【第1夜】 国家の誕生・その1


まず人類のはるか遠い歴史に思いをはせてみましょう。
衣食住のすべてを大自然からの採取で得ていた時代、集落の人々は力を合わせて生きていました。
大きな獲物を捕るためには部落の全員が狩りにでました。巨象マンモスなどは一人では倒せません。肉は食料となり、皮や骨は住居や道具に利用しました。
男も女も、老人も子供も、それぞれの役割をはたしながら集落を維持して生活していました。部落の全員が平等であり、貧富の差というものはありませんでした。食えない者を出さず、得た食料を分け合って力を合わせて集落を維持しなければならなかったからです。誰か一人が多くの物を独り占めして蓄えるなどということもできず、争いもありませんでした。この時代を原始共同体社会、または原始共産制社会といいます。

人類が農耕の技術を獲得して、農作物を栽培し、狩猟や採取のみの生活から脱却して、安定した食料供給が得られるようになって様子が変わってきました。
農耕の発達により、定住集落の人口も拡大していきます。銅器や鉄器などの道具も利用されはじめ、土地の開拓や住居も飛躍的に進歩します。家畜を飼うことも覚え、物を生産し備蓄ができるようになりました。剰余生産物です。
一日に食べる量よりさらに多くの食料、そして「物」を持てるようになりました。ここから財産が生まれました。
部落の強力な指導者、祭忌者たちには、素朴な信仰と敬意から捧げ物が集まります。
彼らは他の人々より上の地位につき、農地や生産手段の専有制、支配制を生み出していきます。

部落が拡大していくと、よりよい土地や支配地をめぐって近隣の部落との争いがおこり、戦争がおこります。
勝った部族は破れた側の人々を奴隷にして所有し、労働に従事させます。
こうして戦争に勝った強固な指導者はあがめられ、私有財産を広げ、支配権を広げて王として君臨するようになるのです。
ここから支配する者と支配される者が出現する階級社会が生まれました。
勝利部族のなかでも、生産手段や財産を持たない弱い人々は奴隷に近い地位に落とされていきます。
こうして奴隷制社会という、人類はじめての二分化した階級社会が生まれたのです。

2015.11.9 梅谷晋