芹香様御生誕SS
…いきます。
『あの日・ザ・秘話』
オロオロ
さてどうしましょう。
オタオタ
さてさてどうしましょう。
「………………」
「あの…綾香お嬢様。先ほどから芹香お嬢様は何をなさっているのですか?」
「さぁ?今日が誕生日だから、じゃない?」
「それと先ほどからの行動と一体どのような関係が…」
今日の夕方、私のバースディパーティーがあったりします。
余計な気を200%回してくれたお爺様の毎度毎度の提案で。
全く余計なことをしてくれました。
ですからちょっと仕返しです。
3日前、お爺様の食事に…
「ぐ…!が、は…っ!」
「会長!?どうされました!?おい!誰か医者を呼べ!!」
現在、何故かお爺様は入院されてます。
まあいいです。
それは置いておきましょう。
とにかく。
おかげで折角の愛し(はぁと)の浩之さんのお誘いが…。
今日は断ってしまいましたけど。
だけど、浩之さんと一緒に過ごしたい気持ちは十二分です。
私も本当は前々からそのつもりだったのですから。
だから…
本番で抜け出してみせるのです!
「芹香お嬢様、先ほどから歩き回ったり突然(思いきり小さく)ガッツポーズをとってみたり…
本当に何をなさっているのですか?」
「…わけ分からないところはいつもの姉さんだけどね……」
しかしどうしましょう。
来栖川の警備は厳重。
以前「キャ○ツ ア○」とか「怪盗○ャン○」とかが侵入しようとしたそうですが、無理でした。
つまり正攻法では無理です。
周囲の人間の説得も不可能です。
ですから…
ガチャガチャ
あ、見つかりました。これです。
私が取り出したのはこの間やっと入手した貴重な品。
これを使って…
「
干し首
で何するつもりじゃあああああああああっ!!!!!!!」
いきなり綾香が扉を開けて私の部屋に入ってきました。
その後ろからセリオも続きます。
「………」
「家の中では静かにしなさい、じゃない!!そんな得体のしれないモノで何やらかそうと
考えてるのかって聞いてるの!!」
得体の知れないとは失礼ですよ、綾香。
これは由緒ある首狩り族の人達の手による逸品です。
「はい。わざわざ来栖川のエージェントが南米まで飛んで取りに行った品物ですから」
さすがセリオです。
よくわかっていますね。
ご褒美です。
なでなでなでなで
「…あっ……」
「あっ、じゃないでしょぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!
セリオも恍惚の表情してるんじゃないの!!」
「………」
「別に私も撫でて欲しいわけじゃなくて!!」
じゃあ何だというのでしょう。
最近の妹はよく分かりません。
お姉さんは悲しいです。
「………だから、ね?…いや、もういいわ。話を最初に戻しましょう」
最初………。
ポン
ああ。
お爺様に一服盛った話ですか?
「あれはアンタのしわざかぁぁぁぁぁっっ!!!!!!」
「綾香お嬢様は気付いておられなかったのですか?」
「アンタも知ってたんなら止めろぉぉぉぉっ!!!!!!」
綾香は先ほどから叫んでばかりです。
カルシウムが足りないのでしょうか。
駄目ですよ、格闘家なのに。
骨でも折れたらどうするんですか。
お姉さんは心配です。
そうです。ちょうど良いモノが…
ゴソゴソ
「…姉さん、ストップ。何怪しげな薬…いやむしろクスリ
を取り出してるの?」
「………………」
ちょっと演説口調っぽく言います。
「
アレは良いものです
?どんな風によっ!」
「まず
ゲッター線
を浴びたCaを…」
「だから何でセリオが組成を知ってるのぉぉぉぉぉぉぉぉぉっっ!!!!!!!
