さらに単独行(2020.6.6~6.7)
まだやりたりないが…

【6日】
先々週につづいて今週もまた雨が降りそうな予報の週末だった。
開拓団本隊の出動が再来週なので、それまでにできることを進めておきたかった。いま草を刈っておけば、二週間後には枯れてよく燃えるので処理も早い。
雨ガッパを着れば蒸すばかりなので、tシャツに長靴で濡れるにまかせてもよいと思っていた。今の雨は冷たくない。
バスの始発は8時20分。まだ間引きで運休が続いている。それでも乗客5割。道路も混まず館山で乗り換えて12時すぎには現地に着いた。

さすがに今回はすぐ火を焚いた。まごまごしていると蚊にくわれる。前回、竈のまわりに立てかけて乾かしておいた薪を焚く。いい長さに切るだけでひと汗かいてしまうので、長いままくべて燃やした。一人だとこういう横着仕事になる。曇だったが雨は降りそうにない。
畑のトウモロコシははっきり他と区別できるほどに成長していた。雑草に囲まれていたので、まずは雑草むしりから。

畑の角に生えたアカザはもっとも生育がよく、背丈ほどに伸びて枝葉も繁らせている。しかし相変わらず根元が太くならない。

先々週、柿の枝などに巻きついていたブドウの蔓をほぐして、とりあえず立てた竹竿に導いておいたがこちらはうまくいっている。本隊の仕事でブドウ棚をつくる予定だ。
庭一面にはわずか二週間でもオオバコをはじめ、地にへばりつく草がまた出ていた。しばらくはクワでそぎ切る仕事をつづけた。4缶持って行ったビールがたちまち減っていく。
いよいよ玄関前の広場の草刈りに突入。

前回に刈り残した草を一掃する。ヘクソカズラは両手で束ねてむしり取るほうが早い。ドクダミはカマで根から掻きる。大奮闘の成果が山盛りになった。
大休止。
縁側に座って、火に薪をくべながらあたりを見回す。まだ雑草に覆われている西の土手が気になるが、もうカマを握る気がおこらない。西日のさすなかで火を焚きつづけタバコをくゆらす。

ふとみると駐車場の井戸脇にかがみこむ人の姿が見えた。「コンチニワ」と声をかけると近所のオバサンだった。タケノコを取っていた。30センチほどに伸びた芽をいくつも抱えている。
「ここはいつもタケノコがでるんだよ」
「固いでしょ。茹でるんですか」
「ああ、茹でる。車じゃねえんか」
誰もいないと思って来ていたらしい。
「食べるか」と二三本差し出されたが、「いらん、いらん」。
そんなのんびりしているヒマがない。

あんな細い竹でも食べるんだね。こんどやってみよう。
4時半には部屋にあがって飯のしたくをはじめた。またカレーだ。しかしビールを飲み続けたし、最後にチョコビスケットなどを食べてしまったので食欲がわかない。エネルギー補給のためと思って一皿むりに食べると、急に疲れがでた。
夜は長い。いろは歌を作ろうと辞書まで持ってきていたが、これにも意欲がわかない。こういうところで過ごすためには、まず生活のリズムを作らねばならない。一日や二日であれもこれもやろうとすれば無理がでて疲れる。仙人生活もそう簡単にできるものではない。慣れが必要だ…などと思いながら布団を敷いたのが7時30分。
東京は雷鳴がとどろく雨とのことだった。
中山式快癒器で腰や尻をほぐしているうちに眠りに落ちた。

そのまま朝になればいいものを、深夜の12時に目が覚めてしまった。小雨が降りだしていた。軒から庭の枯葉に落ちる雨音が聞こえる。明日は雨の中の仕事になるな、帰りには濡れたズボンやシャツ、タオルでカバンがずっしり重くなる。ビワも持たなければならないし…月曜の朝仕事がないのが幸いだ、などぬるい焼酎の水割りを飲みながらつらつら思い、また眠る。
顔に冷たい風があたるのに気づいて朝5時に目がさめた。タイマーをセットしてある換気扇が回ってわずかに開けておいた窓から風が流れていた。室内気温は22℃。涼しすぎるくらいだ。ここに来た昼間は26℃あった。雨はあがっている。換気扇を止めてまた寝る。

