「好きだったんだ」 彼は言った。 「彼等の事が大好きだったんだ。 あったかい所も。 楽しい所も。 笑っていたかけがえのない笑顔の全てを、 僕はとても大切に思っていた。 ――――最初は『彼女』の為だった。 何もかもなくして、一番大切なものすら守れなくて。 たった独り残った僕にできたことは、 『彼女』がそうしたように人を守る事だけだった。 僕の中の『彼女』が、いつでも笑っていられるように。 ――――だけど いつからだったろう。 『彼女』の為じゃなく、人を守るようになったのは。 追い立てられるような義務感からじゃなく、ただ純粋に 彼等の笑顔を守りたいと思ったのは。 ――――僕は、人が――――みんなが好きになっていたんだ。 だから、 『彼等』の事を、僕は大切に思っていた。 大きな街で、たくさんの人がいて。 みんな笑っていて。 僕を受け入れて包んでくれた。 暖かくて、優しくて。 僕は『彼等』が大好きだった」 「『彼等』はどうしたの?」 そう問い掛けた私に、彼は酷く辛そうな表情で静かに目を伏せた。 「『彼等』はもういない――――どこにも」 「どうして?」 彼は言った。掠れた声でたった一言。 「僕が殺した」 |