ポストポリオにはいろいろな症状があります
まさかこんなことも関係があるの、とびっくりすることも、ああ、やっぱりそうだったんだと納得することもあります。
延髄からウイルスが侵入した人にはとりわけ、呼吸器系の障害がポリオ罹患時に出現しました(鉄の肺を覚えていますか)。
どうもおかしいけれど、あなたにもこんな症状はありますかと問いかけると、びっくりするほど共通する体の状態を持つことに驚きます。視野狭窄、眼筋萎縮、顔面麻痺、嚥下障害、呼吸障害、側弯、筋萎縮、痛み、冷え、消化器下垂、排泄障害などなど。

ポストポリオの受容とは
ポリオはもう治った、克服した、がんばってもう誰にも障害があるなんていわせない、と生きてきた軽度の麻痺を持つ人にとって、とりわけPPSと向き合うのはつらいことです。あんなにがんばってきたのに、今もっているものを失うのか、これからどうなるのか、これまで障害者ではなくやってきたのに障害者になるのか、などいろいろな思いが渦巻きます。
でも、考え直してみてください。今動く筋肉は、死んだ神経の脇から伸びた別の神経が動かしています。私たちはおまけをもらっていたのです。
初期の鉄の肺に入った人の死亡率は85%だったとか。鉄の肺はポリオ患者のために作られました。今の呼吸機器の進歩はポリオの克服のために作られたのです。ポリオにかかった子供のうちどのくらいかは分かりませんが、肺炎で死んだことになったでしょう。私自身も肺炎でもうだめだと思ったら生き返ったが、そのあと歩けなくなって、病院に担ぎ込んだら小児麻痺といわれたといいます。親は、肺炎から小児麻痺になったといっていますが、小児麻痺の呼吸症状を肺炎と思ったのでしょう。ペニシリンを打ったがショックを起こして息が止まったというのもポリオによる呼吸器の麻痺だったのでしょう。
自分のことを長々書きましたが、多くの人が死んだポリオという病気を私たちは生き延びてきたことをお伝えしたいのです。今まで、ゴムひもを力いっぱい伸ばしていましたが、そろそろ引っ張るのをやめましょう。
楽になることをするのは、自分を甘やかすのでもなく、悪いことでもありません。長いこと、無理をさせた神経や筋肉をいたわるのは、当然のことです。
もう1つ、他人はあなたが思うほど、あなたの杖や装具に関心を持ちません。できないことは、できないといえばよいのです。階段を下りる苦手だからエレベーターを使うというのも、習慣にすれば気にされなくなります。自分は、杖を突きます。私は電動車椅子を使います。それは体のためです。それだけでよいのです。まだ何とかなりそうだから、まだ障害者に見られたくないから、と思っていても、残念ながら、ほかの人から見れば<足の悪い人>ですが、それだけのことです。手の負担をなくし長持ちさせるために電動車椅子を使いましょう。歩容の安定には杖を使いましょう。
もう1つ大事なことは、以前どおりには戻れない自分の受け入れです。症状には波がありますが、その最低のところから、の回復で満足度を量ってください。前はあんなにできたのに今は・・で自分を見ないでください。無理やり伸ばしたゴムひもでこれまであんなにがんばったのにまだこれだけ伸ばせると発想を切り替えてください。

受診するときは
病院の掛かり方及び受診時のマナーについて
 病院選びーこれはどの科を受診する時でも頭を悩ませることです。ましてや私達ポリオ患者にとっては、抱える症状にPPSとの関わりの可能性があるということで、尚のこと重大事です。しかし、会員の方々の体験や会の情報を通してポリオ及びPPSを理解してくださる、あるいは関心を持ってくださる医師や理学療法士さんの診察を受ける機会も徐々にできてきました。ポリオが根絶した過去の病気であるという世間一般の認識下、私達にとっては嬉しい前進であり、医療に従事する方々に身を以てPPSの現状を訴えるチャンスでもあります。私達が様々な症例を医療機関に提供することは、将来的にPPSの実態への認識を広めることに繋がるでしょう。そこで、せっかくのチャンスを無にしないためにも、受診時のマナーも考えなくてはならないと思います。つまり
受診の際は自分ひとりでも、その後ろには多くの仲間達が控えているのですから、大袈裟に言えば、ひとりひとりがポリオ患者を代表しているくらいの意識が必要かと思われます。
第一に、医師や理学療法士は日々、様々な病気に苦しんでいる沢山の患者を抱えています。私達もその中のひとりであり、決して特別な存在ではありません。限られた診察時間内にいかに的確に症状を伝えるか。あれもこれも話したい気持ちは山々ですが、思いつくままに話をしたのでは正確な症状は伝わりにくいので、予め、病歴、現在の状態、質問事項などを簡単なメモにして持参するのもひとつの方法です。
第二に、診察中の医師への電話での問い合わせなどは、緊急時を除いて極力避ける。その間診療が中断され、医師や他の患者さんに迷惑をかけることになります。
第三に、医師や理学療法士さんの病院での立場を考慮する。どの病院にもそれぞれのシステムがありますので、それに応じた手順を踏む必要があります。事前に診察予約を取ることも大切です。
第四に、会員同士の医療情報やアドバイスの文書を(メールや手紙等)医師及び公的医療機関に提出しない。医師に見せられるのは、公的な論文か医療機関によって書かれた文章に限られますので、基本的に薬事法、医師法の違反になります。善意で情報提供やアドバイスしてくださる会員仲間を危険な立場に追いやることになりかねません。
最後に、紹介状について。大病院でも基本的には紹介状なしに診察を受けることが出来ますが、例えば大学病院など官公庁病院では、地域の病院とのバランスを取りながら、地域の病院では解決できない疾患を引き受ける役割を担っています。これらの理由から
紹介状患者を優先しますので、紹介状のない患者は、診察順位が紹介状患者の後になり
たとえ朝一番に出かけても、午後診察になってしまうことも有り得ます。面倒でも正規のルートを取るほうが良いでしょう。
このようにして、先ずは医師や医療関係者との信頼関係を築いていくことが、やがては自分自身だけでなくポリオ患者全体に、発展的な結果をもたらすことになると信じます