ああもう! 取りに行ってくる! さやか先輩が帰ってきたら先に始めてて!」 そう告げるのもそこそこに、僕は白河邸を飛び出した。 「ふふ、兄様。ええ、ちゃんと抜き取って……この家の廊下のすみに置いておきましたよ」 「……アンタ……中々えげつないことするね……」 「小夜さん。私、ただついてきたわけじゃありませんよ。ふふ……これで兄様はすぐには帰って来れませんね……」 「彰にあんたみたいな妹がいなくて本当によかったと思えるわ……」 そんな会話が後に交わされてるとも知らずに。 商店街を駆け抜け、田舎道に出る。 走る速度を全く落とさずに駆けていると……。 「あれ、蒼司くんどうしたの?」 途中でさやか先輩達とばったり会ってしまった。 ついてない。 「い、いや……ちょっと……ね……家に……忘れ物……して……」 全力で走った為、身体が酸素を欲して呼吸を激しくする。 肩を上下させながら息も絶え絶えに僕はそう答えた。 「せんぱい……大丈夫ですか?」 「あ、あま……大丈……じゃな……」 心配してくれる美絵ちゃんにちゃんと言葉も返せない。 「ほらほら。深呼吸して」 「は、はい……」 さやか先輩のすすめに従って深呼吸をする。 二度、三度。 徐々に身体が落ち着いていく。 「はあ……ちょっと楽になりました」 「うん。それで、蒼司くんってば、忘れものしちゃったの?」 「はい……」 少しうな垂れて答えた。 誕生日のお祝いに来て、肝心のプレゼントを忘れるとは我ながら情けないと思う。 萌が抜き取ったのだって、出発前に僕がもう一度チェックしてれば良かっただけの話だ。 自分の詰めの甘さを深く反省する。 「そっか。じゃあ私も一緒に行くよ」 「え?」 「みっちゃん、そんなわけで先に行ってて」 「仕方ないなぁ、もう。早く来てね」 「うん。出来るだけ、ね」 目の前でいつの間にかさやか先輩がついて来ることが決定してしまった。 「ちょ、ちょっと……別にさやか先輩がついてくることは……」 「それじゃせんぱい。私、先に戻ってますから」 「あ、ちょっと美絵ちゃん!」 僕が声を上げるのにも構わず、美絵ちゃんはすぐに駆け出していってしまった。 後に僕とさやか先輩だけが残される。 「それじゃ、行こっか」 さやか先輩はそう笑って僕の手を取った。 腕を組むその仕草があまりにも自然で僕はそのまま……。 「って違う! 僕が忘れただけなんですから、さやか先輩がついてくることはないですよ」 本当にそうだ。 僕の失敗にさやか先輩が付き合うことはない。 しかしその言葉を聞いたさやか先輩は、何故か頬をふくらませて拗ねた顔をした。 「蒼司くん……分からない?」 「何がですか?」 「あー……もう。蒼司くんってそういうところは鈍いんだから……」 さやか先輩がさらに不機嫌な顔になる。 ……何で? 疑問に思う僕に、さやか先輩はぴっと人差し指を僕に突きつけた。 ちょっと怒った声で言う。 「せっかくの誕生日なんだから……蒼司くんと二人っきりになる時間が欲しかったの!」 「……あ……」 参った。 そういう理由か。 「皆がお祝いしてくれるのももちろん嬉しいけど……二人っきりもいいなぁって思ってたんだから」 ふくれっ面でそう言うさやか先輩。 「あー……」 「蒼司くんはそうは思わなかったの?」 「い、いえ! 絶対にそんな事ないですよ!」 だって。僕も同じ気持ちだったし。 さやか先輩もそう思っててくれて、何だか、嬉しい。 慌てて言い返した僕の返事が気に入ったのか、さやか先輩は一転して笑顔になった。 花が咲いたような笑顔。 ああ、そうだ。 本当は、僕はこの笑顔を独り占めしたかったんだ。 「じゃ、いいよね。蒼司くんの家に行って、私の家に戻るまでの間くらい」 「……そうですね。皆をちょっと待たせるくらい、いいでしょう」 僕も笑顔でそう返す。 そんなわけで、二人腕を組んだまま歩き出した。 「少しの間のデート、だね」 「デートにしては寂しすぎやしませんか?」 夕暮れ時の田舎道。 周りには春のため、休耕している田んぼしか見えない。 「いいの。私は蒼司くんと一緒に歩いてるだけで楽しいから」 「……」 「およ? どうしたの? 顔赤いよ?」 「な、何でもないです……」 さやか先輩の最高の不意打ちをくらってしまった。 ……こんなに嬉しい気持ちにさせられたんじゃ、どっちの誕生日か分からないな。 「それで、蒼司くんはどんな料理を作ってくれたのかなぁ〜?」 「見てのお楽しみ、ですよ」 「あはは。それもそうだね。あー、楽しみだなぁー」 「皆で頑張って作りましたから。きっと美味しいですよ」 そんな何でもない会話。 こんなデートもさやか先輩とはありなのかな? そう思いながら僕らは二人田舎道を歩いていた。 その頃、白河邸。 「さやかとせんぱいなら二人でせんぱいの家に行くって言ってたよ」 「何ですって!?」 「あら、萌の作戦が裏目に出ちゃったねー。プレゼントが見つからないんじゃしばらく帰ってこないよあの二人」 「ああっ! もう!! 私も行きますぅぅぅぅっっ!!!!」 「え、あ、萌!? ……小夜さん、萌、どうしたの?」 「いや、ちょっと、ね。うかつだったね、って話」 「はぁ?」 声がドップラー効果が起きるほどの速さで萌が駆け出していったのはまた別の話。 萌が腕を組んで歩いている二人を見かけて般若の形相になるのはこの数分後の話である。 <了> <後書き> というわけで書いちゃいましたバースディSS。 「どこが?」という突っ込みはお願いですからしないで下さい。 とりあえず過剰なまでの『やきいも』、上代萌ちゃんは必須。 これだけを念頭に置いて書いたらこんな小説できました。 多くは申しません。 こんな小説を読んでくださった皆様に感謝を。 そしてさやか先輩。 御誕生日、おめでとうございます!! 2002/3/13 ラルフ |