復旧先遣隊(2019.10.6~10.7)
大木の救助

9月28日(土)に罹災証明の申請をして、今日6日(日)に市の職員が現地の状況確認に来る。その立会いと、来週の開拓団本隊の仕事計画もたてるために先遣隊として三人ででかけた。
hodaka号で神保町発8:37。アクアトンネル内で火災、通行止めの情報が入る。
大師でハマちゃんを迎えて、でたとこ勝負でアクアラインに向かった。事故火災の処理が終わって下り線だけは開通していた。幸運。
釣りエサを買って、odoyaで食糧調達。弁当と鍋一回分の節約食糧にして、缶ビールは6本。足りないだろうなぁとhodakaさんも私も思いながら、黒霧の四合ビンを追加して納得させる。maiちゃんがいたら「足りるわけないでしょ」と言うに決まっている。
410号経由で11時30分現地着。庭は手つかずの倒木と折れた枝が散乱したままだ。

火おこしをして、散らばっている枝を断裁し、救済する大木の枝切りをはじめた。
三才さん愛用の大ノコギリの切れ味はいい。あまり固い木ではないので、ぐんぐん歯が入っていく。しかしそこそこの太さがあるので、交替で休み休み。

大枝を切り落とすたびに、下にある木がへしつぶされいく。梅の木も、山椒の木も、ハゼも、ユキ柳も、藤も、紫蘇も…。
市の職員が来て現地確認をしてくれたが、居住拠点ではないので、期待していた救済は得られないかもしれない。後日通知がくる。

翌朝からの仕事があるハマちゃんを浜のバス停まで送って、初日の作業終了。
晩飯にするはずだった鍋もつくらず、ひたすら飲みになって、おそらく12時前には蒲団にころがりこんでいたはず。

翌朝
パチパチと火のはじける音で目をさますと、hodakaさんが外で火おこしをしていた。7時すぎだ。
二合の米を炊いて、寄せ鍋の朝食。これで十分。
「ビール買ってきましょうか」とhodakaさんがコンビニへ車を走らせてくれた。
「最初からわかっていたのに、こういうのを無駄足っていうんだよね」と笑う。

応援の富津のihさんが11時半に来てくれた。
車から降りたかと思うや、すぐさま道具を持って倒れた大木に向かう。
「これですか。もうちょっと幹を詰めておいたほうがいいと思うんですが…」と観察して意見をのべる。

枝はすべて切りおとして、はじけでた根も切りつめておいた。なるべく大きいままで生かしたいという思いがそうさせていた。すでにロープもかけていたが、二人で引いてもびくともしなかった。
ihさんは木の杭、ロープ、滑車、鉄の大ハンマーを運び出して、作業にとりかかる。
「このあたりに杭を打てませんか」
「だめです。ここの下はすぐ岩盤になってますから」
「こっちは?」
「この岩が伸びてるから、そこも岩盤です」
「じゃぁここしかないですね」
ロープを引く支点にしてはかなり不利な場所に杭を打込むことになった。
久しぶりにあの超重量のバールを持ち出して、地面をついた。これだけで腕力も体力も消耗する。
突き立てた杭をihさんが鉄のハンマーを振り上げて地面にぶち込んでいく。まるで鉄人のようだ。

二つの杭の支点をつくって、滑車のロープをかけた。
そんな場面で、部落の男性二人が登場した。
われわれのやろうとしていることを見て、口々に無理だという。
「そんな細いロープじゃ無理だぁ」
「チェーンブロックでなきゃ起こせねえべ」
「この木だけで、1トンはあるべ」
ihさんは動揺しない。
「まあ、やってみましょう」
それでも、無理だ駄目だと言うふたりに笑い顔で言う。
「もし、起こせたらどうします? 一杯おごってくれますか」
エイサ、エイサとロープを引き始めた。
「お二人も手伝ってくださいよ!」
「よっしゃ!」
一も二もなく二人が仲間に入る。二手にわかれて5人でロープを引く。
ユッサ、ユッサと木の先端が揺れはじめて、引くたびに揺れ幅が大きくなる。
「オイサ、オイサ」とまるで神輿の掛け声のように響いて、ついに木が立ち上がった。八割がたもとにもどった。

「どうです。これでよしにしませんか。隣の木の傾きとほぼ同じですよ」
満足げなihさんの顔がかがやく。
ihさんのおかげだ。ありがたいことこのうえない。
根の隙間に土をつめて、水を流し込むのをくりかえして、ついに復元作業終了。
うまく根がついて、生きつづけてくれることを願う。

庭でひといきついているとき、朝の鍋と残りのご飯でhodakaさんがおじやを作ってくれた。熱々のをどんぶりによそって、木陰で三人で食す。いつもこんなだった初期開拓団を思い出す。

釣りエサも持って行ったドジョウも出番がなかったが、いい仕事ができた。