記・国民B(2015.5.15)
■「戦争は平和だ。自由は隷属だ。無知は力だ」(J.オーエル「1984」)を現在ニッポンで猛進行中! 安倍によるコクミンを巻き込んだクーデターを阻止せよ!
安倍暗黒政権下での現在のニッポンは、歴史的に重大な局面を経験中である。
現在開催中の国会で「戦争法案」が論議中だ。コクミンの大多数が反対する中で安倍暗黒独裁政権は、一連の戦争法案を通す予定だ。
ニッポンの国会での論議前に、安倍は先の米国訪問で、宗主国に「通す」ことを誓ってきた。国会では自公が「一強」だとつくろい、なめきっている。野党のあまりにもひどい弱腰も安倍をいい気にさせている。
安倍は宗主に対して、日本を「どうぞ、50何番目かの州にするなり、ご自由に使ってください」と献上したのだ。
「憲法には手をつけずとも、宗主国と米軍からの要請があれば、地球のどこにでも自由に自衛隊を派遣するから、遠慮なく言ってください」「何なら法案ができる前でも、閣議決定という最高の決定機関がありますから」と、安倍はおのれの売国犯罪を隠そうともしない。
TPPも「オバマに議会が一括承認権限を与えるなら全面合意はOK」と何のためらいもなく約束をしている。
安倍を米国に呼んだネオコン一味は「なら、日米軍事ガイドラインで日本負担を増強だ。グアム基地の建設費負担の増額をしろ。沖縄基地は米国の永久使用権があるのだから、辺野古の基地建設を早めろ。横田にオスプレイを配属する」と。次期大統領選挙に何の目玉や成果ももたないオバマは「ともかく、TPPを妥結してくれ」と強欲だ。
このたびの安倍の訪米は、現在日本に政治的にも、経済的にも、軍事的にもまったく権利などなく、安倍とつるんだ米国の「戦争・アルマゲドン一派」の所有物であることを改めて証明した。醜い限りである。人間としての姿勢がまったくない、あわれそのものである。
詐欺用語「アベノミクス」を用い、黒ネコ日銀による「異次元の金融緩和」が2年経過した。世論調査では8割が「景気回復の実感がない」とみている。日銀は通貨供給量を150兆円から倍の300兆円へ膨らませた。しかし実際に世に出回るカネは60兆円でしかないという。ギャンブル経済(仮想)での株価高、円安のうかれとは逆に、実質経済ではカネやモノの流れはなくデフレ不況はビクとも動いていない。
◆憲法改悪論議で鋭い指摘をした島田政彦見解
5月2日の朝日新聞に「憲法という経典」とだいする寄稿が掲載された。作家で法政大学教授である島田政彦の見解だ。新聞報道が暗黒安倍政権のたいこもちになった感ばかりが目立つなかで、極めて現実的な憲法に対する読み応えある見方を報道している。
「暴力の連鎖断つ誓い」「戦後日本の世界での信用の源」「改憲すればすべて失う」「理想でも遺物でもない現実的指針」という中見出しをみても、改憲論議の核心を言いあらわしている。現在日本の良心的な憲法についての姿勢を、明確にまとめたものとして一読をすすめたい。※
安倍は日本の憲法が自主的なものではないので日本人の意思で見直したいと、改憲する強い意志をもつ。だが、ほとんどのコクミンは憲法の改訂などするべきでないと思っている。特に、武装、武力を禁止している第九条があるから、外国に対して加害者にならずに今までこれたという思いをもっている。
安倍は例え宗主国の指令でも、簡単に改憲はコクミンの賛同を得られないと知るや、まず「改憲には三分の二の合意」という憲法の規定箇所を「過半数」程度までにする変更を先行して後、過半数の合意で九条の破棄が可能だとする姑息な方針だ。
だが、急速に落ち込む宗主国のネオコン・アルマゲドン一派の「すぐにでも改憲しろ」との要請から、改憲を先送りにし、事実先行で逃げ切る作戦だ。いまのままの憲法下でも、閣議決定を最高機関とし、既成事実として「緊急事態であれば何でも可能にできる」ようにすることだ。
