tsk(2020.8.7~8.8)
8月決戦第一弾・大敗北の記

8月決戦第一弾。
押し寄せる竹とダンチク。今回は背後から攻めてダンチクドームを半分切り崩す作戦だった。

協力の名乗りをあげてくれたのはhodakaさん。これで絶対無敵のはずだった。
お目付け役としてomさんとszちゃんも参戦。これで偉大な戦いのビデオ映像も残せるはずだった・・・

先発部隊は10:00神保町出発。大師まわりで順調。晴天。ja館山とodoyaで買い物をして1時すぎには現地に着いた。
さっそく庭に火を焚いて冷えたビールで乾杯。後発隊が到着するまでに、攻略地を下見しておこうということになった。マムシはゴム長で防備。手袋は黒と紫のゴム。カマとナタをたずさえた。
ダンチクドームの裏に回り込むには、すさまじい藪に突入しなければならなかった。やぶこぎを苦にしない山岳部も行動したのは冬だった。しかし今は真夏、比較にならない密林だった。
蔓草のまきつく竹や木をナタで切り開き、3メートルもすすむと梅の枝先がでてきた。かつては開拓団でこの梅の木の周囲まで切り開いたことがあったが、いまはジャングルに戻っている。梅の古木がまだ生きていることを知って喜び、方向を左にきってドームの裏に進みはじめたときだった。
頭の上に覆いかぶさる草を握った左手の親指つけ根にツキーンと刺さるものを感じた。「うおーっ、またか」とイラガの毛虫にやられたかと思った。ところがすぐに第二発目がきた。今度はナタを握った右手にツキンツキンと連続して刺さってくる。見ると黄色と黒の縞模様のハチがたかっている。振り払っても落ちない。脚もやられた。hodakaさんも頭のてっぺんをやられている。一瞬のことだ。「だめだ、逃げろ!」一目散に藪から逃げ出し、ひたすら家に向かった。そこにはポイズンリムーバーがある。

右手は小指の根元2ヵ所と人差し指1ヵ所だが刺し口がわからない。左手は親指の付け根2ヵ所にはっきり刺し口がわかる。
手袋の黒い部分、黒い長靴のふち、見事に黒い部分をねらって刺しにきている。
ただちにポイズンリムーバーで毒の吸引開始。刺されて5分もたっていないから絶好の処置のはずだ。効果ありと信じた。
刺し口から0.2ミリくらいの血の粒がでてくる。「よーし、やったー」と思うが一ヵ所に数回の吸引を必要とするから、そのあいだに他のところはどんどん毒が拡散していくはずだ。刺し口のわかる左手の2ヵ所と脚だけに集中することにした。脚は汗ばんで、毛が生えているから吸引がうまくいかない。ハサミで毛を切ったりしてもたもたしているうちに血がでてこなくなってしまった。
あとはステロイド外用薬のデルモベートを塗るしかない。刺された箇所はズキズキと痛みつづけて、塗り薬の効き目などまったく及びそうもない。蚊とは違う。
もうできることはすべてやったが、私はアロエ教の信者なので、なにかというとアロエにたよる。アロエの葉を切ってきて患部に貼って包帯巻きにした。


まだ腫れはさほど広がっていない。

しかしこの痛さだとすぐに蜂毒がまわって腫れるにちがいないと覚悟した。すっかり戦意喪失して、庭で焚火をするしかなかった。

5時すぎに後発隊が到着した。庭で歓迎ビール! hodakaさんがこしらえてくれた夕飯を部屋で食べて、夜にまた焚火を囲んでの外飲み。

このころ手は痛みつづけ完全に膨らみきっていたが、もうなすすべがない。
最後にデルモベートを指と手の甲にぬりたくって油紙を置いて包帯巻き。

omさんが保冷剤にタオルを巻いてくれたり、氷袋をつくってくれたり…。冷やすと少しは楽になる。横になってうとうとすることもあった。痛みにくわえて、痒みがでて一度掻きはじめたら気がくるうほど痒くなる。氷水に手を浸すと刺された箇所がズキズキと痛み、この方法はだめだった。
このままでは眠れないだろうとさえ思った。最後の手段があった。歯医者からもらったロキソニン錠を持っていたのだ。
24時にロキソニン服用。30分で効果がではじめた。痛みがやわらいでいく。

夜中に保冷剤をとりかえに起きたがほぼ熟睡できた。
痛みは半減したが、腫れはいっこうに引かない。庭仕事でもして気をまぎらわそうと軍手を取っても指も手も膨らんでしまってすんなり入らない。しかし汗かき仕事をしたほうがよいようだ。シャワーを浴びて、タオルを絞ろうとしても腫れた手のなかで力がはいらずタオルがすべってしまうのには笑えた。

遅い朝食はそうめん。
「医者へ行ったほうがいいんじゃない」とomさんが近くの医院を探し出してくれた。土曜日の診療時間は12時までだった。あと15分。電話をしてみると待っていてくれるとのことなので、szちゃんに車を出してもらってかけつける。
道端にでている古看板とは似つかわしくない小ぎれいな新しい診療所。女医さんがいた。
「手首から先、5ヵ所とふくらはぎをやられました」
「だいぶ腫れましたね。昨日ならもうショックは大丈夫ですよ」
持っていたデルモベートを塗って、ロキソニンを飲んで寝たと話すと
「ロキソニンはあと何錠ありますか」
「一錠です」
「ではあと十錠だしておきます」
ありがたや。これで安心。また何かあったときも使える!
「虫毒を吸いだすポイズンリムーバー使ったんですけどダメですね」
「ああ、あれはダメですよ」
ずいぶんあっさり言ってのけたな!
「あと、猛烈な痒みがでるんですけれど…」
「デルモベートはまだあるんですか」
「ほとんど使っちゃいました」
「同じようなものですけど、軟膏のリンデロンをだします。それと痒みをおさえる飲み薬をだしますから」
飲み薬なら断然効果が違うはずだ。
「ありがとうございます」

戻ってすぐ服用。ビールも控えた! もうそれからは布団を干したり、庭の草むしりをするくらいで、帰りの時間を待つばかり。
黒恵屋食堂は5時までだったので、そのちょっと先にあるきんざ食堂へ。


痛みも痒みも引いて、膨らんだ手で乾杯のビール! しかし肘の近くもみょうに膨らんでいる…

8時半前に神保町に帰還。しゃれこうべでは土曜の臨時営業。リゾットとワインの夜・真っ最中!
しかし私は反省と懺悔の気持ちにとらわれて、早々に退出。
まったくひどい出撃になってしまった。


土曜日深夜の手!

山へ入るときは、それが里山だろうと、沢や滝だろうと、藪だろうと、山の神と地の神に祈りをささげる。あなたの領域に入らせてもらいます。お守りくださいという挨拶だ。これが精神と行動をひきしめる。
今回はそれを忘れて傲慢さが先にたった。裏の藪をたたき潰してやるという「怒り」で突っ走った。必ず油断が生まれる。人智のおよばない大地の反撃をうけて当然だった。
つぎは神々の怒りをかわないように、順繰りに大地をよみがえらせることにする。8月後半に「お礼参り」をさせてもらう!