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私が通っていた大学には大型計算機センターがあり、先生や学生 が利用できるようになっていた。NECの大型機があり、空調の効いた 部屋に端末が並んでいてTSS(Time Sharing System)でインタラクティブに システムが利用できた。テレタイプも見て、触った記憶があるが、 さすがに使われなくなっていたと思う(ttyとはテレタイプのこと なのだよ>Linuxの人々)。

磁気テープ装置(もちろんオープンリール)もあった。最新はめったに見なくなった オープンリールテープであるが、信頼性は高いものだ。保管棚の中でも 定期的に回転させて、テープ同士が引っ付かないようにするといった 管理が大変なのだが。でかいラインプリンタもあった。ラインプリンタは 1行を一変に印字する非常に高速なプリンタで、いまでも事務処理系の システムで使用されている。大量の印字には最も適しているが、最近は 印字を大量に行う事そのものが少なくなってきているので、ラインプリンタ も次第に使われなくなってゆくのだろう。何人も共有して使用している ので、ほかの人の出力と混じらないように、各人固有のヘッダをつけて いたものだ。紙がもったいないという概念は無いようだった。

カードリーダ装置(IBMカードと呼ばれたものの読み取り装置)もあった。 研究室によっては先輩より代々引き継がれたプログラム、すなわちカード のセットを管理するという重要な任務があったようだ。カードは1枚が ソースコードの1行になるから、プログラムとはカードの順序も含めた ものになる。持ち運ぶ途中でついうっかり落として、順序がばらばらに なって涙も出ない、という経験をした人も過去たくさんいたのだろう。 特に徹夜してデバッグをした後など。幸い私にはそういう経験は無いが。 またカードをパンチする専用の機器もあった。カードを挟んでおいて キーボードでタイプすると、そのとおりにカードに穴があいてゆくと いうものだ。タイプミスをするとそのカードは使えなくなるから、 非常に慎重にタイプしなければならない。バックスペース一つで 修正できるのとはわけが違うのである。カードのパンチ穴を別の カードにコピーするためのボタンもついていて、ENDなど何度も使う カードはダダダダダッとコピーするようになっていた。

計算機センターの夏は涼しくてとても居心地のよい処だが、その分冬は なかなかに辛いところでもある。一応一年中一定温度に保つという事に なっているのだが、どうしても冬場の方が室温は低くなるし、 コンピュータにとって高温は大敵だが低温はそれほどでもない(とは言えない のだが、本当は)ので、どうしても寒くなりがちなのだ。それに 乾燥しているので、喉を痛めやすいというのもあった。

そうした環境の中で出会ったUnixワークステーションは、だからとても 新鮮に見えた。そしてそれが私の人生の進路に影響を与えることにもなる (益々私の履歴書風)。


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