実際に、自民党安倍の憲法案に次のように明記している。緊急という特殊な「事態」だと、安倍らひとにぎりのギャング一味が政権の名のもとに宣言さえすれば、すべてが「可能」になるのだ。「クニを守るのは一国だけではできない世界情勢となっている」ので、日本は米軍と一緒になることだと。
「従来の自民党歴代政権の憲法解釈でも、新しい事態には古くて耐えられない。新たな憲法解釈(無視するということ)による、新たな権力構造が必要だ。それが閣議決定による機動力ある政治システムをつくる」という。安倍暗黒政権による、日本のクーデターである。
「…事態」ということを乱発して、その事態が前政権までの時代と今は違い、しかも緊急な対応が求められているのだ、という珍妙な論理展開をする。証拠作りに命令する連中は一方の北朝鮮や中国やロシアを挑発する。戦争惹起も起こしかねない危険なけしかけと言いがかりをでっちあげる。
相手の反応を「北朝鮮は…、中国は…、ロシアは…」と国外の反応を利用してそれを迫る危機の証拠としている。ヤツらが支配するマスコミはヤツらのあらかじめ用意したストーリィで誘導する。はなからヤツらの仕組んだ演出なのだ。
ネオコン・アルマゲドン一派や安倍らが、そもそも国外に対して、よけいなお節介や口出しを、それもしつこくしさえしなければ、起こらない「事態」であることを知るべきだ。ヤツらが一方では「国」をいいながら、自分だけは全世界=地球を支配しているのだという、鼻持ちならない許しがたい異常な感覚こそが問題を起こしている根源なのだ。
空恐ろしい事態を可能になる社会に、安倍らが庶民人民の生活を一変させようという法制定が、今国会で決めようとしているのだ。戦争の被害者から戦争の加害者にコクミンを巻き込むというのだ。
【「自民改憲案第九十八条 内閣総理大臣は、我が国に対する外部からの武力攻撃、内乱等による社会秩序の混乱、地震等による大規模な自然災害その他の法律で定める緊急事態において、特に必要があると認めるときは、法律の定めるところにより、閣議にかけて、緊急事態の宣言を発することができる。」
「自民改憲案第九十九条 緊急事態の宣言が発せられたときは、法律の定めるところにより、内閣は法律と同一の効力を有する政令を制定することができるほか、内閣総理大臣は財政上必要な支出その他の処分を行い、地方自治体の長に対して必要な指示をすることができる。」
「自民改憲案第九十九条3 緊急事態の宣言が発せられた場合には、何人も、法律の定めるところにより、当該宣言に係る事態において国民の生命、身体及び財産を守るために行われる措置に関して発せられる国その他公の機関の指示に従わなければならない。」
「自民改憲案第九十九条4 緊急事態の宣言が発せられた場合においては、法律の定めるところにより、その宣言が効力を有する期間、衆議院は解散されないものとし、両議院の議員の任期及びその選挙期日の特例を設けることができる。」】
驚くべきことだと思う人もあろうが、安倍らの頭は自ら進んで、積極的に米国の「戦争・アルマゲドン一派」の指示に忠実に従うということで一杯なのだ。ニッポンの権利や自立とか、しょっちゅう口にしている「コクミンの利益」などさらさら目にないのである。
あげくは「立憲主義などは、王制や封建制の時代の考え方であり、近代現代では考え直すべきだ」とまで言っている。
頭の中は、属国をあずかる忠犬として、いかなる法にもとらわれない「小独裁」が自在なクニをつくることなのだ。描くのはちょうど北朝鮮の政権のようなものと思えば間違いない。一方は露骨な「小独裁」で、安倍のは多重のベールをかました「小独裁」である以外の違いはない。どちらも同じ地球支配者の指示に忠実な「小独裁」なのだ。
◆NHKスペシャル「沖縄返還」番組でのスクープ
安倍の発する大本営発表の最大の誘導機関になりはてているNHKが、ひさびさにスクープを報道した。佐藤栄作内閣時代の「沖縄返還」についてである。歴代悪首相のひとりである佐藤の秘書官だったものが、私的に公文書を秘蔵(犯罪)していたものと彼自身の詳細な日記的なメモが、死後大学に寄贈された。
