館山梁山泊二泊三日(2020.10.31~11.2)
冬の前哨戦

【10月31日(土)】
もう少し遅いバスでもよかったが、明るいうちに着ければ明日の仕事の計画も立てられる。9:50発のバスに乗った。館山駅にはほぼ定刻に到着。
駅から海岸近くのodoyaまで歩いた。空地にはいたるところにセイタカアワダチソウがはびこって、それにまじってススキが…。一人歩きのさびしさか、人けのない住宅街のさびしさか、なぜか「織江の唄」が頭のなかを流れる。
だいぶ寒くなったが、マフラーはザックにしまった。こんな重いザックを背負っての山歩きはもうできないなとつくづく思う。すぐ肩が痛くなる。しかし、缶ビールとレモンサワーを6本、ワインのビンなど昔は入れてなかったはずだ、だとするとそう悲観するほどでもないか…などと思って。
突きあたりの汐入川をのぞくと、ボラの子がいた。あまり澄んでいない川の底に目をこらすと、いた。いい形のハゼがいっぱいだ。釣り人などだれもいない。今日は竿を持ってこなかったし、いるから釣れるというものでもない。寒くならないうちにやってみるか。
すぐ河口だ。みると館山湾におおきな富士が浮かび上がっている。

odoyaで墓に供える小菊を買って、城山公園前のバス停に向かった。以前お世話になった池田荘の前を歩いてみたかった。すぐ見えるはずなのにあの大きな木造の建物が見えてこない。近づくと塀と門だけが残った更地になっていた。「民宿旅館池田荘」の看板も残っている。夜ごとここですごした日がなつかしい。

家の庭にも季節の移ろいが。紫蘇の穂はだいぶ茶色になって種をつけはじめている。まだ青く伸びている穂を少しばかり摘んでまた塩漬けにした。
ハマちゃんとやまどりさんが耕した畑の大根は芽をだしていた。

土手に転がっている木を集めて焚火。しばらく雨がなかったので太いものもよく燃える。積み上げておいた枯草もだいぶ焼却できた。たまにはのんびり火を焚くのもいい。缶ビールがつぎつぎに空になる。
夕暮れになって、月が昇っても焚き木をくべながら暖かい火のそばに座って…。

仕事は明日からだ。

【11月1日(日)】
昨夜、勇ましい音楽を流している海外からのラジオ放送を聞いて夜更かししてしまった。
9時起き。朝食にと買っておいたパンを持ってくるのを忘れて、昨夜多めに炊いた飯を温める。最近は朝のコーヒーが習慣になっているので、これではどうも調子がでない。
まずは草刈り。先々週、maiちゃんが刈ってくれた玄関前の地面はさっぱりしていた。それでもまだちょぼちょぼと草が伸びているので、もうひと刈り。プロパンのまわりや、蘇鉄の下もきれいにした。

草刈りをしていると、あっという間に時間がたつ。昼になった。パンとコーヒーが欲しい。また相浜までバスに乗った。odoyaへ行く。
乗ったバスは相浜が終点で、すぐ折り返しになる。道が空いているのでここの路線バスは時間が正確。到着が3分遅れたので発車まで7分しかない。運転手に言ってみた。
「オドヤでパンを買ってすぐ戻りますから」
待っていてくれとは言えない。
「次のバス、1時間後ですよ」と運転手。通じないのか?
走って買い物。2分前に戻った。バス停の売店に竹網の魚籠(びく)があった。気をひかれたが、バスが発車してしまう、、、

帰ってきてから火を焚いた。これがないとはじまらない。ずっと放ってある大きな切株があった。もう朽ちているので軽い。こいつを燃やすことにした。
白アリやムカデがてんやわんやで走りまわる。お気の毒だがみんなあの世行きだ。火は夕方までもった。

そろそろ仕事を終えようとしたころ、あの西洋アサガオに覆われた、バケモノのような光景を見てしまった。今日やらないともう手がつけられない。またカマを握った。
蔓が巻きついている竹を4本たたき切って、蔓を引きずりおろした。炉の前にっ引ぱりだすと、まるで退治されたヤマタノオロチのよう。

天まで伸びた蔓はまだ刈りきれないが、下に隠れていたハラン(葉蘭)の群生がもうひと塊でてきた。地面に花が咲いて地下茎で増える。あの場所は下が岩で土も多くないのになんとも強靭な植物だ。

最後の戦いで疲れた…と思ったが、昼飯もろくに食べていなかった。片手にすくった量の米を焚いて、卵かけご飯。さんまのかば焼き缶詰、らっきょう、紫蘇の塩漬けで掻き込む。ビールはもうない。持って行ったワインを開ける。帰りのザックも軽くなる!? 食べて疲れも回復した。 
夜は小雨になった。アロエやユズ、植えた草木にはいいお湿りになる。

【11月2日(月)】
買ったパンで朝食。バナナもトマトも腹におさめた。ますますザックが軽くなる。
蜂にやられてから近づかなかった荒れ地に出向いた。覆いかぶさる竹とダンチクを切りはらっておいた蘇鉄はすこぶる元気。三つの雌株についた巨大な花は中にオレンジ色の実をつけている。来年はこの実をとって発芽させよう。

からみついている蔓草や、伸びたダンチクを切りはらって、通るのに邪魔なマテバシイの大枝を切った。汗だく。一人では動かせない。寸断すれば来年の薪になる。

昼前からまた小雨がぱらついて仕事は終わり。シャワーを浴びて着替えたら陽が射している。
昨夜は外気温が14度まで下がって石油ヒーターをつけたが、今日は朝から21度を超えた。動くと暑い。まだ小さな蚊もいる。
残りのパンをかじって、ワインを飲みながら早めの帰り支度をした。
いくさはやはり兵站部、ここでは炊事部の有難味を痛感する。
すっかり軽くなったザックを背負って家をでると、ハウスにいた農家のかみさんに声をかけられた。
「サトイモ、持っていく?」
「ああ、バスの時間がぎりぎりだから…」
「重いもんね。こんど」
「ありがとうございます」
嬉しかった! 欲しかったな。こんど来るときは菓子でももっていこう!

平砂浦を14:06。ぴったり時間どおりに来たバスに乗った。