【7日】
7時40分起床。約12時間寝そべっていたことになる。朝飯は残り物のカレーだ。体が酢を要求していたので急遽キュウリのワカメ酢を追加。飯係がいればどんなに楽だろうと思う。
8時30分、陽がさしてきた。作業開始。
元の入口の通路がへこんで低くなっているので、盛り土をした。シャベルで土をすくって運ぶ作業はすぐ腰にくる。十分に気をつけながらかなりの土を運んで盛った。
ビワは前回に採り残したものが色づいていた。数はすくない。
前とおなじ数ほど採ってから、荒れ地を見回った。いやはやダンチクの勢いがすごい。新芽がぐんぐん伸びてソテツに覆いかぶさっている。もう夏になるいま、ここに切り込むのは無謀だとわかっていても、放置できなかった。手を伸ばして伸びた枝を引き寄せ、竹切ノコギリで切りまくった。半袖のtシャツでこんなことをやってはいけないのだが、着替えにもどるのもおっくうだった。
落ちてくる枯葉やつる草にまみれて、ひどい箇所だけは切り開いた。そしてやはり、帰ってきてから腕には名誉の負傷の腫れが…。なんだかわからない植物の細かい棘か、虫の毒毛が刺さったらしい。いつものことだが、腕の内側の皮膚の柔らかいところだけ腫れている。しかしこの程度で済んでよしとしなければならない。

切り込み突入をしているとき、またしても足にゴロンとしたものが当たった。みると太ももほどの太さのあるソテツの幹が横たわっていた。これもダンチクにうずもれていたのだ。きちんと救出し、うまく世話をすれば蘇るかもしれない。ソテツは不屈のシンボルだ。いったいどれだけのものがこのダンチクに侵害されているのだろう。今度の冬にはこのダンチク・ドームを刈り潰す決意をかためた。

12時半に作業終了。
シャワーで汗を流して、昼飯はそうめんと生姜焼き。この買い置きがうまくないそうめんで、たったの一把を生姜と茗荷のつゆでやっと流し込んだ。食料計画をもう少しまともにしないといけない。しかしアタックや短期・単独行にそもそも「給仕」など任務にないのだから、面倒だとおもうことは当然かも!
夕方のバスを待つあいだ、あたりをぶらぶら見回った。元の入口通路の先はすっかり草や竹が伸びて風の通り道をふさいでいる。庭にたまった土を土手に盛って広場を平にしたい。駐車場の草刈りも。そして排水溝さらい。
1月のはじめに復旧開拓団がでかけてから、コロナ騒動となり開拓団も中止と延期がつづき春先にやるべきことがほどんどできなかった。夏場の仕事は無理なので、秋が深まって涼しくなったら、そして冬の間に整備をすすめたい。だれもが気持ちよくすごせるように。

去年の台風で倒れた入口のモチノキが新芽をつけて勢いよく回復していた。毎回その様子をみるのも楽しみだった。しかし、今回よくみると、新芽の先がみな黒く壊死している。どうしたわけだろう。じゅっくり観察できなかったが、今月の開拓団出動のとき、傷んだ芽をすべて切りとったほうがよいかもしれない。またハシゴに上る作業だ。

館山を6時に乗ったバスは予想外に乗客が多かった。乗車率6~7割か。やはり人の動きがでてきている。アクアラインのトンネル部では若干の渋滞も発生した。それでも定刻より早く東京駅に到着。今回の突貫行もそれなりの成果をおさめた。
さあ、冬が待たれる。山岳部も復活させよう!