研究者がそれの内容を研究していて、いままでうわさではあっても何の記録が残っていなかったために定かでなかったことを暴いたものだった。
ダンボールで一部屋を埋めるぐらいの大量の公文書を一秘書が盗み取っているということもさることながら、敗戦国日本が完全に主権をもぎ取られている実態がわかる。戦後20年以上経過し、属国状態を変えて「独立国」にすることなどは、日米関係ではありえないのだが「表だけでも、形式だけでも」独立国、主権国として取り繕うにはどうするか、というテーマだ。
別側面では西山記者が沖縄返還の裏取引の暴露をしたときに、裏で日本が代償として「米軍の駐留費用を負担する」証書が、政府公文書から出てこなかったのが、佐藤の自宅の関係保管文書類から家族が見せたということがあった。ニクソンの証明があるもので、政府になく私的なところから出てきた例だ。今回も同じ。ころころ変わる政権ニッポンで、首相が国家を左右するような文書を「政府」に残さないという、国民をなめきった姿勢がわかる。
番組では宗主国米国が日本を極東の不沈空母として位置づけ、戦勝国として敗戦国日本を永久に支配し、所用期間無期限の前線基地を置き、その負担を日本に追わせるという実態さえ不変であれば、一見あるいは見かけが独立国のようにしてもいい、という程度の認識であることがわかる。
CIAが資金と知識を与えて(米公文書)、実際に現在の自民党をつくり、完全なカイライとして日本の運営をやらせてきたのだ。だから、佐藤は自分が「非核三原則」などをうたいながらも、核を有する沖縄基地の米軍の存在をそのままにしながら、日本への「返還」をコクミンに実現してみせるという茶番を作りだす苦悩である。
米国に「沖縄に核も含めた軍の機動力を減じる」ことなく「返還」を演じてもらうには、結局日本が貢ぐ「カネ」しかない。これが沖縄返還交渉の裏での核心的な内容だ。
日本国民の税金を巨額に貢ぎ、永久基地として沖縄を使ってもらい、すべての犠牲をコクミンに押し付けるというイベントであった。
現在辺野古で起こっていることは、その延長である。自民党の創立からして、日本人としての誇りも自覚もすべての魂をさしだした自民党と、現在の安倍が歩んでいる背景が今回のスクープ報道だ。
宗主国の縛りのもとでの辺野古問題の解決などありえないことが分かろう。
地球支配者は、地球を西側から攻め、戦争をくりかえし、現地人を虐殺・抹殺をしながら米国まで領地をひろげ、第二次世界大戦で太平洋を覆い、極東の日本を手にしたのだ。
ヤツらは不沈空母である日本をいまさら手放すことなどまったく考えていない。現在中東、ウクライナやネパール等で混乱を引き起こして、さらなる野望、全地球の一元支配に血道をあげているのだ。
安倍は日本を献上し、ヤツらの極東支配にひとやく買ったのである。
◆マイナンバー導入の先にあるものは、現在の支配者への抵抗するものを管理によって廃絶することだ
話題のひとつに「国民総背番号制であるマイナンバー」がある。これは以前から指摘があるように、国家が国民のすべての個人情報を管理し、人間としてではなく主に労働力を貢ぐだけの奴隷としていこうとするものだ。現在の地球支配者にたいしてあがなう芽を根こそぎ取り払うのが目的だ。
並行してテロ防止と名をうって「国際線全乗客の個人情報提出義務」を実施しだしている。氏名や旅券番号、出発地、目的地などの基本的な項目に加え、航空券を予約した日時や場所、クレジットカード番号、電話番号、メールアドレス、同行者名、手荷物の数などが含まれる。彩光、指紋の管理までされる。
マイナンバーと一体化されるのだが、そこでは定期券、自動車運転免許証を含むさまざまな免許、資格証明書、納税、年金、保険、収入が連動し、全面実現までの過程では、登録しない、あるいは使わないと、日常の生活に極端な不便を強いていくことになる。