………いや、もういいわ。この話は終わりね」
綾香、何故か疲れた顔をしてます。
憑かれてしまったのでしょうか。
でしたら…
「そこっ!怪しげなアイテムを探さないっ!」
「………」
くすん。
「残念そうな顔もしない!あのね、姉さん。何か困ってたり、何かやりかったり、誰か殺りたかったりするなら
私に言って。とりあえず私に出来る事なら協力するから」
「………」
綾香…。
「……ウチを呪いの館にしたくないの」
「………」
さすが綾香。
私の妹です。
さりげなく漏れ出た本音が少々気になりましたが。
後でピンポイントに綾香を呪いましょう。
とにかく、そんなわけで私は綾香に何があったかを話していました。
私の誕生日を浩之さんが祝ってくれると言った事。
だけどお爺様がパーティーを開くのが既に決まっていた事。
その為にお誘いを断らなければならなかった事。
だけどやっぱり浩之さんにお祝いして欲しかった事。
だからパーティーを抜け出そうと計画していた事。
だけど良い方法が中々思いつかなかった事。
だからとりあえず腹いせにお爺様に一服盛った事。
後で考えてみればそれは劇薬だった事。
何とか脱出しようととりあえず屋敷のドーベルマンにも同じ毒を盛った事。
あの干し首を使ってその場にいる全員を呪おうとした事。
邪魔するならセバスや綾香も同様に……
「…あー、姉さん…。もういい。お願いだからそのへんで止めといて。怖いから」
何故か頭に手を当てた綾香が口をはさみます。
しかもイヤイヤとでもいう風に頭を振って。
お姉さんの話は最後まで聞くものですよ。
「ちなみに綾香お嬢様には大旦那様に盛ったより数倍の量が用意されており…」
「アンタも共犯かぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!!!」
「………………」
では、綾香。協力してくれますね?
私は自分に出来る精一杯の笑顔でそう言いました。
さて、立派な妹の活躍で全て上手くいきました。
私の身代わりは綾香が、セキュリティの解除はセリオがやってくれました。
今頃綾香は立派に影武者を務めていてくれてるでしょう。
影武者徳川家康もびっくりです。
「おお、芹香お嬢様。この度はお誕生日おめでとうございます」
「………」
「ありがとうございます、ですか?ははは、相変わらず慎ましいですな」
「………(あああ!ストレスたまるっ!!)」
途中邪魔だった壁はセリオが壊して。
邪魔だった警備員はセリオがのして。
そして最後にセバスが立ちふさがりましたが。
黙らせました。
文字通り。
サテライトシステムって、
ビーム
も出せて便利なんですね。
現在お爺様と仲良く並んで寝ていることでしょう。
後はここから浩之さんに電話をかけるだけです。
ヒュウゥゥゥゥゥゥゥゥ
寒いです。
12月なのですから当然です。
ああ、早く浩之さんに温めてもらわないと(
はぁと
)。
どこでかは秘密です。
では。
公衆電話に入って。
受話器を取って。
カードを入れて。
もう押しなれた番号を、一つ一つ押して。
プルルル プルルル プルルル…
しばらく呼び出し音が続いて。
ガチャ
そして、一番聞きたかった、あの人の声が。
『はい、藤田です』
「なぁ先輩。だけど本当に抜け出してきて良かったのか?」
「………………」
「え?綾香が快く協力を申し出てくれたおかげ無事抜け出せました、だって?そっか…綾香が…」
「………………」
「良く出来た妹です?ははっ、そうだな」
−同時刻、来栖川邸−
「ああっ!もうやってられないわっ!!」
「綾香お嬢様…逃げ出されるおつもりですか?」
「セ、セリオ………。アンタもしかして…」
「はい。芹香お嬢様から綾香お嬢様の監視を頼まれました。伝言もございます。
『綾香、お姉さんのお願いは聞くものです。
聞かなければ………
』
とのことです」
「聞かなければ何なのよぉぉぉぉぉぉぉっ!!!!!!」
綾香、ありがとう。
あなたの犠牲は無駄にしませんよ。
その日、浩之さんは優しくしてくれました。
………朝まで(はぁと)。
終わっとけ
<後書き(後悔)>
…確か、芹香様御生誕に相応しいシリアスかつほのぼのなラブラブSSにしたかったはずなんですが…。
………何故こうなる?
気がついたら綾香いじめになってました。
精進が必要ですね。わたしも。
とにかく!!
我が最愛の主様…芹香様へ。
貴方様の御生誕の日…
真におめでとうございます!!
心よりお祝い申し上げます。
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