再起第三戦(2020.9.19~9.20)
楽しい単独戦

月曜と火曜が敬老の日、秋分の日で、土曜から四連休となった。
コロナの営業時短要請も18日から解除となって、バスもほぼ満席。二日前に乗車券を買ったのにもう早割は売り切れだった。
9:20発。湾岸線は渋滞しているらしく一号線大師経由の迂回。アクアトンネルもやや渋滞があって、館山には10分遅れで到着した。
乗り換えの路線バスは定刻発車だったので、現地には予定通りの12:38着。

前回よりは暑さがやわらいだが、ザックは重い。
神保町から東京駅まではタクシーに乗った。運転手が「山ですか」と聞く。「こんなアロハ着て山なんか行きませんよ」。

2週間ぶりだが、庭には案外、雑草が生えていないのにほっとする。だがアカザはちょうど真ん中へんから二つに折れていた。それほどの風の日はなかったと思うのだが。倒れた枝のさきには花がついていて、それが天に向いて伸びている。まだ根からは水を吸い上げているのだ。すごい生命力だ。

荷ほどきしてザックの中味をすべて床にならべる。室内は熱がこもって32.2度、外気温は30.5度。クーラーボックスに入れて持っていった缶ビールをあけて、冷奴、漬物、ビスケットで一息入れる。
明日は午後から一時雨になるようだから、今日明日で半々の仕事ができればよい。1時半に支度をして庭にでた。
あのオヒシバがほとんど駆逐されている庭に気をよくして、さらにその周囲の草刈りをはじめた。しゃがんだ草刈りスタイルを長く続けると、かつては腰が痛くなり、太ももに筋肉痛もでたが、いまはなんのこともない。小さいものは根から掻きだして10㎝づつの前進、大きいものは鎌を振るって刈り取る。時間の経つのを忘れるくらいだ。

薪を焚いた火のそばだと蚊はいないが、少し離れた草むらになると蚊が出てくる。かがんでいると顔のまわりを飛び回って、プーンという音も聞こえる。外で蚊の音が聞こえるくらい、周りが静けさに満ちている。屋外の蚊取り線香など役に立たないと思っていたが、風上に三つ並べると風下の蚊がいなくなる。
汗をぬぐって、水を飲む。ときどき椅子に座ってタバコ一服。

まわりを眺めて、あの草むらもきれいにしたいな…と思う。しかしあわてることはない。夏のあいだにこれだけできていれば上々だ。
夕方にこんな雲が空一面にひろがった。

なんだか怪しい雨の予感がする。ビルの底でうごめく都会生活とちがって、大空すべてが見えるのだから観天望気に習熟できたら、いちいち天気予報に頼らなくてもすむ。
早くに出た月が西に傾いていく。

米がすっかりなくなっているから二合ばかり持って行った。
晩飯はまた魚の缶詰。カブと茄子の糠漬け、らっきょう、トマト。トマトは6個持って行って、四つ切にして塩を振る。うまい!
夜になって、外の気温は24度に下がっていた。
nhkのラジオ第二で朗読の放送をしていて、ついつい聴き入った。森鴎外の「雁」。高校生のころ読んだがもう大方の筋は忘れていた。妾などというものが公認されていた時代の物語だが、いまだってより巧妙につづいていることだ。「言葉狩り」などというものが大手をふるっているが、本質は何もかわらないのと同じことだ。

12時すぎには眠ったのだが、日曜の朝は5時半に目が覚めてしまった。外の気温をみると21.4度。肌寒さを感じる。
さすがに早すぎるのでまた布団にもぐりこんだが、あたりにわき上がる虫の音がすごい。思わず耳をそばだてた。本門佛立宗の拍子木の音「カン、カン、カン、カン…」が聞こえているようなのだ。
このあたりは真言宗智山派の檀家ばかりで、佛立宗はないはず。しかし最近はよそから移り住んできた人もいるから…と、外に出てみた。しかし聞こえるのはまさに虫の音。
やがて6時をすぎて、木々の梢に陽が射し始めると虫の音がぴたりと止んだ。自然界の掟だな。あんた達の世界は終わりだよと言っているかのようだ。
それでもしばらくは布団のなかでうつらうつらして、8時にようやく起き上がった。朝ビール! 仕事中のビールは今回からやめた。昨日の残り飯にまたトマト2個。うまいわ!

アカザの折れた部分から先を切り捨てて、再び支えを立てる。残った枝の種だけでも十分な量がとれる。

まだ小さいユズの木は葉がすっかりなくなって丸坊主になっていた。どうしたことかとよく見ると、アゲハの幼虫が二匹くっついている。まだ子供の木なのに、こんなヒョウキン者にたかられたらひとたまりもない。

青じそは絶好調に繁っているが、まだ花がつかない。離れたところにあるものにはやっと花穂がついているのがあった。

来月に期待しよう! しその実採りは時期が短いからうまくタイミングを合わせないと…。
9時から草刈りの仕事をはじめて、休み休みのマイペースで。一人でやる仕事は遅々たるものだが、成果がみえるので楽しい。駐車場の草刈りと元の入口の草刈りもして、村人にもアピール。
午後2時半ころに、ついに小雨がぱらつきはじめた。ちょうどいい潮時だった。野良仕事は時のたつのを忘れる。
シャワーを浴びて遅い昼食。パンとコーヒー、また塩トマトだ! やっぱりうまい! 最後のレモンサワーを開けて焚火のわきにすわる。小雨のあがった涼しい庭で、もう二週間後のことを考えていた。

近隣の家はみな立派な二階家で庭には芝生、コンクリートの通路が玄関までついている。しかしここは違う。江戸・明治からの農家の敷地のありさまを残す。庭は土、岩盤手堀で豊かな水をたたえた井戸もある。敷地をとりまく排水溝にu字溝など入れない。石組みの溝を十分に機能させれば風情があって美しい。石積みの隙間には蟹が出入りする。周囲の土手の森は風から家を守る。鳥も来る。大事にしたい。築山を整えればまた有興、子供たちの遊び場にもなる。
憩いの梁山泊にして、気の置けない人たちとすごせる場所にしたい。