病気の経歴、カルテ、薬の利用経歴、種類が連動する。
図書館利用履歴を含め、現在多数所有するカードの一元化まで構想には含まれる。
キャッシュカードが連動し、すべての売買が現金なしで済むようになる。逆に言えば、ボタンをいくつか押すだけで、ターゲットの人の売買を瞬時に止められる。当然、その人のすべての個人記録を抹消すれば、存在そのものを消せるのだ。
安倍が暴走している今なら、ついでに原発事故の後始末も放置、実質賃金の連続低下も放置、1千兆円超の国家財政でももっと増やすだけ、個人消費が増えていないとして安倍の手下の日銀黒猫を使って経済破壊をすすめる。社会の不安と混乱は暗黒安倍の打つ「戦争法案」の強力な支援として使える。
スイカカードにみられるように、切符を買わずに、現金も使わずにさまざまな交通機関を国内で自由に使えるのは確かに便利だ。クレジットカードでそれをかざすだけで買い物ができるのは、現金の持ち合わせを気にしないで使えるのは確かに便利だ。あらかじめ航空会社に各種個人情報を登録提供しての海外への移動は、あっけないほど簡単で便利だ。
別項でのふれたが、スマートテレビの機能は、声で操作できインターネット検索もテレビを見ながらでき、番組の各種アンケートへのリアルタイムでの応答ができ、自分のスマートフォンにあるデータまで目の前の大型テレビで楽しめるのは「便利」な側面がある。
サッカー場や野球場での観戦で全観衆の情報がスキャンされ、フーリガンやテロリストなどの暴動を事前に検知予防されるのは、安心してゲームに没入できるので便利だ(という開催者の言)。
最近の犯罪者の検挙に高速道路のNシステムが多大な貢献をしている。これがあれば、犯罪者の移動がすべて掌握できるので、このシステムがない社会は考えられない。
「犯罪予防」ですでに無数の台数が設置されている監視カメラ…。
先行してペットに体内埋め込み型のチップを使用し、EUでは国を超えた同行移動をスムーズにする。また痴呆症などでの徘徊による失踪を防止するなどの名目で、GPSでの追跡を可能にしたチップの体内埋め込みあるいは携帯を促す。つぎつぎと「便利」を押出している。
地球支配者がマイクロソフトやグーグル、アップルなどと組んで、PCにしかけた監視ルート、今生活や仕事で欠かせないスマートフォンにしかけたバックドアを通じて、さまざまな「便利」「面白い」「楽しい」機能を表の顔として、実質の個人の管理はほとんど完了している。それを最後に統合して、確固不動にするのが、マイナンバーシステムだ。
ソフトウエアで管理されるのだが、ソフトウエアは意図的にバグが仕込まれ、それを言い訳にしながら、すべての情報が(意図的に)漏れ、世界的規模で一元管理にいきつく。
ビッグ・データは各人が知らない間に「新たなビジネスチャンス」などとそそのかされ、本質とはなんの関係をもたないふりして利用され、完全管理のシステムができあがっていっている。
マイナンバー制が目前にある。そら恐ろしい管理体制が迫っている。
邪悪な世界支配者が、おのれの支配体制にたいして、歯向かおうとする人びとを暴きだし掌握するために完成を急いでいるのだ。急ぐ理由は、庶民人民が急速に社会の理不尽の原因を知りつつあるからである。おのれに対するレジスタンスの力が大きくなる前に、その目を摘もうとしているのだ。
例えどのように「便利」に見えるものであっても、その背景の本質的な危険さを知れば、安易に使わないことだ。
◆「真逆の安倍」を半面教材として身近な生活行動のなかで自覚を深めよう
下記のような、普通の人間として感覚感情で、安倍の圧政を冷静にみてみよう。
あらためて、何が安倍の犯罪なのかがはっきりするはずだ。
①ひとを不愉快にさせたり、迷惑をかけないこと。
②カネの盲者、欲の盲者にならないこと。
③子孫に負荷をかけない、未来にツケをまわさないこと。
