私の履歴書ではないので、生まれた時がどうだとか、家族がどうだとか いったことは一切書かない。私が子供の頃はコンピュータという とテレビアニメ「バビル二世」に出てくるやつであった。パネルが ピカピカ光ったり、テープがぐるぐる回ったり、機械のような声で (まぁ機械だけど)喋ったりするやつだ。ルパン三世(first TV)に出て きた奴だと、紙テープで出力したのを人が直接読んでいた(昔は読めた なぁ、とは先人の話)。とにかく便利で何でもやってくれるという 未来世界を具現化した物というイメージが残っている。言い換えると日常 生活ではその姿さえ見ることの無い、無縁のものであった。
高校生になると無線部(高校の無線部はだいたいが怪しい集団である) で、当時出たばかりのパーソナルコンピュータを触っている友人も いたが、健全な私にはやはり無縁の世界のものだった。そんな私が コンピュータとのかかわりをもったのは大学生になってからである。
理科系の学生は普通実験があるのだが、とある化学の実験を行った時の ことである。膨大な実験データ(紙のノートに記録してある)を一次回帰 (線形回帰)処理を行うというのがあった。最小二乗法というやつだ。 少数の引き算、掛け算、足し算を電卓を使ってやるのだが、何度しても 結果が変わってしまう。どこかで計算間違いをしているのだが、電卓 を使っているので計算そのものを間違えているとは考えにくい。という ことは入力を間違えているわけだ。そんなこんなで数時間かそこら ひたすら電卓の友となって、なんとかレポートは提出できたのだが、 健全な精神の持ち主であった私は「もうこんなことはやりたくない」と おもってコンピュータなるものを購入した。それがシャープ製の PC1501というやつである。
PC1501は、しかしパーソナルコンピュータではなく、ポケットコンピュータ と呼ばれるものである(PCのPはポケットのP)。実は先日まで手元にあったの だが、子供が何処かに持っていってしまって見当たらない。オークションに でも出せばマニアに高く売れたかも知れない。それくらい当時は人気が出た ものである。ポケットコンピュータの関連本なども多数出版された。私は 待望のコンピュータを手に入れ、早速一次回帰プログラムをBASICで作成 した。1行しか表示されない液晶画面は辛かったけれど、あの数時間の 電卓作業が瞬く間に実行される現実は圧倒的である。しばらく遊ぶものに 困らなかった。
そのうち大学でプログラミングの講義を受け、徐々にコンピュータとの 接点が多くなってきていた。ポケットコンピュータに少し不満を感じる ようになっていた私は、もう少し力のあるやつ、パーソナルコンピュータ を物色しだした。 当時はようやく「マイコン」ブームが捲き起ころうとしていた時である。 巷には富士通のFM-7やNECの8801(8001もまだあったかな)が出回っており、 何を買うのかはなかなか判断に迷う状況であった。そんな中、わが国の パーソナルコンピュータ史上重要な製品が発表される。NECのPC9801の 登場である(本物の「私の履歴書」っぽい終わり方)。