④戦争の禍根を解き放つこと、他国へのよけいなお節介をしないこと。
⑤人間の尊厳をもって生活できるようにすることへの貢献。
真逆の安倍。
「積極的平和主義」や「防衛装備移転三原則」にはじまり、自衛隊を戦場にいつでの自由に派兵できる恒久法を「国際平和支援法」などと呼んでいる。原発事故で出た指定廃棄物を保管する施設名も「最終処分場」から「長期管理施設」に変えた。
忌まわしい戦争を安倍らは「積極的平和」とよぶ。
さも米国と「自由で平等な」立場であるような装いで、完全なる隷属を覆い隠す。庶民人民にはTPPが完全なる「秘密事項・秘密条約・秘密交渉」であることを知らせずに、さも無知であることが「幸せ」であるかのように見下す。
たびたび例にあげるJ.オーエルの「1984」の「戦争は平和だ。自由は隷属だ。無知は力だ」が繰り広げられているのだ。これほど庶民人民をコケにして平気な安倍暗黒政権を許してはならない。
※:憲法という経典(作家 島田政彦)
●暴力の連鎖断つ誓い
日本が自国のことのみならず、他国の戦後復興、人道支援にも貢献し、「世界の赤十字」たらんとしてきたことで獲得できた世界的信用は大きな財産である。外国人が日本人に対して抱く好印象もまた、平和主義を貫いてきたことに由来するだろう。
「優しい日本人」のイメージはおそらく、現行憲法によってもたらされたに違いない。それを「平和ぼけ」と自嘲する人は改憲してでも「世界の警察」の片棒を担ぎたくてしょうがないようだが、そうすれば戦後日本が積み上げてきた信用は全て失われる。彼らはその損失を計算したことがあるだろうか?
憲法、日米安保、自衛隊は戦後の三大矛盾と見なされてきた。歴代政権はアクロバティックな憲法解釈を行うことで自衛隊を派遣したり、集団的自衛権の行使を可能と判断したりと、その矛盾を拡大させてきた。
敗戦後70年が経過して、自民党は憲法を改正することで矛盾解消を図りたがっているが、自民党による改正案も改正理由の説明も、さらには「戦後レジームからの脱却」というような政治方針も全て支離滅裂である。
改憲の理由として自民党が掲げているのは、現行憲法は連合国軍の占領下で同司令部に押しつけられたものであり、国民の自由な意思が反映されていない、という主張だ。この押しつけ諭が出てきたのは、自衛隊が発足し、アメリカが日本を極東における反共防波堤に仕立てるべく再軍備をさせるようになった頃、つまり1954年あたりからだ。自衛隊と憲法の矛盾はアメリカの政策転換に起因するのである。
それに先立って、51年、日米は旧安保条約を締結するが、アメリカが出した条件は、日本の独立後も占領期と同様に「米軍に基地を提供させ続けるが、米軍は日本防衛の義務はない」とするものだった。この不平等を是正するために、再軍備をした日本は周辺有事の際は集団的自衛権を行使して、アメリカを守るという提案を55年にしたことがある。その交換条件として米軍の撤退を要求する構想もあった。
日本が集団的自衛権の行使を主張するのは60年ぶりというわけだが、現政権の頭には「米軍撤退」の4文字などなく、日米同盟の強化しか考えていない。自民党が沖縄に冷淡な理由もここにある。現行憲法を押しっけだからといって改めようとするくせに、同じ押しつけである日米安保条約は頑【かたく】なに守ろうとする。ほとんど日米安保を憲法の上位に置こうとする政治方針と映る。
唯一「自虐史観からの脱却」を主張して、東京裁判を批判し、歴史解釈で中韓と対立する時だけはナショナリストの面目を保てると思っている。それは外交も経済もアメリカに丸投げしている現状を目立たなくさせるパフォーマンスにすぎない。彼らの支持者の一部は、政権を批判する人を一方的に売国奴呼ばわりするが、アメリカの利権を守る使命を帯びた官僚や御用学者に焚【た】きつけられ、日本をアメリカに安売りする人々のことはどう呼んだらいいのだろう?
●戦後日本の信用の源
対米従属派が嫌う憲法9条の戦争放棄規定は、元はといえば、昭和天皇の戦争責任を問わず、天皇制を残すことの交換条件だった。
日本での軍国主義の台頭を防ぐ規定をつけることは占領時代にあっては最優先の案件だったし、国民の平和への希求とも呼応していた。
現天皇が折々に護憲と平和への希求を明らかにされるのは、この事情も踏まえておられるからだろう。護憲と平和主義は吉田茂の「軽武装、経済重視」の路線とともに「戦後レジーム」になったわけだが、そこから脱却しようとすれば、戦前に回帰するしかない。
戦前回帰の傾向は自民党の憲法改正案にも見てとれる。まず自衛隊を国防軍と呼び、「主権と独立を守るため、国民と協力して、領土、領海及び領空を保全し」と改正9条に記しているが、自民党が作った有事法制でも、国民が国の安全保障に協力する責務を明記しているので、戦時中と同様に有事の際は国民も動員されることになる。
また現行憲法にはない緊急事態についての条文を加え、内閣が法律と同一の効力を有する政令を制定できるようにし、緊急事態時に国家総動員体制を取りやすくしている。ほかにも「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した」という部分を「ユートピア的発想による自衛権の放棄」と捉え、削除し、人権規定においても、現行憲法で「公共の福祉」とある部分を「公益及び公の秩序」に置き換えて、それに反する自由と権利を制限している。
しかも「公益及び公の秩序」の定義は政府が勝手に決められるというのだから、改正案は国民主権を謳【うた】いながらも、思いきり国家主権的である。国民を最優先するように見せかけながら、ナショナリストたちが国家を私物化することを奨励するようなものだ。国民を国家の暴力から守る憲法から、国民を戦争に駆り出せる憲法へ。これは明らかに「憲法改悪」である。
●改憲すれば全て失う
改憲のハードルは高いが、ほぼ一党独裁体制の下、迷走する野党からの賛成票を上乗せし、改憲発議要件の緩和に成功すれば、改憲は一気に進む可能性もある。反中ナショナリズムを焚き付けられ、大政翼賛ムードに導かれた世論もそれを容認してしまうかもしれない。
そんな中で、いま一度、国民は自問すべきではないか? 現行憲法に忠実に政治を行うことがそれほどナンセンスなのか? 日本が直面している現状と現行憲法は、
耐え難いほどにかけ離れているのか?
確かに憲法と歴代政権の政治決定に齟齬【そご】はあるが、国民はその時々の政治情勢とは別に、憲法を平和の誓いとして受け継いできた。
聖書がキリスト教世界の共通の倫理である博愛、寛容、自由の拠【よ】りどころであるように、憲法も日本人の倫理の経典であり続けた。
憲法には政治的な横暴、権力の横暴、人権の侵害から国民を守ることが謳われているが、それは我が国が他国から信用されるに足る国家であることの宜言なのであり、暴力の連鎖を断ち切る誓いでもあるのだ。そして、何よりも他国の戦争に巻き込まれないための保険として、機能してきた。
憲法が戦争放棄を謳っている限り、自衛隊の海外派兵や米軍の後方支援に踏み切ること自体が違憲である。だからこそ政権の暴走は抑止されているのだ。政権の暴走はお墨付きを与えるような改憲は日本の自殺行為に詳しい。
憲法は武力行使の歯止めになるとの考え方は保守派のあいだでも受け継がれてきた。過去にアメリカから、集団的自衛権を行使し、ベトナム戦争に参戦せよと求められても、断ることができたし、湾岸戦争でも巨額の軍事援助はしたものの、かろうじて武力行使や兵器の輸出を免れることができたのだった。9条を維持しさえすれば、いつでも戦争放棄の原則に回帰できるし、中立主義や日米同盟の再考、多国間安全保障の構築など政治的選択の幅を広げられるのだ。
●理想でも遺物でもない現実的指針
現時点でアメリカや中国がどのようなアジア太平洋戦略を取るかによって、何通りかの未来予測ができる。現状維持の線でいけば、アメリカは日米同盟を継続し、中国の封じ込めに日本を最大限活用することになる。
日本国民の間に広がる中国に対する不安とそれを払拭【ふっしょく】しようとするナショナリズムを利用し、日本により大きな安全保障上の役割を担わせ、アメリカの防衛費支出を軽減させる。現政権はその期待に応え、「積極的平和主義」をかざし、日本の安全保障費境を良好にすべく努めようとするが、その実態はアメリカの軍産複合体を支えるカモになることである。テポドンひとつ迎撃できないミサイル防衛システムを巨額で導入させられたり、沖縄の米軍基地の移転にやはり巨額の支出をさせられたりするだけだ。
しかし、アメリカがアジア太平洋地域で大規模な軍事作戦を展開する可能性は非常に低い。領土問題で中立の立場を取っていることもあり、尖閣有事の際も米軍を出動させないかもしれない。アメリカが強硬姿勢で中国に敵対するならば、財政破綻や世界恐慌の引き金になりかねないし、冷戦時代のように互いの中枢に核兵器を突きつけ合うようなことはしないだろうからだ。
アメリカと中国が世界経済の安定確保を最優先し、軍事衝突などを極力避け、常に緊張緩和に向けた努力をすれば、日米同盟を強化する必要はなくなり、安全保障の新秩序を構築することになるだろう。こちらの未来予測の方がより現実的な気もする。アメリカは軍事的、政治的プレゼンスを意図的に後退させ、地域のことは地域に任せるが、中国と周辺国が対立した際に、仲裁役としての役割を果たすにとどまる。いずれにせよ、日本がアジア太平洋地域で軍事的に勝利を収める可能性はほとんどないのだ。
現政権は、軍需産業を拡大し、日本の権益や邦人の生命、財産を守るという名目で自衛隊を紛争地域に出兵させることしか頭にないようだが、外交努力を怠り、安易に武力行使をすれば、そこから暴力の果てしない連鎖が広がることは、イラクやシリアの状況を見れば、一目瞭然である。紛争が拡大すれば、自衛隊による災害救助にも影響が出るだろう。
戦争は原発にも似て、莫大【ばくだい】な負の遺産を後世に残す。好戦的な政治家たちは戦争責任など取る気はさらさらなく、自分たちを支持した国民が惑いと開き直るだろう。
彼らが自殺行為に走るのを止めなければ、私たちだって自殺討助【じさつほうじょ】の罪をかぶることになるのだ。
現行憲法は単にユートピア的理想を謳ったものでも、時代の要請に応えられなくなった過去の遺物でもなく、日本が歩むべき未来に即した極めて現実的な指針たり得ている。
(朝日新聞2015/5/2「寄稿」)